monocube
monoには秘めたイロがある。
見えないだけでそこに在る。
数え切れないそれは、やがて絡まり色彩(イロ)になる。
さぁ、箱をあけてごらん。
箱庭(ナカ)は昏(クラ)く底なしの闇色(モノクロ)。
深い闇に融けたらいいのに。
日々の戯言寄せ集め。
当サイトは作者の気まぐれにより、自由気ままに書きなぐった不親切極まりない戯言の箱庭です。
どうしても触れたくない、
この時だけは。
最初に気付いたのは、慣れない香がしたから。
一度気付いたら、知るはずもない気配まで感じ取るようになって。
「雨が、止みませんな」
梅雨らしいと言えばそうなのでしょうが、
と笑いながら有能な右目はお茶を入れる。
頬杖をつきながらその手元をぼんやりと眺めていると、
「梅雨は、お嫌いでしたね」
とまた右目は笑みを深くした。
(誰のせいだ、誰の)
内心悪態をつく。
梅雨の湿気た空気はより一層気分を悪くするだけで。
何も答えずにぼんやりしていると、
右目は訝しげな眼差しを送ってくる。
自分の機嫌が悪い理由を頭の中で巡らしているのかもしれない。
肩から上着が落ち、
それに気付いた右目は近づいて上着に手を伸ばす。
「…触るな、」
その手を制するように短く一言言えば。
すぐに手はピタリと止まる。
どうしても触れたくない、
「…それ、は嫌いだ」
右目が知らない人みたいだから。
いつもの馴染んだ匂いがしない。
「……俺の、小十郎じゃねぇ」
その言葉にようやく不機嫌な理由に思い至ったらしい右目は、
止めた手を伸ばして上着を取ると肩に掛けなおした。
毛先に遊ぶように軽く触れて。
さっきよりも距離を縮めて、膝をつく。
「…香が、気に障っておいででしたか」
袂から出したのは小さな匂袋。
それは今日ずっと香っていたもので。
「雨続きで城下に出られず退屈かと思い、」
何か気を紛らわせるものでもあればと城下に出たのだ、
と右目は言った。
「とはいえ、小十郎も匂袋には詳しくありませぬゆえ」
あれやこれや迷っては違う香をまとって城に戻り、それが続いた。
一旦座敷を離れ戻ってきた右目の手には小さな木箱。
また膝を折り、蓋を開ければ見目鮮やかないくつもの匂袋。
「少しでも、喜んでいただきたく、」
苦笑する右目の手から一つ匂袋をとってその香りに目を閉じる。
「…これじゃあ、どれがどんな匂いか解らねぇじゃねぇか」
そして、笑う。
木箱に入った匂袋はそれぞれの香りが移りあって。
箱に匂袋を戻して右目の手から木箱を取り上げる。
(勝手に不機嫌になって、苛立ち損じゃねぇか…くだらねぇ)
それを傍らに置いて、右目の襟元を掴んでその胸に顔をうずめる。
「政宗様?」
「…もういい、何でもねぇ」
いつもの声音で言えば、頭上で笑う気配がした。
「…俺には、これでいい」
傍に、馴染んだ匂い。
温かい、体温。
「…梅雨は好きじゃねぇが、そう悪くもねぇな」
この有能な堅物が自分の為にあれやこれやと選んでいる姿を想像して笑った。
永い湿気た空気も、
幕をはったように止まない雨も、
机の上に詰まれた紙束も、
そう思えば悪くはない。
※今日は忙しかったからショートショート。甘い。永月さんの政宗様が可愛い所為(笑)
うちの筆頭は可愛くない。
最初に気付いたのは、慣れない香がしたから。
一度気付いたら、知るはずもない気配まで感じ取るようになって。
「雨が、止みませんな」
梅雨らしいと言えばそうなのでしょうが、
と笑いながら有能な右目はお茶を入れる。
頬杖をつきながらその手元をぼんやりと眺めていると、
「梅雨は、お嫌いでしたね」
とまた右目は笑みを深くした。
(誰のせいだ、誰の)
内心悪態をつく。
梅雨の湿気た空気はより一層気分を悪くするだけで。
何も答えずにぼんやりしていると、
右目は訝しげな眼差しを送ってくる。
自分の機嫌が悪い理由を頭の中で巡らしているのかもしれない。
肩から上着が落ち、
それに気付いた右目は近づいて上着に手を伸ばす。
「…触るな、」
その手を制するように短く一言言えば。
すぐに手はピタリと止まる。
どうしても触れたくない、
「…それ、は嫌いだ」
右目が知らない人みたいだから。
いつもの馴染んだ匂いがしない。
「……俺の、小十郎じゃねぇ」
その言葉にようやく不機嫌な理由に思い至ったらしい右目は、
止めた手を伸ばして上着を取ると肩に掛けなおした。
毛先に遊ぶように軽く触れて。
さっきよりも距離を縮めて、膝をつく。
「…香が、気に障っておいででしたか」
袂から出したのは小さな匂袋。
それは今日ずっと香っていたもので。
「雨続きで城下に出られず退屈かと思い、」
何か気を紛らわせるものでもあればと城下に出たのだ、
と右目は言った。
「とはいえ、小十郎も匂袋には詳しくありませぬゆえ」
あれやこれや迷っては違う香をまとって城に戻り、それが続いた。
一旦座敷を離れ戻ってきた右目の手には小さな木箱。
