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強張った腕に、


気付かれなかっただろうか。
すっかり脱力している身体を抱きしめる腕に力を込める。

何人斬ったかは覚えていない。
だが自分が敵を深追いしその場所から離れた間に「何か」が通ったということだけははっきりと分かる。

(…深追いなんて、らしくねぇことをした…)

自分の主に切りつけた、というだけで一瞬でも冷静な判断を欠いたことに愕然とした。
だがそれよりも。

「…何だ、これ、は」

目の前には「何か」に蹂躙された仲間の屍が連なって。
ただでさえ荒れ果てていた大地は人の血を吸うように真っ赤に染まっていた。
ゆっくりとその合間を縫って歩き出す。
主の姿が見えない。

(…無事であってくれ…っ)

焦燥感に比例して歩みが早くなる。
刹那。
ただならぬ気配を感じて振り返る。
堅くて冷たい音。
時が止まったような二秒の空白。
劈く銃声と腹に穿たれた鉛玉。
力が抜けて、地面に膝をつく。
刀を地面に突き刺して倒れるのは免れたが、立ち上がるには時間が掛かる。
カチャリ。
硬質な音がしたが、二発目はなかった。

(放っておいてもすぐに死ぬ…そう、見限られたか)

ぼやける視界に入るのは、風にたなびく深紅の。

「小十郎…」

愛しい声がして、そして生きているという事実に安堵する。
けれど、跡形もなく殲滅していくかの男が生きている者を見逃すはずがない。

「…ゃく…に、げ…くだ…さぃ…」

ただ少しでも早く、此処から遠ざけなければ。
それだけが頭の中で反芻して。

「…っ小十郎、逝くな…小十郎っっ!!」

「……た、は…りか、ぇ…ては…な……ない…」

そんな表情を向けてはならない。
此処で命の尽きる存在ではない。
自分の姿に取り乱してはならない。
もし、それが出来ないのならば。

(…足枷には、ならねぇ…)

残りの力を振り絞る。
刃を背に返して、傍に居る何よりも誰よりも幸せを望む愛しいその人に一閃する。
離れたのを確認して、足下に刀を突き立てた。
地面が揺れて、屍たちが大地に吸い込まれるように落ちていく。


「貴方は、振り返ってはならない、足枷となるべくものは、すべて…この小十郎が断ち切りましょう」


そう告げて、優しく微笑んだ。
視界は闇に閉ざされ、その先のことは覚えていない。

「…政宗様、」

悪い夢を見たのだと理解っていた。
その恐怖を口にすることができないとも知っていた。
だから自分にできることは、傍で、抱きしめるだけ。
それで少しでも闇を退けることができるのならば。







※右目と魔王の話。実は右目も同じ悪夢を見ていた…というオチ。

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プロフィール

HN:
瑞季ゆたか
年齢:
33
性別:
女性
誕生日:
1984/02/10
職業:
引きこもり人嫌いの営業AS見習い
趣味:
読書・音楽鑑賞・字書き
自己紹介:
◇2006.11.16開通◇

好きな音楽:Cocco、GRAPEVINE、スガシカオ、LUNKHEAD、アジカン、ORCA、シュノーケル、ELLEGARDEN、LINKIN PARK、いきものがかり、チャットモンチー、CORE OF SOUL、moumoon…などなど挙げたらキリがない。じん(自然の敵P)さんにドハマり中。もう中毒です。
好きな本:長野まゆみ、西尾維新、乙一、浅井ラボ、谷瑞恵、結城光流(敬称略)、NO.6、包帯クラブ、薬屋シリーズなどなど。コミック込みだと大変なことになります(笑)高尾滋さんには癒され、浅野いにおさんには創作意欲を上げてもらいつつ…あでも、緑川ゆきさんは特別!僕の青春です(笑)夏目友人帳、好評連載中!某戦国ゲームにハマり我が主と共に城攻めを細々とのんびり実行中(笑)サークル活動も嗜む程度。他ジャンルに寄り道も多く叱られながらも細々と更新しています…たぶん。

備考。寒さに激弱、和小物・蝶グッズとリサとガスパールモノ・スヌーピーモノと紅茶と飴と文房具…最近はリボンモノもこよなく愛する。一番困るのは大好物と嫌いな食べ物を聞かれること。

気まぐれ無理なくリハビリのように文章やレポを書き綴る日々…褒められて伸びるタイプです。

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