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胸を焦がす想いも、

触れた口唇も、


自分という存在のすべてを君に捧ぐ。







※永月さんよりリクエスト。蒼は「右目」に、右目は「心臓」に。
こっ恥ずかしいので折りたたみ↓↓

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その腕に抱き締められた時、

一瞬でも頭を過ったことに少し、後悔した。

馬に揺られながら思っていたこと。
血の滲んだ傷口に触れると、少しの振動で鈍痛がした。
「…っ…」
小さく呻くとしっかりと身体を支える腕に力がこもった。
「痛みますか?」
案じる声に苦笑すれば、
「やはり少し休まれてからの方が、」
と右目は眉間に皺を寄せる。
「奥州以外に休める場所なんてねぇ」
と答えれば、心配性の右目は押し黙った。
繰り返す鈍痛に目を閉じる。
「…政宗様、もうしばしご辛抱を」
右目に寄り掛りながらずっと考えていることを反芻する。

「―――痛みってのは、なかなか慣れねぇもんだな」

幼い頃から慣れていたことなのに。
眼帯に隠れた右目のこともそうだが、
幼少期にいい思い出はほとんどない。
それを不幸だと思ったこともあったが、今はもうどうでもいい。
本当に思い出したくないことには、
きつくきつく蓋をすることにしたから。
だがあの男の執念にまるで惹かれるかのように、
蓋を閉めたものが溢れた。

闇が、

(怖い)

過去の記憶が、

(思い出したくない)

傷の痛みと相まって蘇る。
内側から苛む。
「…はっ、」
呑まれそうになって目を開けると心配そうに覗き込む右目。
虚ろな瞳がしっかりと像を結ぶのを確認した右目は、
汗で額に張りつく髪を除け、頬に優しく触れて。
「熱が上がっているな、」
思案する様子に、気にせず奥州に向かうよう告げまた目を閉じる。
今度はしっかりと右目の服を掴んで、
悪い夢を見ぬよう祈りながら。

「―――魔王に、残った左目も抉ってやろうかと言われた」

ぽつりと呟くように吐き出す。
「悪いものを見ずに済むなら…、それでもいいと、思った」

『やってみやがれ、俺の眼は牙を剥いて噛み付くぜ』

あの時、苦しみと共にあったのは恐怖ではなく、
見たくないものを見なくて済むかもしれない安堵だった。
「だが、今は…この目が無事で良かったと、思う」
意識が少しずつ輪郭を失っていく。
「政宗様、」
傷の痛みに耳鳴りがする。

「もしこの目がなかったら…お前が見えなくなっちまう」

紅に支えられなければまともに立てない身体を、
駆け寄ってきた右目が心底安堵したように笑って抱き締めてくれた時、
一瞬でもこの目を失ってもいいと思ったことをを後悔した。
自分の負った傷の分だけ、
この右目は心を痛めるのだということを思い出したから。

「政宗様、今はお休みください、この小十郎がお傍に居りますから」

優しい声が聞こえる。
右目の温もりを感じながらゆっくりと意識を手放した。








※アニバサ最終回の後的な。負傷の痛みを抱えて戦う蒼は大層お色気だった。

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それは少し淋しいような、

複雑な心境で。

それがバレるのは癪だったけど、困ったように笑うしかなかった。
崩壊した城と、互いに支えあいながら戻ってきた蒼と紅。
隣に居たはずの右目はその姿を認めるなり駆け寄っていった。

(…なんか、出遅れたって感じだ)

同じように振舞うことも出来ず、腰に手を当てたまま紅が歩いてくるのを待っていた。

「佐助っ!」

蒼を右目に託し駆け寄ってくる紅。
「お疲れさん、旦那」
声をかけると満足そうな笑みが返ってきた。
「佐助、お前もご苦労であったな」
「別に?お仕事ですから」
労いの言葉におどけて応え、そして気がつく。
「あーあ、旦那ハチマキなくしちゃって…」
いつもしているはずのそれがない。
あれがないと気合が入らないなんて以前になくしたときは大騒ぎしていたのに。
「いや…うむ、あれも本望だろう」
清々しい表情に、何故か急に大人びてしまったような気がして、
紅の前髪をくしゃりと掻いた。
「ん?どうした佐助」
そして懐から赤いハチマキを取り出す。
「旦那、動かないで」
その言葉に素直に従う紅の額に手のハチマキをあて、後ろでしっかりと結う。
今だったら、腕の中に収まってしまうくらいなのに。
「スペア、もうないから大事にしてくれないと」
複雑な心境を誤魔化すように笑って言えば、
「そうだな、大事にする」
と素直に笑い返す。

(…愛しい…)

まだ、離したくない。
「…さて、大将に報告しないと」
虎の名を出せば、大人びた表情から途端に幼い表情になって。

(…大好きだもんねぇ、大将)

