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それはまるで口癖のように、

「恋はいいよ、あったかくてさ」

男は目を伏せて笑った。
それはまるで、辛い現実に見ないフリをしているようで。
「…そういうもんは縁がねぇな、俺には」
恋だの、愛だの、
負の感情とは違う、「そういう」類の感情は少し苦手だ。
例えば、
「小十郎は、そういうんじゃねぇだろ」
すると男は盛大に声を上げて笑った。
後で小十郎に怒られても知らねぇぞ。
「あいつは、…」
小十郎が向けるのは、
恐らく負の感情ではない。
時に行動を阻み、諫め、力ずくで止めるのは、
それがよくないことだと思うからだ。

蒼、という存在にとって。

「時々、誰を見てんのか解からねぇことがある」
背を預けた存在が、
その背を誰のものと見ているのか。
奥州筆頭として。
伊達政宗として。
「でも、…あいつの土臭い手は、嫌いじゃねぇ」
戦を離れた時に向ける穏やかな表情も、
いつまでも自分を子ども扱いをする手も、
さりげなく欲しい時に甘やかしてくれる腕も。
「ま、確かにそりゃ恋だの愛だのとは違うけどさ、」
男はまた、柔らかい表情で目を伏せる。

「けど、…そりゃあ、それもよりももっとずっと深い、家族、みたいなもんだろ」

そういう暖かさってやつには、
生まれてこのかた運がない。
蔑まされ、迫害され、
小さな身体に降り注ぐのは、悪意と毒を孕んだ言葉。
それを知っていたから、それを覆すだけの力を欲しがった。
だれかが非情になるのなら、自分が非情になろうと。
せめて自分の目の手の力の及ぶ場所だけでも、守ろうと。

「そういう奴はさ、」

知らぬ間に握り締めていた手を、
男は抜かりなく気がついて解いていく。

「あたたかさと痛みを知ってる奴は、強くなるよ」

手のひらに食い込んだ爪痕に血が滲んでいた。
その赤に、男は優しく口付けを落とす。

「正直、俺は誰が天下を取ろうが興味はねぇさ」

でも。


「それが、アンタなら少しは浮世もマシになるんじゃねぇかって思うよ」


穏やかに笑う表情が、何故か泣いているようにも見えて。
空いた手で長い髪を梳いて、
顔を上げた男のでかい図体に両腕を回す。

「…じゃあ、そうなるまでもう少し我慢してろ」





何故だか、どうしようもなく、この淋しがりやの男が、愛おしくなった。



















漸く忍から脱出。
傾奇者の彼はすごく大切にしたいキャラです(笑)幸せで笑ってるのに、彼には常に寂寥感が付きまとってる感じがしてならない。だから、周りの皆さんは彼に会うときは思いっきりぎゅーって抱きしめてやればいい。

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夢の反対は現で、

人は醜悪なものを隠したくて、
見たくなくて、
まるで反対の綺麗なことを並べようとする。
例えば、

紅。

という、その色にさえも焦がれ、
けれどその瞳に映ることを恐れ、
その手にも触れることもできず、
ただ傍に、
かの手が届く場所に、
かの声が聴こえる場所に、
居ることさえできたら。
未来永劫、変わることなく。

「…なんて、ただの夢か御伽噺か」

生憎と、相手にしているのは現実だ。
向かい合えば嫌でも瞳に入るし、
慰めるようにくしゃりと髪を撫でる感触は嫌いじゃないし、
そりゃ主の傍に控えるのは当然で、
こちらが触れるなら手は届くだろうし、
自慢じゃないが耳は人一倍いいから声が聴こえないはずもない。
この繋がりはきっともうしばらくは変わるまい。
それこそ、どちらかが命を落とすことにならない限りは。

「…尤も、落とすとすれば俺だろうし」

死なせはしない。
例え四肢が動かなくなっても、
音が閉ざされても、
光りが闇に呑まれても、
声が枯れてしまっても、
死なせは、しない。

あの、紅、だけは。

「…なぁ、いつまでアンタは背中を守ってもらう気だ?」

右目に問えば、この命尽きるまで、なんてベタなことを言うに違いないが。

「What?…そりゃ、何の話だ」

不機嫌な声なのは、「守ってもらう」いう部分に対してか。

(…それとも、それを問う俺に対してか)

どっちでもいいけど。

「今此処で、俺様がアンタの首を取るのは簡単だぜ?」

今宵は、仄暗い朧月夜。
開け放たれた襖の柱に廊下に背を向け寄りかかる蒼と、
窓枠に座る忍と。
勇敢で聡い右目といえど、無粋な真似はするまい。
これは誰も知らない、逢瀬。
紅も、右目も。
他の、何人たりとも気付きはしない。

