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触れた温もりに、

まだ此処に居てくれたのかと、泣きそうになった。








※守りたかったのは~の続き的な。
蒼主従の話です(初右目視点?)。続きは折りたたみ↓↓

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抱き締めた身体は、傷口からの熱に酷く高温で。
着物を染めた血は既に乾いていた。
力なく袖を掴む手。
その手を、解くつもりはなかった。
この場に誰が居ようと、ただ一人。
この腕の中に愛しい温もりがあるというだけで、涙が出るほど嬉しかった。

最初、この部屋に入った時、息が止まった。
気配を悟った忍びが感情の滲まない表情で振り返る。
その向こうから細い白い腕が自分に向けて伸ばされていた。

「退けっ、触るんじゃねぇっ!!」

怒鳴って忍を突き飛ばすと、
その手を握り返し引ったくるように華奢な身体を抱き締める。

「…こ、じゅ…ろ…」

ふわりと蒼は笑って。
待ちくたびれたとでも言うように安堵したように身体も意識も委ね、
蒼は深く眠りに落ちた。
「…片倉殿、政宗殿の怪我を、」
傷口に障らぬ様抱き上げ、紅の言葉に部屋を出る。
「…礼は言わねぇ」
すれ違い様に呟くと、紅はただ苦い表情をしただけだった。

用意された座敷で昏々と眠る蒼。
時折うなされながら力ない手が何かを探すように彷徨う度、
その手を握ってあやす様に髪を梳いて。
すると安心したのか呼吸が落ち着き、また深く意識が落ちていく。
こんな主の様を見るのは本当に久しぶりだった。

竹中の策略で分断されてどれくらいたっているのだろう。
どれだけあの場所に閉じ込められていたのだろうか。
その間、自分は何も知らずに。
ぎりっと奥歯を噛み締める。
自分が不甲斐なくて仕方がない。
すると俯く頭を緩やかに掻き乱す手が伸びて、
「…ま、た…難し、い顔…してや、がる」
蒼は熱い吐息でそう呟く。

今、この時だけは、右目としてではなく、言葉を紡いでもいいだろうか。
目の前の、ただ愛しい人の為に。


「――…失うかと、思った…」


一番、この世界よりも何よりも大切な存在。

「貴方を、」

失うことを最も恐れる存在。
自分はもうこの蒼を失っては生きていけないようになってしまっている。
「…HA、…俺、は…信じて、た、ぜ」
お前が来ると。
「この…温もり、が、…なきゃ、だめ、だ」
蒼の腕が頭を引き寄せて、額を合わせる。
「動けるようになったら、奥州に戻りましょう」
そこからまたひとつひとつ始めるのだ。
次はこの愛しい存在から離れたりしない。

「この、小十郎と共に」

額を離して笑ったら、「当然じゃねぇか」とぎこちない笑みが返ってきた。
繋いだ手を握りなおして、強く、想う。

二度とこの手を、離すことなく。

繋いだまま、共に、最期の瞬間まで。








※一応解決。最後はどうしようもない忍の話。
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プロフィール

HN:
瑞季ゆたか
年齢:
40
性別:
女性
誕生日:
1984/02/10
職業:
引きこもり人嫌いの営業AS見習い
趣味:
読書・音楽鑑賞・字書き
自己紹介:
◇2006.11.16開通◇

好きな音楽:Cocco、GRAPEVINE、スガシカオ、LUNKHEAD、アジカン、ORCA、シュノーケル、ELLEGARDEN、LINKIN PARK、いきものがかり、チャットモンチー、CORE OF SOUL、moumoon…などなど挙げたらキリがない。じん(自然の敵P)さんにドハマり中。もう中毒です。
好きな本:長野まゆみ、西尾維新、乙一、浅井ラボ、谷瑞恵、結城光流(敬称略)、NO.6、包帯クラブ、薬屋シリーズなどなど。コミック込みだと大変なことになります(笑)高尾滋さんには癒され、浅野いにおさんには創作意欲を上げてもらいつつ…あでも、緑川ゆきさんは特別!僕の青春です(笑)夏目友人帳、好評連載中!某戦国ゲームにハマり我が主と共に城攻めを細々とのんびり実行中(笑)サークル活動も嗜む程度。他ジャンルに寄り道も多く叱られながらも細々と更新しています…たぶん。

備考。寒さに激弱、和小物・蝶グッズとリサとガスパールモノ・スヌーピーモノと紅茶と飴と文房具…最近はリボンモノもこよなく愛する。一番困るのは大好物と嫌いな食べ物を聞かれること。

気まぐれ無理なくリハビリのように文章やレポを書き綴る日々…褒められて伸びるタイプです。

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