monocube
monoには秘めたイロがある。
見えないだけでそこに在る。
数え切れないそれは、やがて絡まり色彩(イロ)になる。
さぁ、箱をあけてごらん。
箱庭(ナカ)は昏(クラ)く底なしの闇色(モノクロ)。
深い闇に融けたらいいのに。
日々の戯言寄せ集め。
当サイトは作者の気まぐれにより、自由気ままに書きなぐった不親切極まりない戯言の箱庭です。
どうかお願い。
大切な人を連れて行かないで。
「大切な人を連れて行かないで、か」
何とも皮肉な台詞だ。
その失いたくない大切な人を差し出しているのは、他でもない自分なのに。
自分の進む先が、選び取った未来が、関わる全ての命を差し出すように。
※蒼主従、幼い頃に見た悪夢の話。続きは折りたたみ↓↓
幼い自分。
見下ろした手は落ちる紅葉の葉より小さくて弱い。
そして顔を上げると、そこに立つ小十郎。
傍に駆け寄り「どうしたんだ?」と問えば、小十郎は困ったように笑って。
「さよならです、」
梵天丸様、と。
声は音にならずに口唇がそう囁く。
その言葉に呆然として二の句を次げない間にその気配が薄れていくから、咄嗟に伸ばした手。
でもすぐ傍にあるはずの存在に触れることも出来ず、小さな手が掴んだのは空で。
その姿は風にとける桜の花びらのように跡形もなく消えた。
どんなに叫べども、音にならなくて。
ハッと目を覚まして、夜の帳に包まれた世界を認識する。
過ぎる夢の記憶。
誘うように庭の木々がさわさわと音を立てる。
弾かれたように起き上がるとそのまま座敷を出た。
足に触れる廊下の床は刺すように冷たくてすぐに体温を奪っていった。
けれど足を止めずに向かう先はただ一つ、病に伏せる父の元だ。
座敷の襖を乱暴に開けてその姿を見つけると、悲鳴にも似た声で叫ぶ。
「父さま!」
その声に何事かと側仕えたちがやってきて、暴れる小さな身体を落ち着かせるように止める。
「父さま、どうかっ…」
それでも抵抗することを止めはしなかった。
だって失うことが怖かった。
父が伏せっていても、それよりももっとずっと、消えてしまうことが辛かった。
(いたい…くるしい…)
何故こんなにも辛いのか分からないまま、それでも必死だった。
そんな声にも父は目を覚ます気配もなく、静かに横たわっている。
白いその顔はもはや死人に足を突っ込んでいるのだろう、と幼いながらに思った。
「梵天丸様っ」
大人たちが戸惑ったように名を呼ぶ。
違う。
本当に聞きたい声は、それじゃない。
「父さま、どうかおねがいっ…」
側仕えたちを振り切るように。
「小十郎をつれて行かないで!!」
ないはずの右目からも涙がこぼれるような錯覚。
それほどに怖かった。
側仕えたちの静止の手が僅かに緩む。
そこに。
「梵天丸様、」
背中から聞こえる耳慣れた声にぴたりと動きを止める。
振り返るのを待たずに緩んだ手から救い上げる暖かい腕。
その温もりに、初めて自分が冷え切っていたことに気付いた。
「大丈夫ですよ」とあやすように背中を軽く撫でられて安堵する。
夢とは違う。
小十郎の着物を確かめるようにしっかりと掴む。
小十郎はちゃんと此処に居る。
「小十郎、おねがいだから…どこにも行かないで」
目を閉じると過ぎる『さよならです、』と言った小十郎の表情。
離れない消えない怖くて仕方がない。
「はい、お傍に居りますよ、政宗様」
そんな不安を包んで消してしまう声。
その優しい声に安堵してそのまま意識を落とした。
「逝くな、」
帰るのを待てばいい?
「まだ、逝くなよ」
でも帰ってくるの?
「待て、」
また隣で、すぐ傍で。
「どうか、」
ただ優しく笑って。
「…頼む、から…」
ただ。ただ。
「連れて行かないでくれ」
叫ぶ力もなくて、ただ地面に崩れ落ちるだけで。
取り返すことが出来たらしてる。
でも出来ないから、体温を失っていく身体をただ腕に抱いて空を仰ぐ。
空気に融けてしまうほどの弱く小さな声で。
ただ、ただ、天に希う。
過ぎる過去の悪夢。
『さよならです、』と、そう困ったように笑って。
(何だそれ、)
笑えねぇよ、そんなの。
「大切な人を連れて行かないで、か」
何とも皮肉な台詞だ。
その失いたくない大切な人を差し出しているのは、他でもない自分なのに。
自分の進む先が、選び取った未来が、関わる全ての命を差し出すように。
※蒼主従、幼い頃に見た悪夢の話。続きは折りたたみ↓↓
幼い自分。
見下ろした手は落ちる紅葉の葉より小さくて弱い。
そして顔を上げると、そこに立つ小十郎。
傍に駆け寄り「どうしたんだ?」と問えば、小十郎は困ったように笑って。
「さよならです、」
梵天丸様、と。
声は音にならずに口唇がそう囁く。
その言葉に呆然として二の句を次げない間にその気配が薄れていくから、咄嗟に伸ばした手。
でもすぐ傍にあるはずの存在に触れることも出来ず、小さな手が掴んだのは空で。
その姿は風にとける桜の花びらのように跡形もなく消えた。
どんなに叫べども、音にならなくて。
ハッと目を覚まして、夜の帳に包まれた世界を認識する。
過ぎる夢の記憶。
誘うように庭の木々がさわさわと音を立てる。
弾かれたように起き上がるとそのまま座敷を出た。
足に触れる廊下の床は刺すように冷たくてすぐに体温を奪っていった。
