monocube
monoには秘めたイロがある。
見えないだけでそこに在る。
数え切れないそれは、やがて絡まり色彩(イロ)になる。
さぁ、箱をあけてごらん。
箱庭(ナカ)は昏(クラ)く底なしの闇色(モノクロ)。
深い闇に融けたらいいのに。
日々の戯言寄せ集め。
当サイトは作者の気まぐれにより、自由気ままに書きなぐった不親切極まりない戯言の箱庭です。
記憶の浅瀬 伍
小十郎の背中には、一太刀の傷がある。
左頬の傷と同じく深い傷を残すそれは、
政宗にとっても忘れられない戦での傷だった。
そして始まりは波の音。
※双竜両思いになるまでの話。もだもだするシリアス(?)なので注意!続きは折りたたみ↓↓
(また…眠っちまったか)
水に沈んでからどうかしている。
身体の自由が利かないことも、こうして夢を見ることも。
普段ならすぐに回復するものなのだが。
(動揺してるのか?これは、俺がそれを望んでいるからか?)
嫌な記憶を思い出したいなどと願うなんてナンセンスな話だ。
政宗は一瞬で思い至った理由を打ち消した。
真っ暗闇。
何も見えない場所で波の音を頼りに歩いていたが、
やがて波の音は聞こえなくなり代わりにザッザッと足音が聞こえてきた。
これは政宗自身の足音だ。
歩いているのは乾いた大地。
土の上、…否。
(ここは、戦場だ)
屍が至るところに在って、墓標のように刀が大地に突き立ててある。
あちこちで刀のぶつかり合う音が続き、獣のような絶叫が木魂する。
右手には刀を持っている。
政宗は戦場に立っていた。
敵と思しき兵士たちが政宗の姿を捉え刀を振り上げて向かってくる。
身体が戦い方を、人の殺し方を覚えている。
心得ている。
染み付いている。
相手の呼吸を読みながらどう対するべきか刀を持つ手に力を込めた途端、
兵士の身体が上半身と下半身に分断される。
大地に崩れ落ちた兵士の向こうにいたのは小十郎で、頬の傷から流れる血は既に乾いていた。
(これ、は…)
名前を。
小十郎、と、呼びたかった。
もう動くな、戦うな、あとは自分がケリをつけるから。
だから。
そう言いたいのに声が出ない。
口は音もなく開閉するだけで。
(過去だからか、変えられないことだからか!!だったらどうして同じことを思い出させる?俺は何度小十郎が倒れるこの瞬間を…)
刀を持った小十郎がすぐ傍に駆け寄ってきて、政宗の両肩を強く掴む。
「しっかりなされよ!」
そう政宗を叱咤する。
「あなたは決して死んではならぬのです。傷を負い、大地をその血で濡らそうとも」
頬に返り血がかかる。
肩を強く掴んでいた手に既に力はなく、一瞬苦痛に表情を歪めた小十郎はそのまま大地に倒れた。
「…小十郎…?」
辛うじて出た声は掠れていて、深く斬りつけられた小十郎の背中の傷から目が離せなくなる。
息が止まりそうになる。
(駄目だ、逝くな小十郎っ!俺を一人にするな、ずっと死ぬまで傍に)
混乱は増すばかりでまともな思考が働かない。
(違う、大丈夫だ、小十郎は死なない。今でもずっと傍にいるじゃねぇか)
相反する心の声。
残党兵士が再び政宗に斬りつけてくるのを、身体が反射的に斬った。
またひとつひとつと屍が増えていく。
吐き気がするほどの血の匂い。
(死ぬな、俺より先に死ぬなんて…だってまだ、)
また一人一人と斬り殺して、小十郎の身体の下からじわりと血が染み出てくるのが目に焼きついて離れない。
「…好き、だ」
恐れているのは「死」ではなく、「愛する人の死」。
その存在が失われてしまうこと。
「…好き、なんだ」
政宗は夢だということも忘れて、過去に起こった現実を繰り返すように倒れた小十郎の傍に膝をついた。
………
あの後しばらく、眠った方が疲れると起きていた政宗だったが、
一通りの政務を駆け足で終えて小十郎が座敷に戻るとまた横になって眠っていた。