また膝を折り、蓋を開ければ見目鮮やかないくつもの匂袋。
「少しでも、喜んでいただきたく、」
苦笑する右目の手から一つ匂袋をとってその香りに目を閉じる。
「…これじゃあ、どれがどんな匂いか解らねぇじゃねぇか」
そして、笑う。
木箱に入った匂袋はそれぞれの香りが移りあって。
箱に匂袋を戻して右目の手から木箱を取り上げる。
(勝手に不機嫌になって、苛立ち損じゃねぇか…くだらねぇ)
それを傍らに置いて、右目の襟元を掴んでその胸に顔をうずめる。
「政宗様?」
「…もういい、何でもねぇ」
いつもの声音で言えば、頭上で笑う気配がした。
「…俺には、これでいい」
傍に、馴染んだ匂い。
温かい、体温。
「…梅雨は好きじゃねぇが、そう悪くもねぇな」
この有能な堅物が自分の為にあれやこれやと選んでいる姿を想像して笑った。
永い湿気た空気も、
幕をはったように止まない雨も、
机の上に詰まれた紙束も、
そう思えば悪くはない。
※今日は忙しかったからショートショート。甘い。永月さんの政宗様が可愛い所為(笑)
うちの筆頭は可愛くない。
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無題
水城さんとこの筆頭は可愛いし、かっこいいし、色っぽいじゃないですかっ!犯罪か(笑)!
そして小十郎は相変わらず男前だし!
なんだこのお似合い具合~っ!!
ほんといつも萌えをありがとうございます♪!
そして小十郎は相変わらず男前だし!
なんだこのお似合い具合~っ!!
ほんといつも萌えをありがとうございます♪!
- 永月
- 2009/06/18(Thu)22:57:09
- 編集
無題
今回の政宗様は、永月さんの政宗様をまねっこしてみようとしてしくじった(笑)
こちらこそ、いつも萌えをありがとうございます!
こちらこそ、いつも萌えをありがとうございます!
- 水城
- 2009/06/19(Fri)00:08:32
- 編集
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プロフィール
HN:
瑞季ゆたか
年齢:
40
性別:
女性
誕生日:
1984/02/10
職業:
引きこもり人嫌いの営業AS見習い
趣味:
読書・音楽鑑賞・字書き
自己紹介:
◇2006.11.16開通◇
好きな音楽:Cocco、GRAPEVINE、スガシカオ、LUNKHEAD、アジカン、ORCA、シュノーケル、ELLEGARDEN、LINKIN PARK、いきものがかり、チャットモンチー、CORE OF SOUL、moumoon…などなど挙げたらキリがない。じん(自然の敵P)さんにドハマり中。もう中毒です。
好きな本:長野まゆみ、西尾維新、乙一、浅井ラボ、谷瑞恵、結城光流(敬称略)、NO.6、包帯クラブ、薬屋シリーズなどなど。コミック込みだと大変なことになります(笑)高尾滋さんには癒され、浅野いにおさんには創作意欲を上げてもらいつつ…あでも、緑川ゆきさんは特別!僕の青春です(笑)夏目友人帳、好評連載中!某戦国ゲームにハマり我が主と共に城攻めを細々とのんびり実行中(笑)サークル活動も嗜む程度。他ジャンルに寄り道も多く叱られながらも細々と更新しています…たぶん。
備考。寒さに激弱、和小物・蝶グッズとリサとガスパールモノ・スヌーピーモノと紅茶と飴と文房具…最近はリボンモノもこよなく愛する。一番困るのは大好物と嫌いな食べ物を聞かれること。
気まぐれ無理なくリハビリのように文章やレポを書き綴る日々…褒められて伸びるタイプです。
好きな音楽:Cocco、GRAPEVINE、スガシカオ、LUNKHEAD、アジカン、ORCA、シュノーケル、ELLEGARDEN、LINKIN PARK、いきものがかり、チャットモンチー、CORE OF SOUL、moumoon…などなど挙げたらキリがない。じん(自然の敵P)さんにドハマり中。もう中毒です。
好きな本:長野まゆみ、西尾維新、乙一、浅井ラボ、谷瑞恵、結城光流(敬称略)、NO.6、包帯クラブ、薬屋シリーズなどなど。コミック込みだと大変なことになります(笑)高尾滋さんには癒され、浅野いにおさんには創作意欲を上げてもらいつつ…あでも、緑川ゆきさんは特別!僕の青春です(笑)夏目友人帳、好評連載中!某戦国ゲームにハマり我が主と共に城攻めを細々とのんびり実行中(笑)サークル活動も嗜む程度。他ジャンルに寄り道も多く叱られながらも細々と更新しています…たぶん。
備考。寒さに激弱、和小物・蝶グッズとリサとガスパールモノ・スヌーピーモノと紅茶と飴と文房具…最近はリボンモノもこよなく愛する。一番困るのは大好物と嫌いな食べ物を聞かれること。
気まぐれ無理なくリハビリのように文章やレポを書き綴る日々…褒められて伸びるタイプです。