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主従とっかえ生き残りゲーム③

政宗と佐助の話続き。

その①http://yutamizu.blog.shinobi.jp/Entry/159/
その
http://yutamizu.blog.shinobi.jp/Entry/160/

※小政・佐幸前提、政+佐・幸+小の話その③
なんか色々とあってキャラ崩壊してるし恥ずかしいので折りたたみ↓↓

拍手[1回]





故あって、現在佐助は真田忍隊の隊長としてではなく、奥州筆頭・伊達政宗のもとに在った。真田の空席には、本来この場所に居る片倉小十郎が収まっている。この交換の期限も見えない中、相変わらず政宗との言い合い(佐助としては一方的にからかっているつもりだ)をしながら日々を過ごしている。その中で気が付いたことがある。つい、幸村に対して作っている、所謂お決まりのおやつ時間がこの奥州には確立されていなかったことである。一武将に過ぎない幸村とは違い、政宗は日々稽古と国主としての政務をこなしている。鍛錬をしているときは大体タイミングを見計らって声を掛けるのだが、政務の時はそれがなかなか難しい。
「ひと休みしたら?」
「Ah?あぁ、真田のおやつ休みか」
どこから探してくるのか、ひと休みについてくる菓子は時折政宗の知らないものがある。案外小十郎ならば知っているのかもしれないが。
「根詰めて倒れるのはアンタの勝手だけど、その世話を焼くのは御免だしね」
テヘペロ★とでも言いたげに佐助が舌を出す。
「真田が自分の面倒も見られなくなったのは、てめぇの過保護が原因なんじゃねぇのか?」
最初は政宗も決まって出されるこのおやつ時間には驚いたが、癖とは言え何も言わないのに毎日続けられると無碍にも出来ず慣れてしまう。
 
(小十郎が戻ってきて、これがないことを物足りなく感じたら負けだな…)
 
そんなことを思いながら、政宗は今日のおやつに手を伸ばした。
「…何だ、文書を処理している俺が珍しいか?」
「もう見慣れたけどね」
信玄も同じようなことをしているのだろうが、任務がなければ佐助は幸村と行動を共にすることがほとんどだ。幸村が文書処理などすることは稀で、それを稽古と並行でする政宗の様子はやはり新鮮ではある。
「国主なんだ、これでも…と思って」
「忍は楽でいいな、代わってくれよ」
政宗は脇息にもたれながら答える。こんな態度を小十郎が見たら、行儀が悪いと小言が飛び出すだろうが。
「筆頭~っ!」
勢いよく顔を出す兵士に、佐助も視線を遣る。最初はこの伊達の気質は知っていたが声がでかいと嫌味も込めて耳を塞ぐ仕草をしていた佐助だが、それもしなくなった。慣れとは何とも怖い。
 
(まぁ、旦那と大将のやりとりもあれで結構声もでかいしな…)
 
「今年の野菜の出来は去年越えっすよ!!」
「小十郎が不在で悪いな、手分けして済ませてくれ」
「承知っす!」
「あ、じゃあ及ばずながら俺様も手伝うよ。右目ご自慢の畑も興味深いしね」
身軽に佐助が庭に下りる。
「下手なことすんなよ。何かあった時、地味にへこんだ被害受けるのは俺だからな」
「え~?どうしようかなぁ」
「さっさと去ね」
政宗は佐助にしっしと払うように手を振った。佐助は伊達の兵士に案内されるように小十郎の畑に向かった。伊達の人間はみな佐助にフレンドリーである。政宗の態度こそ、そして最初の日こそ険悪だったがそれも日常の戯れになっていることを知っているし、政宗が警戒を解けばそれでもう十分のようだ。
 
(仮に俺様が反旗をひるがえしたらどうすんだか…)
 
そうだとしても、きっとその時までこの態度は変わらないだろう。甲斐の民には負けるが、この奥州の民たちもいい民だと佐助は思う。
「そっち持てっ」
「こっちにも手を貸してくれ」
「籠は足りてるか!」
佐助が小十郎の畑に着くと、既に収穫できるものは収穫されている。広大な畑故と言うのもあるが、この畑を小十郎不在の折も管理できる人が多いことに感動する。
「俺様も手伝うよ、これあの兄さんに渡せばいいかい?」
「あぁ、一杯になったらこっちに運んでくれ」
「はいよ」
籠を片手にひょいひょいと畦道をわたっていく佐助。
「それ一杯なら預かるよ~」
「ありがとうね。まったく旦那より、このお兄さんの方がよっぽど仕事が早くて助かるよ」
人々の笑い声。豪快で荒いが人らしい気質の民たち。それが佐助には少し心地いい。この畑が愛されているのは、民たちが竜を愛し、そして竜と同じく誰にでも気兼ねなく接してくる右目を愛しているからだ。
「水のあげすぎか…?」
籠を運んだその足で、しゃがむ翁の傍に並ぶ。
「それもあるかな…でも、その前にもっと藁重ねた方がいいんじゃないかい?奥州の夜は冷え込むだろう?水分が凍結しちまうのかも」
「おぉ、そうか…そうだな。おいっ、ちょっと裏から藁もってこいっ」
その声に、威勢よく若者が走っていく。
「儂も昔はもっと目が利いたんじゃが、今は小十郎様に任せっきりでな」
あの義理堅い小十郎のことだ、先人を敬うのは当然で、こうして手伝ってくれる民たちに敬意を払っているのだろう。
「何せ小十郎様の作る作物はみな栄養満点で美味くてな…」
佐助は小十郎自慢を受けた。
その後、収穫物は手分けして一部を伊達の屋敷に運ぶ。
「忍の兄さん、細いのに力持ちだな」
「しょっちゅう旦那抱えてるからね」
そんな軽口をたたきながら屋敷に戻ると、政宗は眉間に皺を寄せていた。一枚の紙を見つめながら事の次第を考えているのかもしれない。余計な口は挟まず腰を下ろすと、ゆっくりと政宗が口を開いた。
 
