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揺らぐ音。

揺らぐ思い。
気掛かりなこと。
決めたこと。
たくさんの思いや為すべきことがありすぎて、
頭が時折パニックを起こす。
だからこそ、紅の思いを何となく理解してしまった。
決意は変わらないからここに居るのだと思う。
けれど同時にふせっている甲斐の虎が気掛かりなのも事実。
あの忍びが付いているのだ心配はないと理解っていても、
目の前で失いかけたその不安が完全な安堵を与えてはくれない。
これは自分が腹に鉄砲玉を食らったあの時に似ている。
紅にとって甲斐の虎の存在が大きいように、
自分にとってもあの右目は大きすぎる。

馬を休ませるため逸る気持ちを抑えながらも休憩する。
一定の距離を置いて座る紅は無意識に片手で腕を抑えていた。
まだ震えは治まっていないのだろうか。
距離を詰め目の前にしゃがみこむ。
すると不思議そうな紅の視線。
それを見ずに押さえている片腕を軽く撫でた。
紅が少し驚いたような気配がした。

「―――怖いか、」

静かに問えば、

「そんなことは…」

と言いかけて紅の声は途切れた。
冷たく熱を失った指先。
それをゆっくりと握って。
右目は殊更自分のその類の感情には敏感で、
そんな時は何も言わずこうしてくれた。
心配する言葉よりもどれだけ嬉しかったか。

「―――政宗殿、は…」

そのつないだ手を嫌がるでもなく、ぽつりと紅は呟く。

「政宗殿は…怖い、と思ったことはござらぬか?」

片時も離れず傍にいる右目。
戦場に出れば共に傷を負う。

(ましてや、あいつは俺を守ろうとする)

自らの命を投げ出しても。

「その…片倉殿とて、無傷とはいきますまい」

握った手に視線を落としたまま応える。

「…恐れがないことはねぇ」

まだ何も成し遂げていないのに、死ぬわけにはいかないのに。

(遠退く意識の中で初めて、死ぬことが怖いと思った)

覚悟をしているつもりでも、
どこかで失うはずがないと思っている自分がいる。
だからこそそれが損なわれた時に動揺して。

「恐れってのは正しい、ちゃんと本能が機能してる証拠だ」

手を離して立ち上がる。
冷えた指先は体温を取り戻していた。

「人として問題ねぇ」

それよりも失うことを厭わず恐れず、
跡形もなくすべてを蹂躙する方が人として余程狂っている。

「だから狂ってる奴らを止めようって来たんじゃねぇか」

これ以上悲しみを増やすことの無いように。

「こんな思いは、俺たちだけで十分だろ」

「―――そうでござるな、」

「休憩は終わりだ、行くぞ、真田幸村」

「必ずや魔王の首この手で討ち、お館様にご報告申し上げる!!」

急に勢いを取り戻した紅に笑いながら、先を急ぐ。
信じて待つあの右目の元に必ず戻ると心の中で誓いながら。











※先週のアニバサ後妄想らしき。蒼紅共闘が楽しみ。蒼のが紅よりお兄さん(笑)

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プロフィール

HN:
瑞季ゆたか
年齢:
41
性別:
女性
誕生日:
1984/02/10
職業:
引きこもり人嫌いの営業AS見習い
趣味:
読書・音楽鑑賞・字書き
自己紹介:
◇2006.11.16開通◇

好きな音楽:Cocco、GRAPEVINE、スガシカオ、LUNKHEAD、アジカン、ORCA、シュノーケル、ELLEGARDEN、LINKIN PARK、いきものがかり、チャットモンチー、CORE OF SOUL、moumoon…などなど挙げたらキリがない。じん(自然の敵P)さんにドハマり中。もう中毒です。
好きな本:長野まゆみ、西尾維新、乙一、浅井ラボ、谷瑞恵、結城光流(敬称略)、NO.6、包帯クラブ、薬屋シリーズなどなど。コミック込みだと大変なことになります(笑)高尾滋さんには癒され、浅野いにおさんには創作意欲を上げてもらいつつ…あでも、緑川ゆきさんは特別!僕の青春です(笑)夏目友人帳、好評連載中!某戦国ゲームにハマり我が主と共に城攻めを細々とのんびり実行中(笑)サークル活動も嗜む程度。他ジャンルに寄り道も多く叱られながらも細々と更新しています…たぶん。

備考。寒さに激弱、和小物・蝶グッズとリサとガスパールモノ・スヌーピーモノと紅茶と飴と文房具…最近はリボンモノもこよなく愛する。一番困るのは大好物と嫌いな食べ物を聞かれること。

気まぐれ無理なくリハビリのように文章やレポを書き綴る日々…褒められて伸びるタイプです。

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