monocube
monoには秘めたイロがある。
見えないだけでそこに在る。
数え切れないそれは、やがて絡まり色彩(イロ)になる。
さぁ、箱をあけてごらん。
箱庭(ナカ)は昏(クラ)く底なしの闇色(モノクロ)。
深い闇に融けたらいいのに。
日々の戯言寄せ集め。
当サイトは作者の気まぐれにより、自由気ままに書きなぐった不親切極まりない戯言の箱庭です。
賑やかな人の声。
風にのって聞こえる笛太鼓の音。
今年も夏がやってくる。
※一足早く夏祭りの話。右目は夏祭りの時期になると、どこか上の空になる。続きは折りたたみ↓↓
「…今年はあの祭り野郎のお陰か賑わってるな」
書面とにらめっこをしていると、賑やかな喧騒が聞こえて。
手を止め外に視線を遣る。
兵士たちは祭り好きの力持ちときた。
ここが自分の見せ場だと言わんばかりに、祭りの準備に嬉々として出ていった。
自分も一緒に行くつもりだったが早々にやらなければならないこともあり、優秀な右目に捕まった。
「さっさと終わらせて祭りに行くか、」
そう右目を見やれば、何とも複雑な表情で苦笑した。
右目は夏祭りの時期になると、どこか上の空になる。
とは言っても仕事に何ら支障がでるわけではないのは流石と言うべきか。
だが、少なくとも自分からすれば分かりやすいほどに違和感を感じるのだ。
毎年祭りには一緒に行っているから、何かがあったならすぐに気付く。
だからこそ、原因が分からないのが気に掛かる。
自分には言えないことなのだろうか。
言っても仕方ないと思われている。→言う必要がない。
「政宗様、いかがなされました?」
傍から見ても分かるように青ざめたらしい。
コホンと咳をして気持ちを仕切りなおしだ。
目の前にある文書を睨んでまた手を動かし始めた。
奥州の夏祭りはここらでは一番大きく賑やかだ。
それに加え、今年はお祭り好きな風来坊がそれに参加していると兵士から聞いた。
通りで賑やかさに混じる華やかさが目に付くわけだ。
あの後早々に文書を片付けて、右目を引き連れて祭りに繰り出した。
屋台の連中に声を掛けながら、半歩後ろを歩く右目を見るとやはりどこか上の空で。
しきりに左手を気にしているのは気のせいだろうか。
「おう、政宗、こっちこっち」
風来坊に手を引かれる。
「小十郎、お前も、」
「いえ、」
右目は風来坊に、危険なことはさせるんじゃねぇぞ、と釘をさして背を見送っていた。
風来坊に付き合ってやぐらの近くに居たが、右目が気掛かりでその場を後にする。
「なんだなんだ、お前の方が右目離れできてないんじゃないか」
と楽しそうに笑う声を背中に受けながら。
人込みを縫って走りながら右目を探す。
やがて喧騒から少し離れた川のほとりに、その背中を見つけた。
「左手、どうしたんだ」
川のほとりでぼんやりとする背中に声を掛ければ、無意識だったのかはっとした様子で左手の拳を解く。
「いえ、大したことでは」
その横に並んで、足元の小さな石を拾う。
「お前、この時期になるといつもそうだな、上の空になる」
言って川に石を放れば、隣で苦笑する気配がした。
「…思い出すだけです、」
幼い頃、今と変わらず右目につれて来てもらったことがあった。
見るもの総てが珍しくて、面白そうで。
『梵天丸様、小十郎の手を離してはなりませんよ?』
人の波に攫われてしまうから、とそう約束して。
でもその手から意識が離れた途端にいつしか離れて、
きらびやかで面白いものは何も見えなくなっていた。
『…こ、じゅ…ろ…』
心細くて、自然と溢れる涙が頬を伝って。
かっこ悪くてもいい、怒られたっていい、だから。
『こじゅうろう、に、あいたい…』
そう呟いたら、人がひしめく中で泣き出した自分を小十郎が見つけてくれた。
自分よりも泣きそうなほどに表情を歪めて、力いっぱい抱きしめられた。
「Ah…そんなこともあったな、」
荒く頭を掻く。
そんな昔のこと、言われるまですっかり忘れていたというのが本音だ。