けれど足を止めずに向かう先はただ一つ、病に伏せる父の元だ。
座敷の襖を乱暴に開けてその姿を見つけると、悲鳴にも似た声で叫ぶ。
「父さま!」
その声に何事かと側仕えたちがやってきて、暴れる小さな身体を落ち着かせるように止める。
「父さま、どうかっ…」
それでも抵抗することを止めはしなかった。
だって失うことが怖かった。
父が伏せっていても、それよりももっとずっと、消えてしまうことが辛かった。
(いたい…くるしい…)
何故こんなにも辛いのか分からないまま、それでも必死だった。
そんな声にも父は目を覚ます気配もなく、静かに横たわっている。
白いその顔はもはや死人に足を突っ込んでいるのだろう、と幼いながらに思った。
「梵天丸様っ」
大人たちが戸惑ったように名を呼ぶ。
違う。
本当に聞きたい声は、それじゃない。
「父さま、どうかおねがいっ…」
側仕えたちを振り切るように。
「小十郎をつれて行かないで!!」
ないはずの右目からも涙がこぼれるような錯覚。
それほどに怖かった。
側仕えたちの静止の手が僅かに緩む。
そこに。
「梵天丸様、」
背中から聞こえる耳慣れた声にぴたりと動きを止める。
振り返るのを待たずに緩んだ手から救い上げる暖かい腕。
その温もりに、初めて自分が冷え切っていたことに気付いた。
「大丈夫ですよ」とあやすように背中を軽く撫でられて安堵する。
夢とは違う。
小十郎の着物を確かめるようにしっかりと掴む。
小十郎はちゃんと此処に居る。
「小十郎、おねがいだから…どこにも行かないで」
目を閉じると過ぎる『さよならです、』と言った小十郎の表情。
離れない消えない怖くて仕方がない。
「はい、お傍に居りますよ、政宗様」
そんな不安を包んで消してしまう声。
その優しい声に安堵してそのまま意識を落とした。
「逝くな、」
帰るのを待てばいい?
「まだ、逝くなよ」
でも帰ってくるの?
「待て、」
また隣で、すぐ傍で。
「どうか、」
ただ優しく笑って。
「…頼む、から…」
ただ。ただ。
「連れて行かないでくれ」
叫ぶ力もなくて、ただ地面に崩れ落ちるだけで。
取り返すことが出来たらしてる。
でも出来ないから、体温を失っていく身体をただ腕に抱いて空を仰ぐ。
空気に融けてしまうほどの弱く小さな声で。
ただ、ただ、天に希う。
過ぎる過去の悪夢。
『さよならです、』と、そう困ったように笑って。
(何だそれ、)
笑えねぇよ、そんなの。
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プロフィール
HN:
瑞季ゆたか
年齢:
40
性別:
女性
誕生日:
1984/02/10
職業:
引きこもり人嫌いの営業AS見習い
趣味:
読書・音楽鑑賞・字書き
自己紹介:
◇2006.11.16開通◇
好きな音楽:Cocco、GRAPEVINE、スガシカオ、LUNKHEAD、アジカン、ORCA、シュノーケル、ELLEGARDEN、LINKIN PARK、いきものがかり、チャットモンチー、CORE OF SOUL、moumoon…などなど挙げたらキリがない。じん(自然の敵P)さんにドハマり中。もう中毒です。
好きな本:長野まゆみ、西尾維新、乙一、浅井ラボ、谷瑞恵、結城光流(敬称略)、NO.6、包帯クラブ、薬屋シリーズなどなど。コミック込みだと大変なことになります(笑)高尾滋さんには癒され、浅野いにおさんには創作意欲を上げてもらいつつ…あでも、緑川ゆきさんは特別!僕の青春です(笑)夏目友人帳、好評連載中!某戦国ゲームにハマり我が主と共に城攻めを細々とのんびり実行中(笑)サークル活動も嗜む程度。他ジャンルに寄り道も多く叱られながらも細々と更新しています…たぶん。
備考。寒さに激弱、和小物・蝶グッズとリサとガスパールモノ・スヌーピーモノと紅茶と飴と文房具…最近はリボンモノもこよなく愛する。一番困るのは大好物と嫌いな食べ物を聞かれること。
気まぐれ無理なくリハビリのように文章やレポを書き綴る日々…褒められて伸びるタイプです。
好きな音楽:Cocco、GRAPEVINE、スガシカオ、LUNKHEAD、アジカン、ORCA、シュノーケル、ELLEGARDEN、LINKIN PARK、いきものがかり、チャットモンチー、CORE OF SOUL、moumoon…などなど挙げたらキリがない。じん(自然の敵P)さんにドハマり中。もう中毒です。
好きな本:長野まゆみ、西尾維新、乙一、浅井ラボ、谷瑞恵、結城光流(敬称略)、NO.6、包帯クラブ、薬屋シリーズなどなど。コミック込みだと大変なことになります(笑)高尾滋さんには癒され、浅野いにおさんには創作意欲を上げてもらいつつ…あでも、緑川ゆきさんは特別!僕の青春です(笑)夏目友人帳、好評連載中!某戦国ゲームにハマり我が主と共に城攻めを細々とのんびり実行中(笑)サークル活動も嗜む程度。他ジャンルに寄り道も多く叱られながらも細々と更新しています…たぶん。
備考。寒さに激弱、和小物・蝶グッズとリサとガスパールモノ・スヌーピーモノと紅茶と飴と文房具…最近はリボンモノもこよなく愛する。一番困るのは大好物と嫌いな食べ物を聞かれること。
気まぐれ無理なくリハビリのように文章やレポを書き綴る日々…褒められて伸びるタイプです。