内心、大将に妬いたらおしまいだと肝に銘じながら、紅を甲斐に戻るよう促して。
その背に。

「真田幸村っ…」

竜の、声。

「…次に会ったときは…覚悟しておけよ」

竜は右目に支えられながらも怪我を感じさせない表情で言う。

「…望むところでござるっ」

それに答えるように紅も声を張り上げて。
ついと竜の右目に視線を向けたら、
右目は少し呆れたように笑うから軽く肩を竦めて見せた。

「さぁ、帰るぞ、佐助」

隣に紅がいる。
空は夜明けを告げるように白んで。

「はいよ」

二人並んで、家路につくのだ。











※アニバサ最終回すごく良かった的な。成長した紅に忍はちょっと淋しく感じていたりいなかったり。

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堕ちるように緩やかに、

眠るように口付けを。

「ねぇ、旦那」
何で生き抜くってことはこんなにも難しいことなんだろうね。
「俺は敵を殺せるよ、」
だってそれが俺の仕事だから。
「旦那を守るよ、」
それで命を落とすことになっても後悔しない。
「けどさ、…好きでやったことなんてひとつもないんだ」
好きなことだけじゃない。
個人の何らかの感情でやったことなんて、たった一度しかない。

この、紅の傍にいること。

それが、自分の意思で決めた、人生におけるたった一つの、感情でやったことだった。

「…て、…め…」
「恨まないでくれよ、独眼竜」
うつ伏せで焔に引けをとらないほど鮮やかな鮮血を、
畳の上にぶちまけながら竜は睨む。

(恨まないでくれ、だって何ありえないこと言ってんだろ)

ズっ、と音を立てて足に伸ばされる手を一歩下がってかわす。
竜の眼は、一度だって自分から逸らされることはない。
「俺様だって、好きでやってるんじゃないんだよ」
忍に生まれ、忍として当然のように成長し、忍以外の何物でもない大人になって。
それでも天下なんて馬鹿馬鹿しいと思うし、血なまぐさい戦場は好きじゃない。
そもそも、人を殺すことだって。
「…でも、仕事は、仕事、だからさ」
諦めてよ。
そう肩を竦めたら、足元の独眼竜は口許を歪ませて嘲笑った。
「…HA、」
死に急速に近づいていく中で、それは勝ち誇った様な表情で。
見下ろす自分の方が追い詰められているような錯覚。
「…死ぬこと、は、怖か、ね…だろ」
そうだよ。
「怖くない」
人が死ぬのは自然現象だし、それがこの戦国の世ならば尚のこと。
見下ろした竜の姿は、明日のわが身かもしれない。

「…死なれ、…のが、いや、なんだ…ろ」

その質問には答えなかった。
竜の眼帯の紐が緩んで落ちた。
血塗れた髪の奥にある、見えるはずのない瞳。
それに沈黙の意味を見透かされているような気がした。
気がした、だけ。

「…てめ…は、きょ…も…」

独眼竜は、血を吐いたその口で。

最後に一言、罵った。

ちりちりと響く音が大きくなる。
はっと我に返ると、既に予想より早く建物に火が回っていた。
このままでは自分が脱出することも危うくなる。
踵を返して数歩歩き、息絶えた竜を見る。
それは焔に包まれるというより、焔を纏っていると言った方が正しい光景。
焔は紅によく似た、鮮烈な緋色。

「独眼竜、…アンタには、その緋色は似合わないな」

そう誰に言うでもなく呟いて屋敷を出る。
大気に溶け込み始めた煙が、まるでで盂蘭盆の送り火のように立ち上っていた。


音も立てず重さも感じさせず移動する。
その背を追うように夜明けが近づいてくる。
紅が目を覚ます前に戻って、いつもみたいに笑って「おはよう」とでも声を掛けよう。
屋敷の屋根で一息ついて、縁に降りる。
そこに見つけたのは。

「…旦、那…?」

縁の柱に寄りかかってぼんやりとする紅の姿。
「…佐助、戻ったか」
どこか安堵したような表情。
「…ぇ、あれ?何で、ここ」
頭が混乱する。
手で髪を掻き乱すと、それを見て紅が笑いながら立ち上がる。
そして背に腕を回して抱きしめられた。
「…落ち着け、佐助」
トクン、と安心する心音。
「…旦那に落ち着けって言われるの…なんか微妙だ」
「なに?」
途端に眉間に寄せる皺を指で撫でて。
返すように紅の背中に回した手が、躊躇う。
独眼竜の言葉が反芻して。
「佐助、疲れた顔をしている」
頬に触れる指先。
この紅は、独眼竜のことを知ったら何を思うだろうか。

(怒るかな…俺を、罵るのかな…)

人を殺すことを好きだとは思わない。
でもそれは仕事だから仕方ないと事務的に手が身体が動く。
「佐助?」
ゆっくりと紅の背中を抱き返せば、暖かい体温がじんわりと沁み込んでくる。
この背はこんなにも暖かくて優しい。


『てめぇは今日も、人を殺した穢れた手で抱きしめるんだろ』


誰よりも、何よりも失いたくない愛する人を。
抱き返す手に力を込める。
引き寄せて紅の肩に顔をうずめて。

(そうだよ、…俺は、死なれるのか怖いんだ)

この手がいくら穢れも痛くない。
でも、それの所為で紅に何かあったら。
それを戦国の世だからと、諦めることができるだろうか。

(…きっと、俺は…)

