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行き場のない感情は、


心の中に沈殿するだけで。
その思いを吐き出す方法は知らない(知ってはならない)。
いつか吐き出してしまうから。

最近頻繁に現れる忍の存在には気付いていた。
菜園の話もしたし、
武田以外の動きを情報交換出来たのはかなりの成果だ。
常に動けるよう体制は整えているものの、
奥州は諜報部隊に欠ける。
今のところその穴埋めをしてもらっているような状態なのは確かだ。
そういう意味で無下にすることも出来ないが、
無論馴れ合うつもりはかけらもない。
当の主人は忍の口から上田の紅の話を楽しみにしているようだが。
「…アハハ、残念こっちでしたー」
「てめ、すり替えてねぇだろうな?」
「まさかー」
楽しげな声に見遣れば、
縁で主人と忍が何かをしているようだった。
「小十郎、ちょっと来い」
主人の手招きに近づくと、
どうやらビー玉を隠した手を当てるゲームをしているらしい。
「ありゃ、野性のカンてやつかね、」
「ん、」
差し出された両手の右を指す。
開いた手には何もない。
「団子がかかると、絶対に旦那は外さないんだよ」
忍は楽しそうに笑いながら、また両手を差し出す。
「団子ににつられるってのは何ともあいつらしいな」
主人はまた右を指した。
「でしょー?ハズレ」
開いた手にはやはりビー玉はない。
眉間に皺を寄せていく主人を横目にひっそりと笑った。
「お前はどっちだと思う?」
主人の視線を受け、両手を見、右の手を軽く叩く。
「…あちゃあ…」
右手からビー玉がこぼれ落ちた。

「…greatじゃねぇか」

口笛で上機嫌な主人に笑みを返して答えるように軽く会釈をする。
「さて、まだ仕事がありますゆえ」
「おう、」
その場を離れようと顔を上げると忍と目が合って。
忍は含みのある笑みをしていた。

日が傾いで縁を通りかかるとそこに眠る主人の姿を見つけた。
その姿に足を踏み出そうとした時、黒い影が過って。
忍は自分に背を向けて縁に腰掛けるとそのまま背を曲げた。
それはまるで。
脚は根を張ったように固まって、
その光景から目が離せなくなる。
忍は。
顔を上げ最初から気付いていたとばかりに振り返り、
口唇に人差し指を当て笑った。
そしてそのまま訪れる闇に姿をくらませた。

「…猿飛…」

不愉快なのを何一つ隠すことなく、
その背中が消えた方をただ睨んだ。
拳をにぎる。
暴れだしそうな行き場のない感情を押さえ込むまで、
主人には触れられない。
必死で落ち着かせるように深く空気を吸い込んだ。





※知ってて離さない被害は無論右目も被っている。…今日も酷いな…orz

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プロフィール

HN:
瑞季ゆたか
年齢:
40
性別:
女性
誕生日:
1984/02/10
職業:
引きこもり人嫌いの営業AS見習い
趣味:
読書・音楽鑑賞・字書き
自己紹介:
◇2006.11.16開通◇

好きな音楽:Cocco、GRAPEVINE、スガシカオ、LUNKHEAD、アジカン、ORCA、シュノーケル、ELLEGARDEN、LINKIN PARK、いきものがかり、チャットモンチー、CORE OF SOUL、moumoon…などなど挙げたらキリがない。じん(自然の敵P)さんにドハマり中。もう中毒です。
好きな本:長野まゆみ、西尾維新、乙一、浅井ラボ、谷瑞恵、結城光流(敬称略)、NO.6、包帯クラブ、薬屋シリーズなどなど。コミック込みだと大変なことになります(笑)高尾滋さんには癒され、浅野いにおさんには創作意欲を上げてもらいつつ…あでも、緑川ゆきさんは特別!僕の青春です(笑)夏目友人帳、好評連載中!某戦国ゲームにハマり我が主と共に城攻めを細々とのんびり実行中(笑)サークル活動も嗜む程度。他ジャンルに寄り道も多く叱られながらも細々と更新しています…たぶん。

備考。寒さに激弱、和小物・蝶グッズとリサとガスパールモノ・スヌーピーモノと紅茶と飴と文房具…最近はリボンモノもこよなく愛する。一番困るのは大好物と嫌いな食べ物を聞かれること。

気まぐれ無理なくリハビリのように文章やレポを書き綴る日々…褒められて伸びるタイプです。

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