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蔵出し3…

2012年5月23日『恋文の日』記念で書いたお話その3。
小十佐で鈴雅さんからキスの日記念もらったので、同じお題というのもつまらないから恋文の日でやってやった!(ドヤァ)
鈴雅さんの佐助があまりにも可愛いから、僕ももだもだジタバタさせようとした結果がこれ。
僕には少しハードルが高い。。。



※小十佐。続きは折りたたみ↓↓

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「…んじゃ、旦那への文確かに預かりましたっと」
庭から助走もつけずに軽く塀にのぼる佐助の背中に政宗の声が。
「忍、待てよ。忘れもんだ」
振り返る佐助に投げられた文らしきものをトントンと二回弾いてしっかり掴む。
「…何、これ?」
「さぁな」
政宗は楽しそうに笑うだけで答えなかった。佐助は首をこきりと傾げてから、帰途についた。
奥州と甲斐は今休戦状態にある。公式に同盟は結んでいないものの、こうして互いの状況を伝達し合う。天下は大事だが、己が国を大事に思うのは両者とも同じだ。鼻をかすめる匂いが変わると既に国境。佐助は投げられた文らしきものを懐から出し、日に翳す。透けるはずもないのだから中身は分からないが。だが察するにこれはどうやら佐助に宛てられたものらしい。
「…何だろ、」
とりあえず今は与えられた任務を遂行するのみ。文らしきものを再び懐にしまい佐助は地を蹴った。この分なら夕刻までには甲斐に入れるだろう。まだまだ日は高くなったばかりだ。

佐助が奥州に入ったのは昨日の日が落ちてからだった。すっかりお馴染みの兵士たちに次第を告げればすぐに小十郎が顔を出して中に通してくれた。
「好きにしてて構わねぇぜ?あいつも政務は終わってるだろうしな」
「ホント、独眼竜って嫌い」
「奇遇だな、俺も好きじゃねぇ」
そんな軽口を交わしても、政宗はすぐに返事に取り掛かってくれたようだ。手持無沙汰になった佐助は縁を歩いて中庭に出ると、木の上で池を見下ろしながら一息ついた。…その声がかかるまでは。
「猿飛、居るんだろ」
どうしてこの右目は自分を見つけるのが上手いのか、いつも佐助は考えている。屋根の上でも他の木だってあるのに、この池の上の木に向かって言ってくる。
「なんでアンタは…」
「忍なら水面からも姿を消してみせるんだな」
笑いながら言う言葉に池を見下ろすと、そこに自分の姿が映っていた。佐助はくしゃくしゃと頭を掻いて、未だ笑う小十郎の傍らに降りた。
「俺様に何か用?」
「畑、ちょっと付き合え」
「えー…俺様クタクタなんだけど」
「いいから、来い」
そう問答無用で佐助は小十郎に引きずられて畑に向かうことになった。畑は屋敷から少し歩いたところにある。最後に見た時より広がっているような気がしたのは、この宵闇のせいだろうか。光源は月と星。その優しい光が降り注ぐ畑は静かで涼しい。
「木の上よりはいいだろう」
畦道の手前に腰を下ろしていると、小十郎が何かを持ってくる。顎で手を出すように促され手を出すと、赤く熟れたトマトが落ちてきた。そして小十郎が佐助の傍らに腰を下ろす。
「…じゃ、遠慮なく」
星空を見上げながらトマトを食べるとはなんとも不思議な様子だが、佐助の気分は満更でもない。それはトマトが美味しかったからか、星空が美しかったからか。
「……ありがと、ね」
小十郎が気遣ってここへ連れてきてくれたことが何より嬉しかった。
「甲斐ではこんな夜空は見えるのか?」
「ん?そうだね、キレイだよなかなかに。まぁ、俺様は宵闇とは仲良しだから色んな場所で空を見上げたけど…」
「けど?」
「…ここの星空は、結構いい感じ」
星空を見上げて佐助が言うと、ふっと小十郎が嬉しそうに表情を緩めた。
「…そうか、」
その夜は、客間なんぞ落ち着かないと佐助が申し出を蹴ったばかりに、小十郎の座敷で仮眠をとることになり、政宗の返事を預かってこうして帰途についたというわけだ。

肌に触れる風が変わる。この肌に馴染む風は甲斐の風だ。
「…意外と早く着いたな」
そう景色を見渡して城下に降り立つ。
「大将に渡す文はっと…」
「佐助っ、戻ったか!」
「旦那、大将は部屋?」
「うむ。…して、政宗殿は…」
好敵手と定めて以来、幸村は政宗に焦がれるようになった。信玄しか見えていなかった時と比べれば、それが良い影響をもたらしていることは違いない。己のために鍛錬するのは成長の証でもある。
「相変わらず元気なもんさ、」
「そうか…うぉぉぉぉぉぉおおっ!!」
息災と聞いて更に鍛錬に熱が入る幸村を見送り、佐助は奥座敷に向かう。
「佐助、戻りました」
「入れ」
「幸村の声から察するに、竜の小僧は息災であったか」
「えぇ、そりゃもう生意気なほど」
佐助は返事の文を渡してため息をつくと、信玄は豪快に笑った。
佐助は自分に与えられた小さな一間で軽装になると、畳に落ちた文らしきものを手にとり、開く。そして短く書かれた文を読み、その文を落とした。うろうろと座敷の中を歩いてから壁に寄りかかり座ると、落とした文を指先でつまんで引き寄せる。それを胡坐をかく足の上に広げて、くしゃくしゃと頭を掻く。
「…あー、もう」
白い紙には、癖のない綺麗な字で短くこうあった。

『次は満月の頃に来い、またあの星空の下に連れてってやる』

(ホント、あの男は…っ!///)
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プロフィール

HN:
瑞季ゆたか
年齢:
40
性別:
女性
誕生日:
1984/02/10
職業:
引きこもり人嫌いの営業AS見習い
趣味:
読書・音楽鑑賞・字書き
自己紹介:
◇2006.11.16開通◇

好きな音楽:Cocco、GRAPEVINE、スガシカオ、LUNKHEAD、アジカン、ORCA、シュノーケル、ELLEGARDEN、LINKIN PARK、いきものがかり、チャットモンチー、CORE OF SOUL、moumoon…などなど挙げたらキリがない。じん(自然の敵P)さんにドハマり中。もう中毒です。
好きな本:長野まゆみ、西尾維新、乙一、浅井ラボ、谷瑞恵、結城光流(敬称略)、NO.6、包帯クラブ、薬屋シリーズなどなど。コミック込みだと大変なことになります(笑)高尾滋さんには癒され、浅野いにおさんには創作意欲を上げてもらいつつ…あでも、緑川ゆきさんは特別!僕の青春です(笑)夏目友人帳、好評連載中!某戦国ゲームにハマり我が主と共に城攻めを細々とのんびり実行中(笑)サークル活動も嗜む程度。他ジャンルに寄り道も多く叱られながらも細々と更新しています…たぶん。

備考。寒さに激弱、和小物・蝶グッズとリサとガスパールモノ・スヌーピーモノと紅茶と飴と文房具…最近はリボンモノもこよなく愛する。一番困るのは大好物と嫌いな食べ物を聞かれること。

気まぐれ無理なくリハビリのように文章やレポを書き綴る日々…褒められて伸びるタイプです。

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