それにしても…
「そんな過ぎたこと、引きづり過ぎだ、お前は」
「政宗様とて、一度手痛い目に遭わされた相手は忘れますまい」
「An?そうだったか?」
「なんと、」
はぐらかすような返事に右目は困ったような表情をして。
そしてあの時離してしまった左手を握り締める。
(あの時の自分を…何も言わずに責めてるんだ…)
その手に自分のそれを重ねて。
「今、俺は此処にいる、お前の隣に」
握り締めた指を解いて、自分の指を絡める。
「責めるくらいなら、二度とこの手を離すな」
絡めた指をしっかりと絡め返されて。
「離すな、などと…そう簡単に離しませんよ?」
ふわりと表情を緩めた右目に笑って。
「覚悟なら、もうずっと昔に出来てんだ」
差し出してくれた手を、最初に握り返した時から。
(こいつと共に、生きていくんだってな)
今年も夏がやってくる。
※一足早く夏祭りの話。右目は夏祭りの時期になると、どこか上の空になる。続きは折りたたみ↓↓
「…今年はあの祭り野郎のお陰か賑わってるな」
書面とにらめっこをしていると、賑やかな喧騒が聞こえて。
手を止め外に視線を遣る。
兵士たちは祭り好きの力持ちときた。
ここが自分の見せ場だと言わんばかりに、祭りの準備に嬉々として出ていった。
自分も一緒に行くつもりだったが早々にやらなければならないこともあり、優秀な右目に捕まった。
「さっさと終わらせて祭りに行くか、」
そう右目を見やれば、何とも複雑な表情で苦笑した。
右目は夏祭りの時期になると、どこか上の空になる。
とは言っても仕事に何ら支障がでるわけではないのは流石と言うべきか。
だが、少なくとも自分からすれば分かりやすいほどに違和感を感じるのだ。
毎年祭りには一緒に行っているから、何かがあったならすぐに気付く。
だからこそ、原因が分からないのが気に掛かる。
自分には言えないことなのだろうか。
言っても仕方ないと思われている。→言う必要がない。
「政宗様、いかがなされました?」
傍から見ても分かるように青ざめたらしい。
コホンと咳をして気持ちを仕切りなおしだ。
目の前にある文書を睨んでまた手を動かし始めた。
奥州の夏祭りはここらでは一番大きく賑やかだ。
それに加え、今年はお祭り好きな風来坊がそれに参加していると兵士から聞いた。
通りで賑やかさに混じる華やかさが目に付くわけだ。
あの後早々に文書を片付けて、右目を引き連れて祭りに繰り出した。
屋台の連中に声を掛けながら、半歩後ろを歩く右目を見るとやはりどこか上の空で。
しきりに左手を気にしているのは気のせいだろうか。
「おう、政宗、こっちこっち」
風来坊に手を引かれる。
「小十郎、お前も、」
「いえ、」
右目は風来坊に、危険なことはさせるんじゃねぇぞ、と釘をさして背を見送っていた。
風来坊に付き合ってやぐらの近くに居たが、右目が気掛かりでその場を後にする。
「なんだなんだ、お前の方が右目離れできてないんじゃないか」
と楽しそうに笑う声を背中に受けながら。
人込みを縫って走りながら右目を探す。
やがて喧騒から少し離れた川のほとりに、その背中を見つけた。
「左手、どうしたんだ」
川のほとりでぼんやりとする背中に声を掛ければ、無意識だったのかはっとした様子で左手の拳を解く。
「いえ、大したことでは」
その横に並んで、足元の小さな石を拾う。
「お前、この時期になるといつもそうだな、上の空になる」
言って川に石を放れば、隣で苦笑する気配がした。
「…思い出すだけです、」
幼い頃、今と変わらず右目につれて来てもらったことがあった。
見るもの総てが珍しくて、面白そうで。
『梵天丸様、小十郎の手を離してはなりませんよ?』
人の波に攫われてしまうから、とそう約束して。
でもその手から意識が離れた途端にいつしか離れて、
きらびやかで面白いものは何も見えなくなっていた。
『…こ、じゅ…ろ…』
心細くて、自然と溢れる涙が頬を伝って。
かっこ悪くてもいい、怒られたっていい、だから。