さっきまでとは違い静かに眠っているようだ。
本来ならその姿を見て安堵するのだが、小十郎の心の漣は増すばかり。
今もこうして何もできずに傍に控えていることしか出来ないのだ。
『…いざといなりゃ、来るさ。俺の背中はお前が持ってんだろ』
政宗の言葉を思い出す。
「お傍にいるなら、誰にもあなたを傷つけさせねぇのに」
それは主として?それとも。
小十郎は薄々気付いていた「それ」をまだ認めようとしない。
(それ、を認めてしまったら…あなたはそれでも今のまま傍にいてもいいと言ってくださるのか)
その場しのぎだと分かっていながらも、パンと頬を叩いて誤魔化した。
続。
左頬の傷と同じく深い傷を残すそれは、
政宗にとっても忘れられない戦での傷だった。
そして始まりは波の音。
※双竜両思いになるまでの話。もだもだするシリアス(?)なので注意!続きは折りたたみ↓↓
(また…眠っちまったか)
水に沈んでからどうかしている。
身体の自由が利かないことも、こうして夢を見ることも。
普段ならすぐに回復するものなのだが。
(動揺してるのか?これは、俺がそれを望んでいるからか?)
嫌な記憶を思い出したいなどと願うなんてナンセンスな話だ。
政宗は一瞬で思い至った理由を打ち消した。
真っ暗闇。
何も見えない場所で波の音を頼りに歩いていたが、
やがて波の音は聞こえなくなり代わりにザッザッと足音が聞こえてきた。
これは政宗自身の足音だ。
歩いているのは乾いた大地。
土の上、…否。
(ここは、戦場だ)
屍が至るところに在って、墓標のように刀が大地に突き立ててある。
あちこちで刀のぶつかり合う音が続き、獣のような絶叫が木魂する。
右手には刀を持っている。
政宗は戦場に立っていた。
敵と思しき兵士たちが政宗の姿を捉え刀を振り上げて向かってくる。
身体が戦い方を、人の殺し方を覚えている。
心得ている。
染み付いている。
相手の呼吸を読みながらどう対するべきか刀を持つ手に力を込めた途端、
兵士の身体が上半身と下半身に分断される。
大地に崩れ落ちた兵士の向こうにいたのは小十郎で、頬の傷から流れる血は既に乾いていた。
(これ、は…)
名前を。
小十郎、と、呼びたかった。
もう動くな、戦うな、あとは自分がケリをつけるから。
だから。
そう言いたいのに声が出ない。
口は音もなく開閉するだけで。
(過去だからか、変えられないことだからか!!だったらどうして同じことを思い出させる?俺は何度小十郎が倒れるこの瞬間を…)
刀を持った小十郎がすぐ傍に駆け寄ってきて、政宗の両肩を強く掴む。
「しっかりなされよ!」
そう政宗を叱咤する。
「あなたは決して死んではならぬのです。傷を負い、大地をその血で濡らそうとも」
頬に返り血がかかる。
肩を強く掴んでいた手に既に力はなく、一瞬苦痛に表情を歪めた小十郎はそのまま大地に倒れた。
「…小十郎…?」
辛うじて出た声は掠れていて、深く斬りつけられた小十郎の背中の傷から目が離せなくなる。
息が止まりそうになる。
(駄目だ、逝くな小十郎っ!俺を一人にするな、ずっと死ぬまで傍に)
混乱は増すばかりでまともな思考が働かない。
(違う、大丈夫だ、小十郎は死なない。今でもずっと傍にいるじゃねぇか)
相反する心の声。
残党兵士が再び政宗に斬りつけてくるのを、身体が反射的に斬った。
またひとつひとつと屍が増えていく。
吐き気がするほどの血の匂い。
(死ぬな、俺より先に死ぬなんて…だってまだ、)
また一人一人と斬り殺して、小十郎の身体の下からじわりと血が染み出てくるのが目に焼きついて離れない。
「…好き、だ」
恐れているのは「死」ではなく、「愛する人の死」。
その存在が失われてしまうこと。
「…好き、なんだ」
