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#09 「本当の主役」

「突っ立ってないで仕事しろよ」
呆然と見ている執行人に視線を遣ることなく奏は言った。
「はっ、はいっ…」
執行人が我に返り、種へと歩み寄る。
「やっ…」
篤尋と馨至に緊張が走る。
「―――早く来やがれ、」
馨至が毒吐いたのと同時。奏が種と一本の直線上に並んだ時、奏は「それ」に気づいた。奏は咄嗟に近くの執行人を捕まえて盾にした。執行人は驚愕に目を見開いて絶命。血潮が種の爪先数センチ先まで舞った。種はきつく目を閉じた。
「次から次へと、」
奏が苛立った声を上げる。だが意識していなかったのは完全に自分の過失。それを知ってるが故の苛立ち。
「おっせぇんだよ、来んのが」
馨至の言葉を脩二は無視した。奏はすぐに狙いを脩二に切り替える。脩二と奏の銃が交錯する。実力はほぼ互角。それでも脩二の方が上手(ウワテ)に感じるのは篤尋が贔屓目だからだろうか。その隙をついて馨至が種との距離を詰める。上で見ていた真皓が僅かに動く。
「…止めとき、温梓は気づいとる」
夾夏は冷静に真皓を止めた。

チリン…

鈴を転がしたような高い音色が聴こえた。
温梓はその音の先に向けて銃を放った。咄嗟に馨至が飛び退く。
「…アンタ、視えるんだな」

チリン…

「その音、綺麗な音どすなァ」
ゆっくりと紡がれた声は柔らかく心地良い声だった。
「…音?」
「それ、何といいますのん?」
馨至は銃を指しているのだと気づいた。
「…涼風だ、」
答えるなりすぐに種に近づいた馨至は銃で鎖を断ち切りその手を引いた。
「行かすかっ」
「どこ見てんだよ、ゼロイチ」
脩二は撃たずに銃身で奏を殴った。かわしきれずまともに食らうが立て直しは早い。
「百万回死ネ」
奏の連弾。奏の愛銃「quick shot」本来の姿に、脩二は掠りながら再び距離を置く。その間に馨至は種を連れて中央から降りた。アスカが交戦に紛れて二人にナイフを放つが、篤尋の銃が進路をずらす。足を止めることなく「天上」の観覧席の途切れたところへ走る二人。
「あ、あのっ…」
「喋んな、舌噛むぞ」
「でもこのままじゃ落ち…」
「下に行くんなら一番手っ取り早いな」
馨至は事も無げに答えた。
「うそっ!?」
馨至は腕を回してしっかりと種を引き寄せる。
「終わったぞ」
馨至は叫んで、そのまま「天上」の縁を蹴った。

チリン…

「…えぇ名前どすなァ」

温梓がゆっくりと銃を構えた。種が何かを感じて振り返る。見えたのは銃口とそこから立ち上る白煙。だがすぐにそれも見えなくなった。
「…僕らは、これで」
アスカの太刀を銃身で受け止め、優雅に一言。ナイフを弾いて、牽制の一撃。アスカは足を止めた。
「脩二、」
視界に脩二を捉えてから篤尋も二人を追うように縁を蹴った。
「…またね、ゼロイチ」
脩二は感情の薄い表情で篤尋を追う。奏はすぐに脩二の背中に向けて銃を放つ。脩二はそれを銃身で逸らし、奏の視界から消えた。

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プロフィール

HN:
瑞季ゆたか
年齢:
40
性別:
女性
誕生日:
1984/02/10
職業:
引きこもり人嫌いの営業AS見習い
趣味:
読書・音楽鑑賞・字書き
自己紹介:
◇2006.11.16開通◇

好きな音楽:Cocco、GRAPEVINE、スガシカオ、LUNKHEAD、アジカン、ORCA、シュノーケル、ELLEGARDEN、LINKIN PARK、いきものがかり、チャットモンチー、CORE OF SOUL、moumoon…などなど挙げたらキリがない。じん(自然の敵P)さんにドハマり中。もう中毒です。
好きな本:長野まゆみ、西尾維新、乙一、浅井ラボ、谷瑞恵、結城光流(敬称略)、NO.6、包帯クラブ、薬屋シリーズなどなど。コミック込みだと大変なことになります(笑)高尾滋さんには癒され、浅野いにおさんには創作意欲を上げてもらいつつ…あでも、緑川ゆきさんは特別!僕の青春です(笑)夏目友人帳、好評連載中!某戦国ゲームにハマり我が主と共に城攻めを細々とのんびり実行中(笑)サークル活動も嗜む程度。他ジャンルに寄り道も多く叱られながらも細々と更新しています…たぶん。

備考。寒さに激弱、和小物・蝶グッズとリサとガスパールモノ・スヌーピーモノと紅茶と飴と文房具…最近はリボンモノもこよなく愛する。一番困るのは大好物と嫌いな食べ物を聞かれること。

気まぐれ無理なくリハビリのように文章やレポを書き綴る日々…褒められて伸びるタイプです。

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