だからこそこの手を穢してまで、
その可能性を秘めたすべてのものを「仕事」だと、殺していくんだ。












※忍は生死を割り切る。でも、数字みたいにうまく割り切れない。やりきれない。でもすべては紅の為。

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どうしても触れたくない、

この時だけは。

最初に気付いたのは、慣れない香がしたから。
一度気付いたら、知るはずもない気配まで感じ取るようになって。

「雨が、止みませんな」

梅雨らしいと言えばそうなのでしょうが、
と笑いながら有能な右目はお茶を入れる。
頬杖をつきながらその手元をぼんやりと眺めていると、
「梅雨は、お嫌いでしたね」
とまた右目は笑みを深くした。

(誰のせいだ、誰の)

内心悪態をつく。
梅雨の湿気た空気はより一層気分を悪くするだけで。
何も答えずにぼんやりしていると、
右目は訝しげな眼差しを送ってくる。
自分の機嫌が悪い理由を頭の中で巡らしているのかもしれない。
肩から上着が落ち、
それに気付いた右目は近づいて上着に手を伸ばす。

「…触るな、」

その手を制するように短く一言言えば。
すぐに手はピタリと止まる。
どうしても触れたくない、

「…それ、は嫌いだ」

右目が知らない人みたいだから。
いつもの馴染んだ匂いがしない。

「……俺の、小十郎じゃねぇ」

その言葉にようやく不機嫌な理由に思い至ったらしい右目は、
止めた手を伸ばして上着を取ると肩に掛けなおした。
毛先に遊ぶように軽く触れて。
さっきよりも距離を縮めて、膝をつく。
「…香が、気に障っておいででしたか」
袂から出したのは小さな匂袋。
それは今日ずっと香っていたもので。
「雨続きで城下に出られず退屈かと思い、」
何か気を紛らわせるものでもあればと城下に出たのだ、
と右目は言った。
「とはいえ、小十郎も匂袋には詳しくありませぬゆえ」
あれやこれや迷っては違う香をまとって城に戻り、それが続いた。
一旦座敷を離れ戻ってきた右目の手には小さな木箱。
また膝を折り、蓋を開ければ見目鮮やかないくつもの匂袋。
「少しでも、喜んでいただきたく、」
苦笑する右目の手から一つ匂袋をとってその香りに目を閉じる。

「…これじゃあ、どれがどんな匂いか解らねぇじゃねぇか」

そして、笑う。
木箱に入った匂袋はそれぞれの香りが移りあって。
箱に匂袋を戻して右目の手から木箱を取り上げる。

(勝手に不機嫌になって、苛立ち損じゃねぇか…くだらねぇ)

それを傍らに置いて、右目の襟元を掴んでその胸に顔をうずめる。
「政宗様?」
「…もういい、何でもねぇ」
いつもの声音で言えば、頭上で笑う気配がした。

「…俺には、これでいい」

傍に、馴染んだ匂い。
温かい、体温。


「…梅雨は好きじゃねぇが、そう悪くもねぇな」


この有能な堅物が自分の為にあれやこれやと選んでいる姿を想像して笑った。
永い湿気た空気も、
幕をはったように止まない雨も、
机の上に詰まれた紙束も、
そう思えば悪くはない。











※今日は忙しかったからショートショート。甘い。永月さんの政宗様が可愛い所為(笑)
うちの筆頭は可愛くない。

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プロフィール

HN:
瑞季ゆたか
年齢:
41
性別:
女性
誕生日:
1984/02/10
職業:
引きこもり人嫌いの営業AS見習い
趣味:
読書・音楽鑑賞・字書き
自己紹介:
◇2006.11.16開通◇

好きな音楽:Cocco、GRAPEVINE、スガシカオ、LUNKHEAD、アジカン、ORCA、シュノーケル、ELLEGARDEN、LINKIN PARK、いきものがかり、チャットモンチー、CORE OF SOUL、moumoon…などなど挙げたらキリがない。じん(自然の敵P)さんにドハマり中。もう中毒です。
好きな本:長野まゆみ、西尾維新、乙一、浅井ラボ、谷瑞恵、結城光流(敬称略)、NO.6、包帯クラブ、薬屋シリーズなどなど。コミック込みだと大変なことになります(笑)高尾滋さんには癒され、浅野いにおさんには創作意欲を上げてもらいつつ…あでも、緑川ゆきさんは特別!僕の青春です(笑)夏目友人帳、好評連載中!某戦国ゲームにハマり我が主と共に城攻めを細々とのんびり実行中(笑)サークル活動も嗜む程度。他ジャンルに寄り道も多く叱られながらも細々と更新しています…たぶん。

備考。寒さに激弱、和小物・蝶グッズとリサとガスパールモノ・スヌーピーモノと紅茶と飴と文房具…最近はリボンモノもこよなく愛する。一番困るのは大好物と嫌いな食べ物を聞かれること。

気まぐれ無理なくリハビリのように文章やレポを書き綴る日々…褒められて伸びるタイプです。

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