「Ha!てめぇなら、そんなこと言う前にもう首取ってんだろうが」

心底可笑しそうに笑う、蒼。
そう、首は取らない。

「俺が、紅の好敵手でなきゃな」

音もなく距離を詰めて、
蒼の隠された目に触れるように手を伸ばす。
蒼は、瞬きひとつ、身じろぎひとつせずに。
ひとつ、
息を吐き出すように自然に、
答えた。


「…俺の命が尽きるまでに決まってんだろ、」


あいつが俺より先に死ぬことも。
俺があいつより先に死ぬことも。

「俺は、俺に、赦さねぇ」


伸ばした手は、結局眼帯に触れることすらせずに。
ただ、何故か。
それは痛いほどに堪えて。

「…じゃ、次逢うときは、敵だな」

「Han?端っから敵同士じゃねぇか」



噛み付くように触れた、口唇は、夜の静寂に酷く冷たく感じた。















佐幸です、念の為( ̄□ ̄;)
蒼様は忍の思ってるとこはお見通し。自分も同じだから。
違うのは、
蒼様→バンバン口に態度に出す
忍→何でもかんでもしまい込む
友人の絵板から一部言葉を拝借しました。

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少しずつ沈殿する、

これは、何だ?
独占欲?
いや、違う。
じゃあこれは。

「貴様の仕業かっ、猿飛佐助」

口惜しそうに叫ぶ声に視線を遣ると、そこにはかすががいた。
「んー?こんなとこにしこたま罠作ってんなんて危なすぎるだろ」
「一つ残らず律儀に引っ掛かるとは…忌々しい」
律儀に"引っ掛かってやった"のは嫌がらせだ、念の為。
「なぁかすが、」
主人を想い慕う彼女なら、これ、に付けるべき名が解るだろうか。
「お前は何で上杉を慕うんだ?」
「なっ、それは…あの方と同じものを見てみたいと思ったから」
これ、は少し違う。
「忍にあるまじき私情をはさみまくりだな」
「うるさいっ、…それより、いいのか?」
にやり、とかすがが笑う。
「何が」
「真田が、…伊達とぶつかるぞ」



…それ、早く言えよ。



「相変わらず、過保護だな」
「いや、過保護じゃないんだよね」
これ、は。
別に、すげぇやんちゃしなきゃ構わないし。相手が伊達なら不意打ちとかそういうこと心配しなくていいだろうし。
そうじゃなくて、もっと、そう。

(呼んでくれりゃ、すぐ飛んでくのにさ)

かすがは笑う。

「お前のそれは、異常なまでの所有されたい欲だな」

綺麗な顔で、嘲笑する。

「それこそ、忍にあるまじき想いとやらじゃないのか?」

自分をもっと欲しがればいいのに、と思うことは。
独占欲とは違う。
誰かに、いや、あの紅に、所有されたい、だなんて。

(…俺様も大概どうかしてる)

でも、それは殊の外嫌な感じはしなかった。
「…じゃ、俺行くわ」
かすがは何も言わず、目で「去ね」と言っていた。それに笑いながら木々の間を縫うように疾走る。
こんな風に思ったのはいつからだったか。
耳を澄ませて目を伏せる。

チリン...

聞こえる風鈴の高い音。
「佐助、ほら」
差し出され小さな風鈴。
「…旦那、これ、何」
「風鈴だ!」
そんな嬉しそうに強く言わなくても見りゃ分かるけどね。
「うん、何で俺?」
女の子にでもあげりゃあいいのに。好意を寄せている者はかなり居るから、喜ぶだろうに。
…考えたら、何かイラッてきた。
「うむ、硝子細工があまりにも綺麗だったのだ」
「…多分、これ、偽物だぜ?」
甲高い、風鈴の音。
「別に、どっちでもよいのだ」
殊勝な言葉に視線を上げた先。
耳まで赤くして背を向けるのは。


「…綺麗な、音であろう?」


佐助、なんて、努めて穏やかな声音で言うから。恥ずかしいのを堪えているのだ、これは。
眩しくて、くすぐったくて、その小さな背中に額を当てて。
跳ねた心臓には目をつぶる。

(…この紅のために、死にたい)

「…さ、佐助?」
だから、名を呼んで。
己が誰のものなのか、言ってくれたらいいのに。


「…うん、綺麗な音だねぇ、旦那」


木々を抜けると、それぞれの軍勢が見える。情報収集だけのつもりが、随分油を売ってしまったらしい。音も立てず風のように人の間を抜けると。
「漸く来やがったか」
右目が気配を察して呟く。
「もうおっ始めてるかと思った」
「役者が揃わなきゃ始まらねぇだろ」
右目はにやりと笑う。
その横で右目の視線を追うと、真剣に睨み合う紅と蒼が居た。


