monocube
monoには秘めたイロがある。
見えないだけでそこに在る。
数え切れないそれは、やがて絡まり色彩(イロ)になる。
さぁ、箱をあけてごらん。
箱庭(ナカ)は昏(クラ)く底なしの闇色(モノクロ)。
深い闇に融けたらいいのに。
日々の戯言寄せ集め。
当サイトは作者の気まぐれにより、自由気ままに書きなぐった不親切極まりない戯言の箱庭です。
本当に思っていることは、
いつだって伝わらない。
※何だか書いてるうちにこっぱずかしくなってきたので、折りたたみ。↓↓筆頭…乙女です…なんとなく。
※何だか書いてるうちにこっぱずかしくなってきたので、折りたたみ。↓↓筆頭…乙女です…なんとなく。
「竜の旦那の読み通りだったぜ、寸分違わず」
忍からの報告に緩く眼帯を撫でる。
良くないことの前触れはいつだって軋むように痛みを増す右目だ。
「竜の旦那、その眼帯…歪んでないか?」
「触るな」
恐らく親切心で伸ばされたであろう手を短い一言で制す。
手を引いた忍は、「…じゃ、まぁ、俺様は本来のお仕事に戻るから」とすぐさま消えた。
歪んだ眼帯の紐を解いて、手にしたまま座敷を出た。
夜が明けて傍にない温度に酷く動揺した。
待てども気配はなく、嫌な胸騒ぎと共に右目が軋んで。
それからすぐに忍が甲斐の虎の使いとしてやってきて、妙な動きの話を耳にする。
それだけで十分だった。
右目ならば何を考えるのか、どう策を立てるのか、
「戦」という枠において、それを予想するのは然程難しいことではない。
一仕事増えることに渋る忍を急かし目的地に向かわせる。
結果は予想した通り。
返り血と自らの負傷の血で真っ赤に染まった右目を、
忍が発見するのに大した時間は掛からなかった。
『見事なもんだったぜ?アンタが危惧してた連中は一人残らず死んでた、優秀な右目を持ったねェ…さすが悪運は強いぜ』
などと笑う忍の声は耳を通り抜けて行った。
ただ全身で追っていたのは、見ていたのは倒れた右目のことで。
離れの襖を静かに開ける。
未だ深く眠ったままの右目の傍らに座って片膝を立てその上に組んだ腕に顔をうずめる。
(駄目だ、逝くな)
心の底が凍るように冷たい。
屋敷に連れ戻された時に触れたあの冷たさが手に残って消えない。
(お前はまだ、理解ってない)
体温はもう随分戻ってきたと聞いた。
けれど触れることが、怖い。
(全然、伝わらない)
こんな風に傷ついた姿を見るのは、
背中に深い傷を負ったあの時だけでもうたくさんだったのに。
「―――政、宗…さま」
掠れた声。うずめた顔をゆっくりと上げたら、右目は座敷の天井を眺めていた。
「――…短い逃避行だったなァ、小十郎」
努めて静かに努めてゆっくりと言葉を紡ぐ。
「…小十郎には、此処以外に逃げる場所など「shit!!」
単調な言葉を遮って詰め寄る。
「お前はっ」
「先の件は、どの道手を下さねばならなかったこと、手遅れになれば我らとて無事では済みますまい」
「そういうことじゃねぇ」
どこまでも落ち着いた声が腹立たしくて仕方ない。
(違う、そうじゃねぇんだ)
「政宗様」
苦痛を堪えながら起き上がろうとする身体を押さえ込んで馬乗りになる。
手に持っていた眼帯はどこかに放ってしまった。
でも、そんなことはどうだっていいのだ。
「それで怒ってるんじゃねぇんだっ!」
襟元を掴んで、指先が白くなるくらい強く握る。
「お前は全然理解ってねぇ、俺にとってお前の存在がどれだけっ…」
大きくて、深くて、大切な。
「お前が思ってるよりもっとずっと、俺にとっちゃお前が不可欠なんだっ!!」
それは自分が意識しているよりも強い口調で。
こんな一言を口にすることが、苦しくて。
「俺にそれを言わせるお前が憎い」
憎くて仕方ない。
そのまま包帯に覆われた胸に額をつけて。
一定の心音が確かに強く伝わってくる。
(伝われ伝われ伝われ)
それは祈るように。
「…けど、好きなんだ…離れたくねぇんだよ」
離したくない。
いつものように傍に居て。
「抱えてる痛みは口にしなきゃ解らねぇよ、」
何を考え、何を思っているのか本当の意味で理解できるのは自分自身だけなのだ。
「お前は俺に言う必要がないと思うかもしれねぇ、だがどの道知って傷つくなら…触れて傷ついた方がずっといい」
大きな手のひらがさらりと髪を撫でて、それでも顔をあげることができなかった。
