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白日。

深い闇の中。
パチパチと音を立てる炎を見つめながら、他の五本とは異なる黒龍を抜く。
あの時確かに自分を止めたのはこの刀だった。
逸って真実を見失いそうになっていた心を鎮める声。

『政宗様』

それは皮肉にも、不在のアイツの声だった。




※双竜捏造過去話。アニ●サ7話の影響で、離れていても繋がっている二人。続きは折りたたみ↓↓

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いつの戦だったか。
六爪の中でも一番手に馴染む一振りを手に既に決した戦場を見渡していると、小十郎が近づいてきた。

「此度の戦もお見事でした」

そう滅多に出ない褒め言葉に、少しだけ嬉しくなったのは事実だ。
「コイツぁ、いいな」
腰に下げた五本の刀と、手にした一本。
派手で使い勝手の良い、自慢の刀だ。
「まだまだ荒削りではありますが、あなたにはよく合った刀だ」
小十郎すらもそう認めているその刀の一振りを鞘におさめた。
「それだけじゃねぇ、この刀は六本で一振りだ」
自分がこれを気に入っている意味。理由。
小十郎は何も言わずに言葉の続きを待っている。

「一本だって欠けちゃなんねぇ、俺たちと同じだ」

誰一人何一つ失うことがないようにという決意。
小十郎はその言葉に微かに笑ったが、やがて横に並んで六爪の柄に触れた。
見上げたその表情に先刻の微笑はなかった。
「今はそれいい、けれど、これからあなたが歩む道はそう容易くはありません」
戦の規模がでかくなれば、相手が強いほど、それはずっと難しく、時に苦渋の決断を迫られることになるかもしれない。
「この刀とて、或いはひとつまたひとつと失うことになるやもしれません」
誰一人何一つ失うことなく、などどただの理想に成り果てるかもしれない。

「…それでも、俺は俺を曲げるつもりはねぇ」

その甘さも全部連れて行く。
すると小十郎は漸く表情を緩めた。
そして六爪に触れていた手で今度は自らの黒龍に触れる。

「もしその刀を失うことがあれば、この黒龍をお使い下さい。他の五本には劣るやもしれませんが、この小十郎、最後の最後まであなたと共に駆け共に生きると決めております故」

刀なら、ここに。
そう真っ直ぐな瞳で言うから。
「…ha!お前は俺の刀じゃなくて右目だろうが」


空白の時間。
なくなった六爪の一振り。
「…まさか、なくなった一本がお前だなんて思わねぇだろうが」
確かに一番使い慣れたあの一本がない。
そして同様にずっと傍にいた右目が居ない。
けれど。

『この小十郎、最後の最後まであなたと共に駆け共に生きると決めております故』

その想いは、心は、残していった。
抜き身の黒龍に炎の緋色が反射する。
「そうだな、刀なら、ここにある。心も、ちゃんと連れて行く」
あの時の自分を止めた声。

『くれぐれも決して逸られませぬように…切に』

それは幻ではない。
自分の性格を一番理解している右目のことだ。
「傍で見てるわけでもねぇのに、…本当に心配性だな、お前は」
大阪で、待っている。

(だったら、俺がどうするかなんて、お前にはお見通しなんだろうな)

豊臣が取り戻すついでだなんて知ったら、きっと眉間に深い皺を寄せて黙ってしまいそうだ。
黒龍を軽く振って鞘に戻す。


「―――…待ってろよ、」


すぐに、取り戻す。







※政宗様に黒龍が、小十郎に六爪の一本が渡るってこれ何かあったらいいのにと思っていたら案の定繋がってくれて非常に嬉しかった!双竜って特別に格別すぎるだろ。
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プロフィール

HN:
瑞季ゆたか
年齢:
40
性別:
女性
誕生日:
1984/02/10
職業:
引きこもり人嫌いの営業AS見習い
趣味:
読書・音楽鑑賞・字書き
自己紹介:
◇2006.11.16開通◇

好きな音楽:Cocco、GRAPEVINE、スガシカオ、LUNKHEAD、アジカン、ORCA、シュノーケル、ELLEGARDEN、LINKIN PARK、いきものがかり、チャットモンチー、CORE OF SOUL、moumoon…などなど挙げたらキリがない。じん(自然の敵P)さんにドハマり中。もう中毒です。
好きな本:長野まゆみ、西尾維新、乙一、浅井ラボ、谷瑞恵、結城光流(敬称略)、NO.6、包帯クラブ、薬屋シリーズなどなど。コミック込みだと大変なことになります(笑)高尾滋さんには癒され、浅野いにおさんには創作意欲を上げてもらいつつ…あでも、緑川ゆきさんは特別!僕の青春です(笑)夏目友人帳、好評連載中!某戦国ゲームにハマり我が主と共に城攻めを細々とのんびり実行中(笑)サークル活動も嗜む程度。他ジャンルに寄り道も多く叱られながらも細々と更新しています…たぶん。

備考。寒さに激弱、和小物・蝶グッズとリサとガスパールモノ・スヌーピーモノと紅茶と飴と文房具…最近はリボンモノもこよなく愛する。一番困るのは大好物と嫌いな食べ物を聞かれること。

気まぐれ無理なくリハビリのように文章やレポを書き綴る日々…褒められて伸びるタイプです。

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