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バイマイサイド。

幸せなのだと思う。
その温もりが、傍にあって。

背中にある無数の傷痕。それは自分が狙われた数だけ、負うはずだった傷たち。
手を伸ばして背中の傷痕を撫でる。突然の行動に驚いたように身体が跳ね、すぐに困ったような笑みが向けられる。

「…何です、こそばゆくて仕方ない」

その言葉にも答えず傷痕を撫でていると、背中に向ける関心を断ち切るように身体ごと振り返って。

「―――その傷、その一番深い傷痕は…よく覚えてる」

宙を彷徨う指先を絡めるように大きな手が取って。

「あれは…酷い戦でしたからな」

思い出すように目を伏せれば、指に慈しむ様な口付けが振ってきて、そのままゆっくりと抱き寄せられた。長い指が背中をするりと撫でて。唯一自分の背中に残る、傷痕。

「…貴方の背にも、深い傷痕を残してしまった」

「…こんなのは大した傷じゃねぇ」

自分の代わりに傷ついた小十郎の背中。無数の傷痕。お前のに比べたら、と小さく呟けば、軽く髪を梳いてくれて。

「…小十郎にとっては、この真っ更な肌に残ったたったひとつの傷の方が余程辛い」

背を守るといいながら、それが出来なかったと自分を責めるような声音で。
確かに、あの戦は酷い戦だった。

数も戦況も何もかもが分が悪い戦。長期戦になれば疲弊して潰れるのは必至。筆頭として、一国の主として決断を迫られていた。その時、視界を過ぎった血潮。それが振り返った先の右目のものだと気付いて油断した。

「政宗様っ!!」

つんざくような声を認識した時、背中に熱した鉄でも押しつけられたような激痛。意志に反して傾いだ身体。その腕を強く小十郎は引いて一閃。その時初めて自分が斬り付けられたのだと思い至った。力なく身体を預けた状態で、小十郎が退却の命令を出しているのを遠く聞いていた。
あの時の敗戦の苦々しさは、今でもずっと残り続けている。

「そして、貴方の心にも深い傷を…」

「shit、んなのは大したことじゃねぇんだ」

あの時抱いた右目を失う恐怖は、「絶対にお傍を離れませぬ」と今自分を抱き締めてくれる温もりが消し去ってくれた。

「…なぁ、お前はその背に負った傷を後悔してるか?」

「――…いいえ、これは政宗様の傷、痛み、それを引き受け共に生きる、それが小十郎の誇り」

右目はこういう恥ずかしいことも臆面もなく口にする。

「―――お前の傷は、俺の傷か…」

そりゃいいな、と笑えば、疑問を滲ませた表情。

「お前が俺のものだって証だろ」

挑むように面と向かって言えば、

「小十郎は昔からずっと、政宗様のもの、ですが」

と余裕顔で返された。

「俺ァ、誰かのものになるってのは気に食わねぇが」

首もとに残る鬱血の跡を愛しむように撫で、

「お前の、ってのはいいな」

と笑う。すると更に強く抱き寄せられて。

「そのようなことを仰らないでいただきたい」

「何だよ、」

「一国の…ゆくゆくは天下を取る貴方を…独占したくなる」

すりゃいいじゃねぇか、とあっさり応えたら性急な口付けに笑い声が奪われて。

「―――どうなっても知りませんぜ?」

と耳元で砕けた口調で囁かれる。ぞわり、と背を撫でられるような低音に口元を歪めた。




「思う存分、この俺をとり殺してみせろよ」













※この後、冷静になった右目が後悔の深い溜息を吐くのは明け方のこと。
守りたかったのは~の続きの前に小休憩。
蒼様視点が続きますが、次は多分右目視点(予定は未定)

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プロフィール

HN:
瑞季ゆたか
年齢:
40
性別:
女性
誕生日:
1984/02/10
職業:
引きこもり人嫌いの営業AS見習い
趣味:
読書・音楽鑑賞・字書き
自己紹介:
◇2006.11.16開通◇

好きな音楽:Cocco、GRAPEVINE、スガシカオ、LUNKHEAD、アジカン、ORCA、シュノーケル、ELLEGARDEN、LINKIN PARK、いきものがかり、チャットモンチー、CORE OF SOUL、moumoon…などなど挙げたらキリがない。じん(自然の敵P)さんにドハマり中。もう中毒です。
好きな本:長野まゆみ、西尾維新、乙一、浅井ラボ、谷瑞恵、結城光流(敬称略)、NO.6、包帯クラブ、薬屋シリーズなどなど。コミック込みだと大変なことになります(笑)高尾滋さんには癒され、浅野いにおさんには創作意欲を上げてもらいつつ…あでも、緑川ゆきさんは特別!僕の青春です(笑)夏目友人帳、好評連載中!某戦国ゲームにハマり我が主と共に城攻めを細々とのんびり実行中(笑)サークル活動も嗜む程度。他ジャンルに寄り道も多く叱られながらも細々と更新しています…たぶん。

備考。寒さに激弱、和小物・蝶グッズとリサとガスパールモノ・スヌーピーモノと紅茶と飴と文房具…最近はリボンモノもこよなく愛する。一番困るのは大好物と嫌いな食べ物を聞かれること。

気まぐれ無理なくリハビリのように文章やレポを書き綴る日々…褒められて伸びるタイプです。

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