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散る花よ、

どうかこの胸の痛みを連れていって。




※蒼主従話。死ネタ含みますので注意。続きは折りたたみ。 ↓↓

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「…なぁ、奥州の様子はどうだ?」

そう迷彩に問うて返ってきたのは首を竦める仕草。
自分の身近で一番情報を持っているはずの存在に首を竦められては、
他の人間に問うても帰ってくる返事は同じなのだろうと思う。
だから、この目で確かめるために一路奥州へ出向いたのだった。
目的地への道は覚えている。
こっちに気付いた若い衆に軽く手で挨拶をしながら歩いていると、
道中の畑にその当人を見つけて驚いた。

「…最近どうだい?奥州筆頭」

そう声をかければ、蒼は皮肉そうな笑みを浮かべて
「てめぇは相変わらず能天気そうだな風来坊」
と言った。
並んで城へ歩きながら気付いたことがいくつかある。
「今遊んでやる暇はねぇ、畑仕事がまだ残ってる」
右目ほど畑仕事に関わっていなかったのだ。
やることの多さに驚いているような感心しているような口調だった。
それに笑って相槌を打ちながら、城門をくぐったところで口を開く。

「――――右目の眼帯、取ったんだな」

出会い頭、蒼の象徴とま言うべきそれがないことに酷く違和感を覚えていた。
「…それに、少し痩せたんじゃないか?」
もともと小柄ではあったが。
足を止め振り返った蒼はただ「そうか?」と
まるで気のせいだと言わんばかりに軽い口調で応じただけだった。

中に入ると人の気配はあまりなく、茶を手に座敷にやってきたのは蒼当人だった。
そこに右目の存在が垣間見えた気がして胸が詰まった。
「で、他の連中はどうしてる?」
「他の連中ってのは主に甲斐の虎んとこかい?」
おどけて言えばよく分かってんじゃねぇか、と蒼は笑う。
紅との因縁は相変わらずだ。
「相変わらず元気だよ、アンタと決着をつけるまであの六文銭は使うつもりないとさ」
迷彩の元を訪ねた時、紅にくれぐれも決着を忘れるなと伝えるよう言い含められていたのだ。
「あ、戦事については秘密だからな」
「お前に本当の話をしてるかどうかも怪しいもんだぜ」
確かに身内でもない人間に正直なことを話しているのかと言えば、強くは言えないのだが…。

「奥州はどこにも負けないところだ」

蒼の言葉を背に、立ち上がり外を眺める。
此処は本当に穏やかで優しい場所だと思う。
これは蒼と右目が引っ張って作り上げた、誰もが住みよい世界。
目を細めて愛しむように眺めていると、部屋を出て行く気配がした。
その姿が完全に消えてから、しばらくして追うように座敷をでた。

屋敷の中を歩いていると、嫌でも感じる右目の気配。
ずっと消えず染んでいるような。
屋敷の外に出て漸く蒼の姿を見つけた。
蒼は小高い丘の上に立ち尽くしていた。
その目の前に墓標代わりに突き立てられた刀。
それは蒼と共に突き進んだ右目の愛刀。
そしてその鍔には蒼の眼帯が掛けられていた。

「…もうすぐだ、」

低く、蒼は呟く。
誰よりも傍で、何よりも深く蒼を想い蒼の理想を望んでいた右目。
彼は自らが志半ばで果てることを口惜しく思っていたのだろうか。
それとも蒼を信じすべてを託し安らかに逝ったのだろうか。
その場に居たのは蒼だけで、けれど右目の本意は右目にしか解らないのだろう。
右目に語り掛けるような蒼の小さな背中に、声をかけることができなかった。
ただ、蒼が動くまでその場に立ち尽くすしかなかった。

「…他の武将連中に伝えとけ」

双竜の道は邪魔させねぇ。

奥州筆頭の男は、以前と変わらぬ強い光をその目に宿して言った。
「…風が冷えてきた、戻ろうぜ」
そう言えば、蒼もそうだなと頷いて歩きだす。
その背を見、墓標代わりの刀を見る。

「…アンタは余りに大きすぎるよ、片倉さん」

無論応えはなく。
先ゆく蒼の姿を追う。
見ているのが辛い。
苦しくて堪らない。
忘れてしまえばいいのに。

なぁ、片倉さん、連れていかないでくれよ。

あいつはまだ生きてる、これからも生きてかなきゃならないんだよ。

だから。

「…なぁ、」

振り返る、蒼。
その目は真っすぐで、何もかも見透かしてしまいそうな。

「アンタには、俺がいる、」

木々がさわさわと音を立てて、一陣の風が吹き抜ける。






「…俺じゃあ、アンタの右目にはなれないか?」






(…俺が辛くて…見てられないんだよ…)
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プロフィール

HN:
瑞季ゆたか
年齢:
33
性別:
女性
誕生日:
1984/02/10
職業:
引きこもり人嫌いの営業AS見習い
趣味:
読書・音楽鑑賞・字書き
自己紹介:
◇2006.11.16開通◇

好きな音楽:Cocco、GRAPEVINE、スガシカオ、LUNKHEAD、アジカン、ORCA、シュノーケル、ELLEGARDEN、LINKIN PARK、いきものがかり、チャットモンチー、CORE OF SOUL、moumoon…などなど挙げたらキリがない。じん(自然の敵P)さんにドハマり中。もう中毒です。
好きな本:長野まゆみ、西尾維新、乙一、浅井ラボ、谷瑞恵、結城光流(敬称略)、NO.6、包帯クラブ、薬屋シリーズなどなど。コミック込みだと大変なことになります(笑)高尾滋さんには癒され、浅野いにおさんには創作意欲を上げてもらいつつ…あでも、緑川ゆきさんは特別!僕の青春です(笑)夏目友人帳、好評連載中!某戦国ゲームにハマり我が主と共に城攻めを細々とのんびり実行中(笑)サークル活動も嗜む程度。他ジャンルに寄り道も多く叱られながらも細々と更新しています…たぶん。

備考。寒さに激弱、和小物・蝶グッズとリサとガスパールモノ・スヌーピーモノと紅茶と飴と文房具…最近はリボンモノもこよなく愛する。一番困るのは大好物と嫌いな食べ物を聞かれること。

気まぐれ無理なくリハビリのように文章やレポを書き綴る日々…褒められて伸びるタイプです。

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