何も知らずに失ってからすべてを知るくらいなら、
共に駆け手を汚すことなんて厭わない。
(傷も痛みも共に抱えて生きていく、そう言ったのはお前じゃねぇか)
「―――小十郎は、貴方の傍に戻ってもよろしいか」
ぽつり、吐き出された言葉。
「…それを、貴方は赦して下さるのか」
「―――お前のしたことを赦す気はねぇ、だから死ぬまで俺の傍に居ろ、二度と独りにするな」
顔を上げると、髪を撫でていた手がむき出しの右目にそっと労わるよう触れて。
「…承知、致しました」
その声に、触れる温度に少しずつ荒立った心が落ち着いていく。
「真田の忍に一つ貸しだ、」
主の命令でもないのに動いてくれた迷彩。
「では…早々に返してしまいましょう」
利子がつく前に、と言うからそれが可笑しくて笑う。
そしてそのまま倒れるように右目の隣に転がる。
「―――もうこんなことはすんな、二度目はナシだ」
「…はい、」
そう答えながらも、きっとその時がきたらこの右目は同じ選択をするのだと思う。
それならば、そうならぬように。
その時を少しでも遠ざけることができるならなんだってしよう。
※そして右目が同じ過ちを繰り返しても、きっと蒼はまた赦す。
忍からの報告に緩く眼帯を撫でる。
良くないことの前触れはいつだって軋むように痛みを増す右目だ。
「竜の旦那、その眼帯…歪んでないか?」
「触るな」
恐らく親切心で伸ばされたであろう手を短い一言で制す。
手を引いた忍は、「…じゃ、まぁ、俺様は本来のお仕事に戻るから」とすぐさま消えた。
歪んだ眼帯の紐を解いて、手にしたまま座敷を出た。
夜が明けて傍にない温度に酷く動揺した。
待てども気配はなく、嫌な胸騒ぎと共に右目が軋んで。
それからすぐに忍が甲斐の虎の使いとしてやってきて、妙な動きの話を耳にする。
それだけで十分だった。
右目ならば何を考えるのか、どう策を立てるのか、
「戦」という枠において、それを予想するのは然程難しいことではない。
一仕事増えることに渋る忍を急かし目的地に向かわせる。
結果は予想した通り。
返り血と自らの負傷の血で真っ赤に染まった右目を、
忍が発見するのに大した時間は掛からなかった。
『見事なもんだったぜ?アンタが危惧してた連中は一人残らず死んでた、優秀な右目を持ったねェ…さすが悪運は強いぜ』
などと笑う忍の声は耳を通り抜けて行った。
ただ全身で追っていたのは、見ていたのは倒れた右目のことで。
離れの襖を静かに開ける。
未だ深く眠ったままの右目の傍らに座って片膝を立てその上に組んだ腕に顔をうずめる。
(駄目だ、逝くな)
心の底が凍るように冷たい。
屋敷に連れ戻された時に触れたあの冷たさが手に残って消えない。
(お前はまだ、理解ってない)
体温はもう随分戻ってきたと聞いた。
けれど触れることが、怖い。
(全然、伝わらない)
こんな風に傷ついた姿を見るのは、
背中に深い傷を負ったあの時だけでもうたくさんだったのに。
「―――政、宗…さま」
掠れた声。うずめた顔をゆっくりと上げたら、右目は座敷の天井を眺めていた。
「――…短い逃避行だったなァ、小十郎」
努めて静かに努めてゆっくりと言葉を紡ぐ。
「…小十郎には、此処以外に逃げる場所など「shit!!」
単調な言葉を遮って詰め寄る。
「お前はっ」
「先の件は、どの道手を下さねばならなかったこと、手遅れになれば我らとて無事では済みますまい」
「そういうことじゃねぇ」
どこまでも落ち着いた声が腹立たしくて仕方ない。
(違う、そうじゃねぇんだ)
「政宗様」
苦痛を堪えながら起き上がろうとする身体を押さえ込んで馬乗りになる。
手に持っていた眼帯はどこかに放ってしまった。
でも、そんなことはどうだっていいのだ。
「それで怒ってるんじゃねぇんだっ!」
襟元を掴んで、指先が白くなるくらい強く握る。
「お前は全然理解ってねぇ、俺にとってお前の存在がどれだけっ…」
大きくて、深くて、大切な。
「お前が思ってるよりもっとずっと、俺にとっちゃお前が不可欠なんだっ!!」
それは自分が意識しているよりも強い口調で。
こんな一言を口にすることが、苦しくて。
「俺にそれを言わせるお前が憎い」
憎くて仕方ない。
そのまま包帯に覆われた胸に額をつけて。
一定の心音が確かに強く伝わってくる。
(伝われ伝われ伝われ)
それは祈るように。
