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Ⅳ.自己報告

キミさぁ、『生きる』ってこと考えたりする?
人が殺されるのを身近に感じたことある?
 
だったら、一度“そこ”へ堕ちてみるといいよ。
解からないなら聞いてごらん、“そこ”が何のことか。
あぁ、違う違う。
“其処”じゃなくて…“底”だよ。
 
…ようこそ、“ボーダーライン”へ。
 
―――――now.(現在)
 
それは本トに他人事だった。
だって、そうだろ?俺には何の影響もないし、被害もない。
そうしたら他人事同然でしょ。…ま、実際他人事だったんだけどね。
俺が“底”を知ったのは、本当に偶然。どっちかっていうと、世間様の出来事には疎かったし、興味も人の半分くらいしかなかったんじゃないかと思うしね。比べる相手にも因るけど。ただ社交辞令代わりというか、とりあえず人の印象に残らない様に当たり障りのない程度は認知しておくようにはしたな。女の子達って難しいことより、誰がカッコイイとか、今何が流行ってるとかの方が重要みたいだし。話し合わないと何もできないしね。
…っと、話が逸れたな。こんな話してると、もう高校生くらいに感じるかもしれないけど、実際に知ったのは九歳の時。って言ったって、その時は聞き流してたようなもんだったから…中学生くらいかな。躍起になって、過去の新聞やらを読んだよ。いやぁ、びっくりびっくり。その時の俺には、“底”はまるで楽園に思えたね。称えられ、畏敬の的になったその場所。でもその中身はぐちゃぐちゃだ。今すぐに跳び込む手段があるなら迷わず何でもできた。

その時から、俺はもうこの世界に『絶望』してたよ。

絶望ってのは、微妙に違うかな。何て言うか、「適合しない」って感じ?帰る場所も住む場所も寝る場所も全部在って、自分はそこに居るし生活もしてる。でも、俺の居場所はそこじゃないって。要は心の持ちようなんだろうけど。だからうってつけの場所を見つけたと思ったんだな。でも、俺はそこで踏みとどまった。何でだと思う?戦う為の武器が必要だと思ったのさ。意志の力で具現化できるってことは予備知識の中に入ってはいたんだけどね。それから普通に、適度に穏便に高校に入った。またそれが有名な私立の進学校。別にどこでも良かったし、家庭の経済状況もどちらかと言うと裕福な方だったと思うし。
あ、家はね…悲惨だったよ。一言で表わそうとしなくても一言で済む。「没干渉」。両親は世界中を飛び回って多忙の日々……とかだったら、いっそカッコ良かったんだけど。何てことのない普通の家庭。実は意外と俺は綺麗好きでさ、部屋の掃除とか全然苦じゃないんだよ。自活もそんな家庭だから自然に慣れてったし、料理は意外と面白くてハマったね。そもそも俺の部屋に親は近付かなかったし、下で遭っても親が何かしてれば俺が出てく、俺が何かしてれば親が出てくって感じ。俺が有名な私立の進学校に行った時の費用は出してもらってたから、それは知ってるだろうけど、飯も一緒した記憶ないし、日々俺が何やってたかも興味なかったみたいだし。良く言えば、酷すぎる放任主義。あ、その言い方もあんま良くないんだっけ?だから、今俺が居なくなってることにすら気づいてないんじゃない?生きてるか死んでるかもどうでもよさそうだったし。ま、今更気にされたって気持ち悪いだけなんだけどさ。
って、また話し逸れてるよ。えと、どこまで話したっけ。あ、そうそう。高校に入って進学校なのにも関わらず遊びまくってたその時だね、俺は気づいたんだ。

『行くなら今しかない』って。

運命なんて信じてないし、信じる予定もないけど、それはきっと運命を感じたような感覚に近かったのかも。高校入ってから意外とすぐだったし…十六歳かな。ものの見事に俺は“底”に文字通りやって来てしまったってわけだ。
“底”に着いて見廻した時、俺はぞっとしたよ。俺なんかが思っていた以上に、“底”の中はぐちゃぐちゃだったんだからな。何がぐちゃぐちゃだとかそういうんじゃなくて、“底”そのものがだよ。同じ世界でこうも違うのかって思ったね。それからすぐ“此処”は他とは違うんだって割り切ったけど。
俺がアウトラインを通じて出て来た場所はrAin VeIN。悲惨だったよ、其処は其処で。目の前に、一人の女が死んでたんだから。人が死ぬことを非現実だとは流石に思わなかったけど、リアルだったな、やっぱり。そしたら、次々カオスが襲って来るだろ。だから自分の身を守る為に、殺すしかないってワケ。何で具現化したのが鎌だったのか実は憶えてないんだけどさ。