「佐助、俺を最期まで見届けろ、一戦たりとも一刻たりとも一寸たりとも見逃すな、」


それは都合のいい幻聴だったのかもしれない。それでも確かに鼓膜を揺らす、芯の強い声。

そう、俺は、アンタの忍。

アンタだけの、忍。

その言葉に応えるように、口元に笑みを浮かべた。















二つ目。一番好きなキャラは逆にあまり書けない気がする…orz
その点、表には塵一つも出さないくせにどこか歪んでて、でも軽口を叩くこの忍は非常に書きやすい(笑)好きです。
でも口調がイマイチ分からないなぁ…

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愛しい愛しい、





「私は、執着などという愚かしいものは持たぬよ」


男は刀を交えながら、悠然とそう言った。

「それは、時に弱点にもなりうる」

くくっと、男は喉で笑う。
それが、とても癇に障る。

「そんなもんかねぇ、」

執着は、ある。
職業柄、それを表に出すことは出来ないが。
それは確かに自分を拘束するもの(心奪われちゃってるんだし当たり前)だけど、でもそれがあるからこうしてこの場所に立っている。ともに生き、ともに戦い、面倒な国獲り合戦に巻き込まれたことを後悔はしていない。

(それは、俺の、意志、誇り?…いや、子ども染みた独占欲か)

あのの隣に、居たい、と。
あのの隣は、己の場所だ、と。

「…何か言いたそうな表情だな、私の言葉が不本意、かな」

この状況においても、まだ余裕のある様子が気に食わない。
こちらとて、既に手加減などしていない。

「別に?…俺は違うってだけさ、アンタとはね」

男は、また可笑しそうにくくっと笑った。

「あの男と、同じことを言う」

男の言葉に呼応するように、一際大きくが唸りを上げて。


『テメェとは意見が合わねぇみてぇだな』


掠めた、知った声。
それはほんの刹那。


『あのお方は、俺の誇りだ』


視界に蜃気楼のような、「かの男」の背を見た。
無意識の内に奥歯を噛む。
東大寺を燃やす紅蓮に突き動かされるように、
掻き乱されるように、
揺らぐ、内なる

(これは、何に対して、の、何、だ?)

怒りなのか悲しみなのか哀れみなのか後悔なのか屈辱なのか嘲笑なのか自嘲なのかこの感情は。
それが何のどんな感情だとて、それを塵一つも表に出すことはなく。
嘆息、ひとつ。

「…じゃあ、ここはひとつ多数決ってことで

ふわり、と。
利き手の大型手裏剣を振り上げ、振り下ろす。

「――――…」

男は、最後まで、悠然と笑っていた。





「…さぁて、俺様は帰るとするかね」





愛しい愛しい、あの、の隣に。




















初書き○ASARA。
自分でも何を書きたいのかまだ定まってないけど、ひとつ確かに言えることは。
男(↑の)は、 『とんでもなくカッコいい悪役』 であるということ

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プロフィール

HN:
瑞季ゆたか
年齢:
41
性別:
女性
誕生日:
1984/02/10
職業:
引きこもり人嫌いの営業AS見習い
趣味:
読書・音楽鑑賞・字書き
自己紹介:
◇2006.11.16開通◇

好きな音楽:Cocco、GRAPEVINE、スガシカオ、LUNKHEAD、アジカン、ORCA、シュノーケル、ELLEGARDEN、LINKIN PARK、いきものがかり、チャットモンチー、CORE OF SOUL、moumoon…などなど挙げたらキリがない。じん(自然の敵P)さんにドハマり中。もう中毒です。
好きな本:長野まゆみ、西尾維新、乙一、浅井ラボ、谷瑞恵、結城光流(敬称略)、NO.6、包帯クラブ、薬屋シリーズなどなど。コミック込みだと大変なことになります(笑)高尾滋さんには癒され、浅野いにおさんには創作意欲を上げてもらいつつ…あでも、緑川ゆきさんは特別!僕の青春です(笑)夏目友人帳、好評連載中!某戦国ゲームにハマり我が主と共に城攻めを細々とのんびり実行中(笑)サークル活動も嗜む程度。他ジャンルに寄り道も多く叱られながらも細々と更新しています…たぶん。

備考。寒さに激弱、和小物・蝶グッズとリサとガスパールモノ・スヌーピーモノと紅茶と飴と文房具…最近はリボンモノもこよなく愛する。一番困るのは大好物と嫌いな食べ物を聞かれること。

気まぐれ無理なくリハビリのように文章やレポを書き綴る日々…褒められて伸びるタイプです。

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