「…けど、好きなんだ…離れたくねぇんだよ」
離したくない。
いつものように傍に居て。
「抱えてる痛みは口にしなきゃ解らねぇよ、」
何を考え、何を思っているのか本当の意味で理解できるのは自分自身だけなのだ。
「お前は俺に言う必要がないと思うかもしれねぇ、だがどの道知って傷つくなら…触れて傷ついた方がずっといい」
大きな手のひらがさらりと髪を撫でて、それでも顔をあげることができなかった。
何も知らずに失ってからすべてを知るくらいなら、
共に駆け手を汚すことなんて厭わない。
(傷も痛みも共に抱えて生きていく、そう言ったのはお前じゃねぇか)
「―――小十郎は、貴方の傍に戻ってもよろしいか」
ぽつり、吐き出された言葉。
「…それを、貴方は赦して下さるのか」
「―――お前のしたことを赦す気はねぇ、だから死ぬまで俺の傍に居ろ、二度と独りにするな」
顔を上げると、髪を撫でていた手がむき出しの右目にそっと労わるよう触れて。
「…承知、致しました」
その声に、触れる温度に少しずつ荒立った心が落ち着いていく。
「真田の忍に一つ貸しだ、」
主の命令でもないのに動いてくれた迷彩。
「では…早々に返してしまいましょう」
利子がつく前に、と言うからそれが可笑しくて笑う。
そしてそのまま倒れるように右目の隣に転がる。
「―――もうこんなことはすんな、二度目はナシだ」
「…はい、」
そう答えながらも、きっとその時がきたらこの右目は同じ選択をするのだと思う。
それならば、そうならぬように。
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プロフィール
HN:
瑞季ゆたか
年齢:
40
性別:
女性
誕生日:
1984/02/10
職業:
引きこもり人嫌いの営業AS見習い
趣味:
読書・音楽鑑賞・字書き
自己紹介:
◇2006.11.16開通◇
好きな音楽:Cocco、GRAPEVINE、スガシカオ、LUNKHEAD、アジカン、ORCA、シュノーケル、ELLEGARDEN、LINKIN PARK、いきものがかり、チャットモンチー、CORE OF SOUL、moumoon…などなど挙げたらキリがない。じん(自然の敵P)さんにドハマり中。もう中毒です。
好きな本:長野まゆみ、西尾維新、乙一、浅井ラボ、谷瑞恵、結城光流(敬称略)、NO.6、包帯クラブ、薬屋シリーズなどなど。コミック込みだと大変なことになります(笑)高尾滋さんには癒され、浅野いにおさんには創作意欲を上げてもらいつつ…あでも、緑川ゆきさんは特別!僕の青春です(笑)夏目友人帳、好評連載中!某戦国ゲームにハマり我が主と共に城攻めを細々とのんびり実行中(笑)サークル活動も嗜む程度。他ジャンルに寄り道も多く叱られながらも細々と更新しています…たぶん。
備考。寒さに激弱、和小物・蝶グッズとリサとガスパールモノ・スヌーピーモノと紅茶と飴と文房具…最近はリボンモノもこよなく愛する。一番困るのは大好物と嫌いな食べ物を聞かれること。
気まぐれ無理なくリハビリのように文章やレポを書き綴る日々…褒められて伸びるタイプです。
好きな音楽:Cocco、GRAPEVINE、スガシカオ、LUNKHEAD、アジカン、ORCA、シュノーケル、ELLEGARDEN、LINKIN PARK、いきものがかり、チャットモンチー、CORE OF SOUL、moumoon…などなど挙げたらキリがない。じん(自然の敵P)さんにドハマり中。もう中毒です。
好きな本:長野まゆみ、西尾維新、乙一、浅井ラボ、谷瑞恵、結城光流(敬称略)、NO.6、包帯クラブ、薬屋シリーズなどなど。コミック込みだと大変なことになります(笑)高尾滋さんには癒され、浅野いにおさんには創作意欲を上げてもらいつつ…あでも、緑川ゆきさんは特別!僕の青春です(笑)夏目友人帳、好評連載中!某戦国ゲームにハマり我が主と共に城攻めを細々とのんびり実行中(笑)サークル活動も嗜む程度。他ジャンルに寄り道も多く叱られながらも細々と更新しています…たぶん。
備考。寒さに激弱、和小物・蝶グッズとリサとガスパールモノ・スヌーピーモノと紅茶と飴と文房具…最近はリボンモノもこよなく愛する。一番困るのは大好物と嫌いな食べ物を聞かれること。
気まぐれ無理なくリハビリのように文章やレポを書き綴る日々…褒められて伸びるタイプです。