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二秒後の酷薄。

それは男がその引き金を引くまでの時間。
そして、命の期限。

ぼんやりとぼやけた視界が少しずつ形を持ち始める。

(…どうしてこんなに静か、なん、だ…?)

いたるところから鈍痛が走る身体を起こして、辺りを見回すとその理由はすぐに知れる。

「…なんだ、よ…こりゃあ…」

目の前に広がるのは見渡す限りのあか。
夕焼けなんて生易しい色じゃない、もっと濃くて鮮烈な、あか。
無数に転がる屍と、大地すべてを染め上げたような血の色にただ言葉を失った。
折れて地に落ちた旗には見覚えがある。
大地と同色に染まる屍には生前の面影は欠片もなく。
ただ、それが飲み込まれた自軍の蒼だということだけは十分すぎるほどに分かった。
咽返るような血の匂い。
力の入らない下肢を叱咤して屍の合間を縫って歩き出す。
蹂躙された跡を見ていたら、急に下肢が力を失って地面に崩れる。

(…何でこいつらは死んでるんだ?何があった?何にやられた?何が理由で何が原因で何が何が何が何が何が)

地面についた手が土を握り締めて。
俯いたら、小さな声がして咄嗟に顔を上げる。
そのすぐに消えてしまった声を辿るように四方に視線を巡らす。
そして。

「…小、十郎…?」

一人刀を支えにうずくまる男。
何度も転びながら駆け寄ると、その身体からは夥しいほどの血が流れ出て。
両手で男の頬を包み込み目線を合わせる。
男の眼は、既に像を結ぶにはその灯火が弱すぎて。

「小十郎…」

すぐ傍で名を呼べば、ほんの僅かに表情が和らいだ気がした。

「…ゃく…に、げ…くだ…さぃ…」

この光景に抱いている疑問をぶつけたかった。
こう、なった理由を男は知っているはずだ。
だがそれよりも何よりも。

「…っ小十郎、逝くな…小十郎っっ!!」

「……た、は…りか、ぇ…ては…な……ない…」

強く首を振る。
そんなことじゃない。
そんなことよりもずっと大事な。
そう思った瞬間、視界がぐるりと回って背中を強か打った。
そして漸く自分は男の一振りを正面から受けたのだと気がついた。

「…こじゅ、」

そして男は再び足下に刀を突き立てた。
地面が揺れて、屍たちが大地に吸い込まれるように落ちていく。
男は。


「貴方は、振り返ってはならない、足枷となるべくものは、すべて…この小十郎が断ち切りましょう」


そう、優しく微笑んで消えた。

慟哭。
全身全霊で叫ぶ身体を抱きしめる体温。
ゆるりと目を開ければ、包み込むように小十郎が抱きしめてくれていた。
何も言わず、何も問わず。
ただ、落ち着く体温で包み込んで。
怖かった、と口にすることは出来なかった。
けれどそれすらもすべて、優しい体温が解いていく。

夢の終わり。
崩れ落ちた先に見えたのは鉛玉。

風に煽られて耳障りな音を立てるは、深紅の。








※竜と魔王の話。魔王に蹂躙された自軍という悪夢を見る竜。

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プロフィール

HN:
瑞季ゆたか
年齢:
33
性別:
女性
誕生日:
1984/02/10
職業:
引きこもり人嫌いの営業AS見習い
趣味:
読書・音楽鑑賞・字書き
自己紹介:
◇2006.11.16開通◇

好きな音楽:Cocco、GRAPEVINE、スガシカオ、LUNKHEAD、アジカン、ORCA、シュノーケル、ELLEGARDEN、LINKIN PARK、いきものがかり、チャットモンチー、CORE OF SOUL、moumoon…などなど挙げたらキリがない。じん(自然の敵P)さんにドハマり中。もう中毒です。
好きな本:長野まゆみ、西尾維新、乙一、浅井ラボ、谷瑞恵、結城光流(敬称略)、NO.6、包帯クラブ、薬屋シリーズなどなど。コミック込みだと大変なことになります(笑)高尾滋さんには癒され、浅野いにおさんには創作意欲を上げてもらいつつ…あでも、緑川ゆきさんは特別!僕の青春です(笑)夏目友人帳、好評連載中!某戦国ゲームにハマり我が主と共に城攻めを細々とのんびり実行中(笑)サークル活動も嗜む程度。他ジャンルに寄り道も多く叱られながらも細々と更新しています…たぶん。

備考。寒さに激弱、和小物・蝶グッズとリサとガスパールモノ・スヌーピーモノと紅茶と飴と文房具…最近はリボンモノもこよなく愛する。一番困るのは大好物と嫌いな食べ物を聞かれること。

気まぐれ無理なくリハビリのように文章やレポを書き綴る日々…褒められて伸びるタイプです。

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