「―――まだ、余力はあるか」
 
「誰に言ってんのさ」
佐助の即答に、政宗の口許が歪む。
「そんな大規模じゃねェが、一揆の気配がある。黒脛巾の一部をお前に預ける、状況の報告を頼む」
「はいよ、任されました」
佐助はすっと音もなく立ち上がり姿を消した。それからすぐに報告が上がる。
「確かに規模は危惧するほどのものではなさそうだ。ただ、」
「伊達の領内ゆえに、俺が出て収めるのが妥当、か?」
「…仰る通りで」
「分かった、すぐに出る。兵には警戒だけ伝えておけ、俺とお前が居れば問題ない数なんだろ?」
にやりと政宗が笑う。佐助を頭数に入れているのは、その立場にいるなら手を貸せ、ということで。それ以外出す気がないとは、無駄に騒ぎを大きくしない為か。
 
(なるほど…一応、国主をやってるってわけか)
 
「それなら成実さんに言っとけば大丈夫だな」
「…Han、人間観察っぷりはさすがだな、忍」
日が落ちる前にけりをつける、と言い残し、二人は城下を出る。それを見送る成実のため息が背中に聞こえて、佐助は苦笑した。
「刃向かうやつはすべて斬れ、」
「首謀者を残して、だろ?」
「Ha!」
どこまでも察する。小十郎程ではないが、政宗は佐助のこの察しの良さは悪くないと思っている。すっとすぐに気配が消える。
「Let’s Party!!」
面白くもない戦いだが。
一人一人の腕は取るに足らない。首を傾げて太刀を躱し、猫のようにしなやかに距離を詰めては胴に一閃。倒れる身体を盾に防いで、敵の首を裂く。振りかぶる一閃は、大型手裏剣に先を越された。
「いくら見えないからって、右側がおろそか過ぎやしないかい?独眼竜」
「shit!」
政宗は舌打ちして、佐助の大型手裏剣と六爪のの一振りを交えてから離れる。
 
(あいつの気配に気が付かなかった…)
 
戦場では周りを見渡す冷静さも必要、そう小十郎に窘められたことを思いだした。いつもそういう足りない部分を補ってくれるのは小十郎だ。
 
(…つーか、あいつの視界は広く、早い)
 
時折戦場に迷彩の姿を見つけるが、あれすらも残像かもしれない。
 
(小十郎には劣るが、友軍だと思うと忍も悪くねぇ…。なるほど、通りで真田があぁも熱く馬鹿正直にまっすぐ突き進めるわけだ)
 
その道を、佐助が示す。そして、導くように邪魔するものをその手に掛ける。
 
(―――負けられねぇ、)
 
忍にも、幸村にも。
政宗は口許を楽しそうに歪めて六爪を抜く。バチバチと走る稲妻は政宗の感情の高ぶりに比例して、輝きを増す。
「…へぇ、おっかね」
そんな佐助の呟きを知る由もなく。
事態は驚くほど速く集結し、気を失って佐助の片手に捕まる首謀者以外、皆敵は地に伏せていた。
「…随分と早く終わったかな、俺様頑張っちゃったし」
「Ha!小十郎に比べたらまだまだひよっこだな、真田といいてめぇといい」
「うちの旦那なら、戦中に不謹慎な笑みなんて浮かべないよ気持ち悪い」
一定の距離を取りながら、軽口の応酬。
「てめぇがもっと動ければ、苦労しなかった」
「俺様の働きを腕が鈍った言い訳にしないでくれる?」
けれどその表情は、二人とも悪くはない。
「…つーか、腹減ったな」
「気が合うね、俺様もお腹と背中くっついちゃいそう」
「帰ったら飯だな」
「そうね」
日が落ちる空を背中に、二人は屋敷に戻った。
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プロフィール

HN:
瑞季ゆたか
年齢:
40
性別:
女性
誕生日:
1984/02/10
職業:
引きこもり人嫌いの営業AS見習い
趣味:
読書・音楽鑑賞・字書き
自己紹介:
◇2006.11.16開通◇

好きな音楽:Cocco、GRAPEVINE、スガシカオ、LUNKHEAD、アジカン、ORCA、シュノーケル、ELLEGARDEN、LINKIN PARK、いきものがかり、チャットモンチー、CORE OF SOUL、moumoon…などなど挙げたらキリがない。じん(自然の敵P)さんにドハマり中。もう中毒です。
好きな本:長野まゆみ、西尾維新、乙一、浅井ラボ、谷瑞恵、結城光流(敬称略)、NO.6、包帯クラブ、薬屋シリーズなどなど。コミック込みだと大変なことになります(笑)高尾滋さんには癒され、浅野いにおさんには創作意欲を上げてもらいつつ…あでも、緑川ゆきさんは特別!僕の青春です(笑)夏目友人帳、好評連載中!某戦国ゲームにハマり我が主と共に城攻めを細々とのんびり実行中(笑)サークル活動も嗜む程度。他ジャンルに寄り道も多く叱られながらも細々と更新しています…たぶん。

備考。寒さに激弱、和小物・蝶グッズとリサとガスパールモノ・スヌーピーモノと紅茶と飴と文房具…最近はリボンモノもこよなく愛する。一番困るのは大好物と嫌いな食べ物を聞かれること。

気まぐれ無理なくリハビリのように文章やレポを書き綴る日々…褒められて伸びるタイプです。

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