monocube
monoには秘めたイロがある。
見えないだけでそこに在る。
数え切れないそれは、やがて絡まり色彩(イロ)になる。
さぁ、箱をあけてごらん。
箱庭(ナカ)は昏(クラ)く底なしの闇色(モノクロ)。
深い闇に融けたらいいのに。
日々の戯言寄せ集め。
当サイトは作者の気まぐれにより、自由気ままに書きなぐった不親切極まりない戯言の箱庭です。
ただずっと気が遠くなるほど、
永い刻が終わるのを待っていた。
小雨が本降りになって、
小さな意思を持って流れる雨に混じった血は、いつしか薄まって消えた。
忘れもしない、梅雨の湿気の纏わりつくような日だった。
それは蒼にとっても紅にとっても待ち望んでいた日だったのだと思う。
何度真剣に刀を交えたいと思っていただろう。
染まる夕暮れにさえも重ね思い焦がれていたのを知っていた。
だからこそ、それを止めるなどと無粋なことをするつもりはなかったし、
手を出す気もなかった。
たとえそれで、どちらかが命を落とすことになったとしても。
それで主君である蒼が息絶えようと、それは蒼自身が望んだこと。
それを阻む権利など誰にあろうか。
だが、それと同時に、ひとつ何かが確かに終わったことは間違いない。
「―――それで死なずに生きてるなんざ、何とも不思議な話だ」
そう自嘲していると、足音が近づいてきた。
振り返りはしなかった。
誰かなど気配で分かる。
この揺らぐ、夏のから風みたいな気配は。
「―――泣いてるのか、悼んでるのか」
或いは。
(憐れんでいるのだろうか)
「…片倉さん、」
「人の痛みに弱い、てめぇらしいな」
振り返らぬままふっと笑う。
「…それは、アンタも同じなんじゃないのか?」
風来坊の言葉に小さく頭を振る。
「てめぇとは違う、俺にとっちゃどうでもいい」
人の痛みに弱いのではない。
昔からずっと、何よりも心を砕き心を痛めたのは。
「…政宗様の痛み、背負った業、過去の傷…俺にとって弱いのは、それだけだ」
その為に誰が泣こうと、口汚く罵られようと構わなかった。
守りたかったのはたった一人の心。
それに比べれな天下など取るに足らない些細なこと。
簡単に投げ捨てられてしまうほどの、些事。
「でも…アンタは、アイツが治めた幸せな世を守り続けてる」
自分にとってそんな「些事」を死ぬ物狂いで守っているのは。
『…あと、頼んだぜ』
世を治めた蒼が、笑って託したから。
せめて生きている間はその言葉を守りたいと、自分が、そう望んだ。
「―――俺にとっちゃ、政宗様は主君であり、命を捧げたお人であり、何よりも重んじる存在だった…てめぇになら少しは分かるんじゃねぇのか?」
一番大切なものを失うということが、どういうことか。
この風来坊がそれ故に人の痛みに、人そのものに聡いのだと知っている。
「けど…俺は、」
「安心しな、自ら後を追うつもりはねぇ」
それは戦場に散った仲間に対して申し訳ないことだと理解っている。
それに。
「まだ…呼ばれちゃいねぇしな」
「来い」と言われていないから。
「…片倉さん、」
「今日はゆっくりしていけ、祭り男を楽しみにしてる連中も居るんだ」
笑って風来坊とすれ違う。
風来坊は、後を追ってはこなかった。
その足でゆっくりと自分の座敷に戻って驚愕する。
立ち尽くす頬に手が触れて。
「…ぁ…」
咄嗟に言葉が出ない。
その様子を物珍しいものでも見るように目を丸くして、
それから楽しそうに口許を歪ませる。
(あぁ、…何ひとつ変わらない)
本当はずっと重たかった、苦しかった。
何度膝を折りそうになったか。
その度に蒼の言葉が弱る心を奮い立たせていた。
それがまるで嘘のように解けていく。
政宗様、
「…小十郎は、貴方のお傍に、ずっと」
※竜居以外はどうでもいい右目。右目にとって、竜が世界そのもの。
小雨が本降りになって、
小さな意思を持って流れる雨に混じった血は、いつしか薄まって消えた。
忘れもしない、梅雨の湿気の纏わりつくような日だった。
それは蒼にとっても紅にとっても待ち望んでいた日だったのだと思う。
何度真剣に刀を交えたいと思っていただろう。
染まる夕暮れにさえも重ね思い焦がれていたのを知っていた。
だからこそ、それを止めるなどと無粋なことをするつもりはなかったし、
手を出す気もなかった。
たとえそれで、どちらかが命を落とすことになったとしても。
それで主君である蒼が息絶えようと、それは蒼自身が望んだこと。
それを阻む権利など誰にあろうか。
だが、それと同時に、ひとつ何かが確かに終わったことは間違いない。
「―――それで死なずに生きてるなんざ、何とも不思議な話だ」
そう自嘲していると、足音が近づいてきた。
振り返りはしなかった。
誰かなど気配で分かる。
この揺らぐ、夏のから風みたいな気配は。
「―――泣いてるのか、悼んでるのか」
或いは。
(憐れんでいるのだろうか)
「…片倉さん、」
「人の痛みに弱い、てめぇらしいな」
振り返らぬままふっと笑う。