政宗は夢だということも忘れて、過去に起こった現実を繰り返すように倒れた小十郎の傍に膝をついた。
………
あの後しばらく、眠った方が疲れると起きていた政宗だったが、
一通りの政務を駆け足で終えて小十郎が座敷に戻るとまた横になって眠っていた。
さっきまでとは違い静かに眠っているようだ。
本来ならその姿を見て安堵するのだが、小十郎の心の漣は増すばかり。
今もこうして何もできずに傍に控えていることしか出来ないのだ。
『…いざといなりゃ、来るさ。俺の背中はお前が持ってんだろ』
政宗の言葉を思い出す。
「お傍にいるなら、誰にもあなたを傷つけさせねぇのに」
それは主として?それとも。
小十郎は薄々気付いていた「それ」をまだ認めようとしない。
(それ、を認めてしまったら…あなたはそれでも今のまま傍にいてもいいと言ってくださるのか)
その場しのぎだと分かっていながらも、パンと頬を叩いて誤魔化した。
続。
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プロフィール
HN:
瑞季ゆたか
年齢:
40
性別:
女性
誕生日:
1984/02/10
職業:
引きこもり人嫌いの営業AS見習い
趣味:
読書・音楽鑑賞・字書き
自己紹介:
◇2006.11.16開通◇
好きな音楽:Cocco、GRAPEVINE、スガシカオ、LUNKHEAD、アジカン、ORCA、シュノーケル、ELLEGARDEN、LINKIN PARK、いきものがかり、チャットモンチー、CORE OF SOUL、moumoon…などなど挙げたらキリがない。じん(自然の敵P)さんにドハマり中。もう中毒です。
好きな本:長野まゆみ、西尾維新、乙一、浅井ラボ、谷瑞恵、結城光流(敬称略)、NO.6、包帯クラブ、薬屋シリーズなどなど。コミック込みだと大変なことになります(笑)高尾滋さんには癒され、浅野いにおさんには創作意欲を上げてもらいつつ…あでも、緑川ゆきさんは特別!僕の青春です(笑)夏目友人帳、好評連載中!某戦国ゲームにハマり我が主と共に城攻めを細々とのんびり実行中(笑)サークル活動も嗜む程度。他ジャンルに寄り道も多く叱られながらも細々と更新しています…たぶん。
備考。寒さに激弱、和小物・蝶グッズとリサとガスパールモノ・スヌーピーモノと紅茶と飴と文房具…最近はリボンモノもこよなく愛する。一番困るのは大好物と嫌いな食べ物を聞かれること。
気まぐれ無理なくリハビリのように文章やレポを書き綴る日々…褒められて伸びるタイプです。
好きな音楽:Cocco、GRAPEVINE、スガシカオ、LUNKHEAD、アジカン、ORCA、シュノーケル、ELLEGARDEN、LINKIN PARK、いきものがかり、チャットモンチー、CORE OF SOUL、moumoon…などなど挙げたらキリがない。じん(自然の敵P)さんにドハマり中。もう中毒です。
好きな本:長野まゆみ、西尾維新、乙一、浅井ラボ、谷瑞恵、結城光流(敬称略)、NO.6、包帯クラブ、薬屋シリーズなどなど。コミック込みだと大変なことになります(笑)高尾滋さんには癒され、浅野いにおさんには創作意欲を上げてもらいつつ…あでも、緑川ゆきさんは特別!僕の青春です(笑)夏目友人帳、好評連載中!某戦国ゲームにハマり我が主と共に城攻めを細々とのんびり実行中(笑)サークル活動も嗜む程度。他ジャンルに寄り道も多く叱られながらも細々と更新しています…たぶん。
備考。寒さに激弱、和小物・蝶グッズとリサとガスパールモノ・スヌーピーモノと紅茶と飴と文房具…最近はリボンモノもこよなく愛する。一番困るのは大好物と嫌いな食べ物を聞かれること。
気まぐれ無理なくリハビリのように文章やレポを書き綴る日々…褒められて伸びるタイプです。