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間に合わなくても、一緒にいたい。【後半戦】

ビール片手に(※本来はギリギリ未成年なので×)、部屋の窓から外を眺める。
今日は特別な日で、それを分かってくれていると思っていた。

(…小十郎のバカヤロー…)

楽しいのに酔いは全然いい気分にはしてくれない。
そして刻々と時間は過ぎていく。




※現代版双竜で、2010年政宗様お誕生日おめでとう話後編(今更)。続きは折りたたみ↓↓

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ポケットに押し込んだままの携帯は、他の友人たちからのおめでとうメールで鳴ったものの、一番肝心な人物からの連絡は一向にない。
何だ、ちょっと腹立ってきたぞ。
「政宗ー、みたらし最後の一本だぞー」
後ろから掛けられた慶次の声に。
「幸村にでもくれてやれ」
「真か!!」
そう答えれば、一瞬躊躇ったものの、幸村の胃に団子は消えた。
幸村が団子をこよなく愛していることは、もはや周知の事実だった。
「そうだ、みんなは好きなものを先に食べる派?後に残す派?」
突然慶次が言い出した質問。
何が、そうだ、なのかはよく分からない。
「俺ァ、先だな。後に残ってる保証はねぇだろ」
「某も、好きなものはたくさん食べたい!」
元親はチューハイを飲みながら、幸村は団子を食べながら答える。
「政宗は?」
「…俺も、先、だな」
一番最初に好きなもの…好きな人に祝ってもらいたいとか何かして欲しい、と思う。
だって一番最初ってなんか特別っぽいじゃないか。
「あれぇ?後にするってのは俺だけかよ」
慶次が足を投げ出して苦笑。
「そりゃ早く食べたいとは思うけど、最後に好きなもので終わりたいってのがさ」
「それならずっと好きなものを食べれば」
「幸村ァ、それじゃあ最初にした質問と違うだろ」
幸村の言葉に元親が笑う。
「あいつは…」
「ん?」
「いや、何でもねぇ」

(小十郎は、多分好きなものは後にするんだろうな)

慶次と同じなんだと思う。
でも、それが自分が好きなものだったりすると何も言わずに半分くれたりして。
だから最初と最後両方とも自分の好きなものだ。

(そしたら、幸村と同じで慶次の言ったこととは違っちまうけど)

窓枠に腕を置いて、そこに顔をうずめる。
駄目だ。
楽しいのに、ずっと同じことを考えている。
ぐるぐると回って。
「どうした?政宗」
元親の声に。
「…酔ったかも」
そう嘘を吐いて。

(あ、でも少し眠いのは本当だ)

「気持ち悪いか?」
近付いてきた元親がくしゃりと頭を撫でる。
「平気、悪い気分じゃねぇよ、こういうのはさ」
振り返って三人を見ると、わざとらしい気持ち悪い笑み。
それがおかしくてつられるように笑った。
「チカ、ベッド借りる」
少しだけ眠ってもいいだろうか。
悩んでいると、元親が察したのか「日付が変わる前に起こしてやるよ」と言ってくれた。
それに軽く頷いてベッドに倒れる。

(あーあ、おめでとうって本人の口から聞きたかったな)

………

携帯を閉じ、散らばった書類を片付け朝イチからやることを自分にしか分からない汚い字で端書く。
それからカバンと上着を引っ掛けて急ぎ足で会社を出た。
「確か、」
一度だけしか言わない、と釘をさしたその相手が説明した通りに進んでいく。
いざ従って歩いてみると、その説明は実に的確で分かりやすかった。
そして辿り着いた先。
そこには眼帯に銀髪の男。

「―――アンタが小十郎さんかい?」

雰囲気まで政宗が話す通りだ。
肯定するように頷けば、上から下まで見られた。
そんな態度に眉間にしわを寄せると、男――元親は悪い悪いと謝ってきた。
「政宗から聞いた通り、真面目を絵に描いたような男前だな」
その笑みが清々しくて嫌味は一切感じられなかった。
「政宗は、楽しんでいたか?」
当然だ、と即答してから元親は政宗たちの居る部屋を見上げた。
「ま、考えてたのはアンタのことだろうけどな」
ガシガシと頭を掻いて振り返る元親はふっと表情を緩めた。

