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息を止める

それは偶然で

そして運命で

知らない方がいいと知っていたのに。

ただ、変わっていくことが。


――― 怖いだけなのだ。

拍手[0回]

『振り返りますな、あなたの背はこの小十郎がお守りする』

そう、最初に言われたのはいつだったか。

『振り返れば幾多もの屍が手を伸ばしましょう』

そう、いつだって優しく背中を押して。

『後悔も痛みも甘さもすべて同じく小十郎が背負いまする』

そう、お前は、俺の半身だ。


ドスっと、複数の衝撃に身体が震えた。
愛しきこの背中を押す手が震えなかったか。
殊に自分の変化には鋭いこの竜が気づきはしなかったか。
そのことばかりが頭を巡って、安全な場所にたどり着くまで何の話をしていたのか記憶にない。
生涯任されたこの背中に傷一つつけさせはしない。
それは如何なるものにも折られはしない、自分の決意。誓い。
伊達の屋敷の一番重い戸の向こうに愛しき竜の背中を押して、一歩下がる。

(最後の失敗は、あなたに、最期の瞬間に、振り向くことを、許したこと)

戸が閉じられる瞬間、振り返った竜の目がゆっくりと見開いて。
幾多もの矢を背負って、それでも尚竜が確かに自分の見ているという事実に、笑う。
何か叫んでいるようだったが、もはやそれすらも聞こえない。

(身体中が、本来の機能を果たしていない)

本来ならば、ここまでこうして送り届けることさえ無理だったに違いない。
良く持ちこたえてくれた、そう労う前に膝がガクリと崩れた。
戸に額をくっつけたまま地面に膝を折り、大きく息を吐く。


『何があろうとも、あなたは、ただ、前を』


そして、息を止めた。


『前だけを』






end.
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プロフィール

HN:
瑞季ゆたか
年齢:
40
性別:
女性
誕生日:
1984/02/10
職業:
引きこもり人嫌いの営業AS見習い
趣味:
読書・音楽鑑賞・字書き
自己紹介:
◇2006.11.16開通◇

好きな音楽:Cocco、GRAPEVINE、スガシカオ、LUNKHEAD、アジカン、ORCA、シュノーケル、ELLEGARDEN、LINKIN PARK、いきものがかり、チャットモンチー、CORE OF SOUL、moumoon…などなど挙げたらキリがない。じん(自然の敵P)さんにドハマり中。もう中毒です。
好きな本:長野まゆみ、西尾維新、乙一、浅井ラボ、谷瑞恵、結城光流(敬称略)、NO.6、包帯クラブ、薬屋シリーズなどなど。コミック込みだと大変なことになります(笑)高尾滋さんには癒され、浅野いにおさんには創作意欲を上げてもらいつつ…あでも、緑川ゆきさんは特別!僕の青春です(笑)夏目友人帳、好評連載中!某戦国ゲームにハマり我が主と共に城攻めを細々とのんびり実行中(笑)サークル活動も嗜む程度。他ジャンルに寄り道も多く叱られながらも細々と更新しています…たぶん。

備考。寒さに激弱、和小物・蝶グッズとリサとガスパールモノ・スヌーピーモノと紅茶と飴と文房具…最近はリボンモノもこよなく愛する。一番困るのは大好物と嫌いな食べ物を聞かれること。

気まぐれ無理なくリハビリのように文章やレポを書き綴る日々…褒められて伸びるタイプです。

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