『こじゅうろう、に、あいたい…』
そう呟いたら、人がひしめく中で泣き出した自分を小十郎が見つけてくれた。
自分よりも泣きそうなほどに表情を歪めて、力いっぱい抱きしめられた。
「Ah…そんなこともあったな、」
荒く頭を掻く。
そんな昔のこと、言われるまですっかり忘れていたというのが本音だ。
それにしても…
「そんな過ぎたこと、引きづり過ぎだ、お前は」
「政宗様とて、一度手痛い目に遭わされた相手は忘れますまい」
「An?そうだったか?」
「なんと、」
はぐらかすような返事に右目は困ったような表情をして。
そしてあの時離してしまった左手を握り締める。
(あの時の自分を…何も言わずに責めてるんだ…)
その手に自分のそれを重ねて。
「今、俺は此処にいる、お前の隣に」
握り締めた指を解いて、自分の指を絡める。
「責めるくらいなら、二度とこの手を離すな」
絡めた指をしっかりと絡め返されて。
「離すな、などと…そう簡単に離しませんよ?」
ふわりと表情を緩めた右目に笑って。
「覚悟なら、もうずっと昔に出来てんだ」
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プロフィール
HN:
瑞季ゆたか
年齢:
40
性別:
女性
誕生日:
1984/02/10
職業:
引きこもり人嫌いの営業AS見習い
趣味:
読書・音楽鑑賞・字書き
自己紹介:
◇2006.11.16開通◇
好きな音楽:Cocco、GRAPEVINE、スガシカオ、LUNKHEAD、アジカン、ORCA、シュノーケル、ELLEGARDEN、LINKIN PARK、いきものがかり、チャットモンチー、CORE OF SOUL、moumoon…などなど挙げたらキリがない。じん(自然の敵P)さんにドハマり中。もう中毒です。
好きな本:長野まゆみ、西尾維新、乙一、浅井ラボ、谷瑞恵、結城光流(敬称略)、NO.6、包帯クラブ、薬屋シリーズなどなど。コミック込みだと大変なことになります(笑)高尾滋さんには癒され、浅野いにおさんには創作意欲を上げてもらいつつ…あでも、緑川ゆきさんは特別!僕の青春です(笑)夏目友人帳、好評連載中!某戦国ゲームにハマり我が主と共に城攻めを細々とのんびり実行中(笑)サークル活動も嗜む程度。他ジャンルに寄り道も多く叱られながらも細々と更新しています…たぶん。
備考。寒さに激弱、和小物・蝶グッズとリサとガスパールモノ・スヌーピーモノと紅茶と飴と文房具…最近はリボンモノもこよなく愛する。一番困るのは大好物と嫌いな食べ物を聞かれること。
気まぐれ無理なくリハビリのように文章やレポを書き綴る日々…褒められて伸びるタイプです。
好きな音楽:Cocco、GRAPEVINE、スガシカオ、LUNKHEAD、アジカン、ORCA、シュノーケル、ELLEGARDEN、LINKIN PARK、いきものがかり、チャットモンチー、CORE OF SOUL、moumoon…などなど挙げたらキリがない。じん(自然の敵P)さんにドハマり中。もう中毒です。
好きな本:長野まゆみ、西尾維新、乙一、浅井ラボ、谷瑞恵、結城光流(敬称略)、NO.6、包帯クラブ、薬屋シリーズなどなど。コミック込みだと大変なことになります(笑)高尾滋さんには癒され、浅野いにおさんには創作意欲を上げてもらいつつ…あでも、緑川ゆきさんは特別!僕の青春です(笑)夏目友人帳、好評連載中!某戦国ゲームにハマり我が主と共に城攻めを細々とのんびり実行中(笑)サークル活動も嗜む程度。他ジャンルに寄り道も多く叱られながらも細々と更新しています…たぶん。
備考。寒さに激弱、和小物・蝶グッズとリサとガスパールモノ・スヌーピーモノと紅茶と飴と文房具…最近はリボンモノもこよなく愛する。一番困るのは大好物と嫌いな食べ物を聞かれること。
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