「電話でアンタの言葉を聞いて正直安心したんだ、もし酷い奴なら門前で追い返してやろうと思ってた」

………

小さい頃の夢を見た。
片目を気味悪がって誰も近づいてこない。
いつも他の子供が遊んでいる姿をただ見ているだけ。
そんな自分の手を引いたのは年上の強面。
それが。

「…こ、じゅ…」

ふわりと風が髪を揺らす。
ゆっくりと目を開けると、上から覗き込む小十郎の顔があった。
「具合はどうだ?」
うちわで仰ぐ手をそのままに問うてくる小十郎に、「大丈…夫、」と答えれば小十郎の表情が少しだけゆるんだ気がした。
「ここ、」
確か誕生日パーティで元親の家にいたはずだ。
だが周りをみるとよく知った景色。
自分の家だ。
「自転車は元親が運んでくれたから、ちゃんとお礼言っておけよ」
そう笑う小十郎に。

(…もしかして、迎えに、来てくれた…?)

不覚にもちょっとキュンとしてしまった。
いかんいかん。
拗ねるなんてガキっぽいけど、あんな素っ気ないオメデトウもない誕生日なんて怒っても文句は言われまい。
ただ、現状の膝枕なんてサービスについてどう扱うべきか。
考えながら百面相でもしていたのだろう。
小十郎がまた笑いながら目を細めて。


「誕生日、おめでとう」


そう、一言。
誕生日という特別な日に一番欲しかったもの。
惚けていたら、ピピッと音がして。
身体を起こしたら、テレビの横のデジタル時計は0:00。
つまりは。
「…誕生日の一番最後…」
不意に慶次が言ったあの質問が頭を過った。
「政宗?」
くるりと振り返って小十郎を見る。
昨日の悩んで落ち込んでいた時間を返せとか言ってやりたくもなったが、やめた。

「―――お前って、ホントずるいよなぁ」

そういって笑う。

(だって、ちゃんと欲しいものくれんだから)

そうしたら抱き締められて、小十郎の胸に顔をうずめる。
悔しいけどここはすごく落ち着くのだ。
やっぱり一日の終わりを好きな人いるより、一日の最初にいられたらと思う。
けれど。


(誕生日の一番最後でも、新しく始まる一年の最初の日って思えば…まぁ、悪かねぇか)






※新暦と旧暦の間にアップできたよ、今更ながら政宗様お誕生日おめです。
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プロフィール

HN:
瑞季ゆたか
年齢:
40
性別:
女性
誕生日:
1984/02/10
職業:
引きこもり人嫌いの営業AS見習い
趣味:
読書・音楽鑑賞・字書き
自己紹介:
◇2006.11.16開通◇

好きな音楽:Cocco、GRAPEVINE、スガシカオ、LUNKHEAD、アジカン、ORCA、シュノーケル、ELLEGARDEN、LINKIN PARK、いきものがかり、チャットモンチー、CORE OF SOUL、moumoon…などなど挙げたらキリがない。じん(自然の敵P)さんにドハマり中。もう中毒です。
好きな本:長野まゆみ、西尾維新、乙一、浅井ラボ、谷瑞恵、結城光流(敬称略)、NO.6、包帯クラブ、薬屋シリーズなどなど。コミック込みだと大変なことになります(笑)高尾滋さんには癒され、浅野いにおさんには創作意欲を上げてもらいつつ…あでも、緑川ゆきさんは特別!僕の青春です(笑)夏目友人帳、好評連載中!某戦国ゲームにハマり我が主と共に城攻めを細々とのんびり実行中(笑)サークル活動も嗜む程度。他ジャンルに寄り道も多く叱られながらも細々と更新しています…たぶん。

備考。寒さに激弱、和小物・蝶グッズとリサとガスパールモノ・スヌーピーモノと紅茶と飴と文房具…最近はリボンモノもこよなく愛する。一番困るのは大好物と嫌いな食べ物を聞かれること。

気まぐれ無理なくリハビリのように文章やレポを書き綴る日々…褒められて伸びるタイプです。

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