「…それは、アンタも同じなんじゃないのか?」
風来坊の言葉に小さく頭を振る。
「てめぇとは違う、俺にとっちゃどうでもいい」
人の痛みに弱いのではない。
昔からずっと、何よりも心を砕き心を痛めたのは。
「…政宗様の痛み、背負った業、過去の傷…俺にとって弱いのは、それだけだ」
その為に誰が泣こうと、口汚く罵られようと構わなかった。
守りたかったのはたった一人の心。
それに比べれな天下など取るに足らない些細なこと。
簡単に投げ捨てられてしまうほどの、些事。
「でも…アンタは、アイツが治めた幸せな世を守り続けてる」
自分にとってそんな「些事」を死ぬ物狂いで守っているのは。
『…あと、頼んだぜ』
世を治めた蒼が、笑って託したから。
せめて生きている間はその言葉を守りたいと、自分が、そう望んだ。
「―――俺にとっちゃ、政宗様は主君であり、命を捧げたお人であり、何よりも重んじる存在だった…てめぇになら少しは分かるんじゃねぇのか?」
一番大切なものを失うということが、どういうことか。
この風来坊がそれ故に人の痛みに、人そのものに聡いのだと知っている。
「けど…俺は、」
「安心しな、自ら後を追うつもりはねぇ」
それは戦場に散った仲間に対して申し訳ないことだと理解っている。
それに。
「まだ…呼ばれちゃいねぇしな」
「来い」と言われていないから。
「…片倉さん、」
「今日はゆっくりしていけ、祭り男を楽しみにしてる連中も居るんだ」
笑って風来坊とすれ違う。
風来坊は、後を追ってはこなかった。
その足でゆっくりと自分の座敷に戻って驚愕する。
立ち尽くす頬に手が触れて。
「…ぁ…」
咄嗟に言葉が出ない。
その様子を物珍しいものでも見るように目を丸くして、
それから楽しそうに口許を歪ませる。
(あぁ、…何ひとつ変わらない)
本当はずっと重たかった、苦しかった。
何度膝を折りそうになったか。
その度に蒼の言葉が弱る心を奮い立たせていた。
それがまるで嘘のように解けていく。
政宗様、
「…小十郎は、貴方のお傍に、ずっと」
※竜居以外はどうでもいい右目。右目にとって、竜が世界そのもの。
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プロフィール
HN:
瑞季ゆたか
年齢:
40
性別:
女性
誕生日:
1984/02/10
職業:
引きこもり人嫌いの営業AS見習い
趣味:
読書・音楽鑑賞・字書き
自己紹介:
◇2006.11.16開通◇
好きな音楽:Cocco、GRAPEVINE、スガシカオ、LUNKHEAD、アジカン、ORCA、シュノーケル、ELLEGARDEN、LINKIN PARK、いきものがかり、チャットモンチー、CORE OF SOUL、moumoon…などなど挙げたらキリがない。じん(自然の敵P)さんにドハマり中。もう中毒です。
好きな本:長野まゆみ、西尾維新、乙一、浅井ラボ、谷瑞恵、結城光流(敬称略)、NO.6、包帯クラブ、薬屋シリーズなどなど。コミック込みだと大変なことになります(笑)高尾滋さんには癒され、浅野いにおさんには創作意欲を上げてもらいつつ…あでも、緑川ゆきさんは特別!僕の青春です(笑)夏目友人帳、好評連載中!某戦国ゲームにハマり我が主と共に城攻めを細々とのんびり実行中(笑)サークル活動も嗜む程度。他ジャンルに寄り道も多く叱られながらも細々と更新しています…たぶん。
備考。寒さに激弱、和小物・蝶グッズとリサとガスパールモノ・スヌーピーモノと紅茶と飴と文房具…最近はリボンモノもこよなく愛する。一番困るのは大好物と嫌いな食べ物を聞かれること。
気まぐれ無理なくリハビリのように文章やレポを書き綴る日々…褒められて伸びるタイプです。
好きな音楽:Cocco、GRAPEVINE、スガシカオ、LUNKHEAD、アジカン、ORCA、シュノーケル、ELLEGARDEN、LINKIN PARK、いきものがかり、チャットモンチー、CORE OF SOUL、moumoon…などなど挙げたらキリがない。じん(自然の敵P)さんにドハマり中。もう中毒です。
好きな本:長野まゆみ、西尾維新、乙一、浅井ラボ、谷瑞恵、結城光流(敬称略)、NO.6、包帯クラブ、薬屋シリーズなどなど。コミック込みだと大変なことになります(笑)高尾滋さんには癒され、浅野いにおさんには創作意欲を上げてもらいつつ…あでも、緑川ゆきさんは特別!僕の青春です(笑)夏目友人帳、好評連載中!某戦国ゲームにハマり我が主と共に城攻めを細々とのんびり実行中(笑)サークル活動も嗜む程度。他ジャンルに寄り道も多く叱られながらも細々と更新しています…たぶん。
備考。寒さに激弱、和小物・蝶グッズとリサとガスパールモノ・スヌーピーモノと紅茶と飴と文房具…最近はリボンモノもこよなく愛する。一番困るのは大好物と嫌いな食べ物を聞かれること。
気まぐれ無理なくリハビリのように文章やレポを書き綴る日々…褒められて伸びるタイプです。