ただ、『退屈しない』様に願ってた。

俺が“此処”に『失望しない』ことを願ってた。

だから、『死ぬ』わけにはいかなかった。

俺は自殺志願者じゃないし。それだけで、十分だったよ。だから、カオスを斬る事なんて簡単だったし、自分を守ることに苦はなかった。でも、生活水準ってのも保障されてないわけで…違う意味での身の危険は何度も感じた。それでも、俺はrAin VeINを「出なかった」。…というよりは「出れなかった」の方が正しいな。この“底”で“外”からやって来た自分に居場所があるなんて、そんな虫のいいことを思ってたわけじゃないんだ。それは本ト。だから、俺にとって唯一「許された」場所。それがrAin VeINだと思ってた。まぁ、よーく考えたら馬鹿な話なんだけどね(笑)それにしても、俺あんなとこで良く耐えられたもんだよな。発狂したっておかしくないでしょ。目の前に在るのは女の死体と、カオスの肉塊だけなんだからさ。そう考えると、俺の神経の図太さって言うか図々しさは半端ないよな、本ト。もう少し神経細くできてても良かったんじゃないかと思うよ。
そんで俺は、その辺の野良犬より屈辱的な扱いで、史上最悪の男に、合意のもと拾われたってワケ。あいつを言葉で説明できないことが残念だね。全部とは言わないが、不本意だけど凡そ六割くらいはその男に仕込まれたといってもいいな。お蔭様で色んな部分に麻痺しちまってますがね。
それからは色々細かく思い出すのも嫌なくらいに時が過ぎて、あとは呑気に駄弁って日々ボーダーラインで過ごしてる。それがまさに今の話。…と、まぁこんなもんかな。

…さて、俺はボーダーラインに戻りますかね。珈琲が飲みたいんで。

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ようやくお出ましか。

長かったような短かったような…(笑)

ようやく本来の主人公・神津(こうつ)の登場でっす!!
  • 水城夕楼
  • 2007/07/04(Wed)00:52:20
  • 編集

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プロフィール

HN:
瑞季ゆたか
年齢:
40
性別:
女性
誕生日:
1984/02/10
職業:
引きこもり人嫌いの営業AS見習い
趣味:
読書・音楽鑑賞・字書き
自己紹介:
◇2006.11.16開通◇

好きな音楽:Cocco、GRAPEVINE、スガシカオ、LUNKHEAD、アジカン、ORCA、シュノーケル、ELLEGARDEN、LINKIN PARK、いきものがかり、チャットモンチー、CORE OF SOUL、moumoon…などなど挙げたらキリがない。じん(自然の敵P)さんにドハマり中。もう中毒です。
好きな本:長野まゆみ、西尾維新、乙一、浅井ラボ、谷瑞恵、結城光流(敬称略)、NO.6、包帯クラブ、薬屋シリーズなどなど。コミック込みだと大変なことになります(笑)高尾滋さんには癒され、浅野いにおさんには創作意欲を上げてもらいつつ…あでも、緑川ゆきさんは特別!僕の青春です(笑)夏目友人帳、好評連載中!某戦国ゲームにハマり我が主と共に城攻めを細々とのんびり実行中(笑)サークル活動も嗜む程度。他ジャンルに寄り道も多く叱られながらも細々と更新しています…たぶん。

備考。寒さに激弱、和小物・蝶グッズとリサとガスパールモノ・スヌーピーモノと紅茶と飴と文房具…最近はリボンモノもこよなく愛する。一番困るのは大好物と嫌いな食べ物を聞かれること。

気まぐれ無理なくリハビリのように文章やレポを書き綴る日々…褒められて伸びるタイプです。

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