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no like

それは主と言うにはまだ幼く、只の子供と言うには特別な。

『no like』

緩やかに跳ねた柔らかい金髪の少年。その傍らに、綺麗に巻かれた艶やかな金髪の美少女。一人一人を見ては解りにくいが、二人寄り添うと少年の金髪の方が微かに蜂蜜がかっているのが分かる。

「…どうして貴方はそうなんですの!」

少女は本当に怒った様子でルカを問いつめる。ルカは困った顔をするだけ。
「…そんなに怒らないで、ダイヤ」
「私は鉱石ですのよ!それなのに、」
ダイヤは作った拳をルカに振り下ろそうとして、寸前で止めた。
「…ルカのバカ」
ダイヤはルカに背を向けて呟くと、姿を消した。ルカはそれを止めることもできず、ただ中途半端に伸ばした手だけが宙に浮いていた。

「…本当に、」

これは自分の所為だ。
自分が弱いから。
ルカはぎゅっと手を握りしめる。もっと自分に力があればいいのに。
「お、ルカじゃんか」
威勢のいい声に、ルカははたと顔を上げた。そこに居たのはペリドットだった。ルカは穏やかに笑う。
「ペリドット、リンは一緒じゃないの?」
鉱石と主は大抵一緒にいる。姿を消していることが多いので、その気配で察することしかできないのだが。
「あー…」
ペリドットは気まずそうに頭を掻いた。
「消耗しすぎでダウンしてんだわ」
「えっ…」
ペリドットの言葉にルカはびっくりして見返す。
「リンは大丈夫なの?」
「休めば治る」
その答えに、ルカは安堵の息を漏らした。ペリドットはそんなルカを眺めて、「心配性なやつ」と思った。口の悪いペリドットがそれを口にしなかったのは、それがルカの優しさだと知っているからだ。
「…ん?ダイヤは居ねぇのか。気配すら残しちゃいねーし」
その固有名詞が地雷だということをペリドットは知らない。途端に表情を暗くしたルカに、
「何だ、また喧嘩か」
彼女は気が強いし、人と衝突しやすい。ペリドットは気質が似ているだけに、気に入らないが気持ちは分かる。
「…解ってるんだ。僕が主だから、ダイヤは力を貸してくれるけど…僕が弱いから」
誰かを守れるのはダイヤが力を貸してくれるから。自分ひとりで何もできない。それをルカは何度も実感してきた。リンのように傷ついた人を救うことも、レイヴンのように敵を倒すことも出来ない。そんな悪い思考の堂々巡りをペリドットが止めた。…力ずくで。
「…痛いよ、」
ルカは涙目になりながら、絞り出すように訴える。しかしペリドットの方に反省の色はない。
「鉱石は主に従うのが仕事だ。けど、誰でもいい訳じゃねーの」
その声は怒っていた。理由もなく殴られて怒りたいのはルカの方だが、そんなことを口にする勇気はない。
「鉱石だって、選ぶ権利はあんだよ」
ペリドットが言わんとすること。
「お前を主だと認めたのはダイヤだ」
ルカは呆然とペリドットを見る。

「お前が主のお前を否定することは、お前を選んだダイヤの判断を愚弄してるってことなんだよ」

「あ…」
ルカは掠れたように呟いて、泣きそうな顔で去ったダイヤを思い出す。
「ったく、何で俺があいつ庇ってんだぁ?」
ペリドットは苛立ちを誤魔化すように再び頭を掻いた。
「…そっか、」
そもそもの理由は何だった?ルカは服の上から腕を押さえた。ダイヤを庇ってルカが傷ついたこと。それが始まりではなかったか。
「…ごめんね、ダイヤ」
呟くと、陽炎のように揺れる光り。その気配に気づいて、ペリドットはそろりと姿を消した。

「だから、ルカはバカなんですの」

それは主と言うにはまだ幼く、只の子供と言うには特別な。

「ルカは私が認めた主なんですからね、」

しっかりしてもらわなければ困る!とでも言いたげな表情にルカは笑う。それはどこか泣きそうな。ルカが手を伸ばす。ダイヤはゆっくりとその手に自分の手を重ねた。

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no lack Ⅱ

それは目も当てられない程の、残酷な、現実。
だが真実を告げた時、顔色一つ変えずに彼女は穏やかに笑った。


『no lack』Ⅱ


「…一番バランスが良いのは、フリクリたちでしょうね」
ジークは特に考える素振りもなくそう言った。
「フリクリもガーネットも攻守がしっかりしているし、互いの背を預けている」
「それは信頼の証ですものね」
クォーツは笑って応じる。
「その意味ではリンとペリドットも同じ。まだ未熟ではあるでしょうが、それぞれの弱点を"二人"で補えている」
「レイヴンとラピスラズリは対照的ですね」
クォーツが促すと、ジークは更に続ける。
「彼は完全に攻めに重きがある。攻めこそが防御と言ったところかな」
昔からジークはものを語るのが好きだ。つき合いの長いクォーツは勿論それを知っている。
「ルカとダイヤは未知だな。何を起こすか分からない」
幼く気弱な少年と対照的な気の強い少女。双方を思い浮かべてジークが笑う。クォーツはそんなジークの話を聞くのが好きだった。
「あら。それならキングもそうでしょう?」
クォーツの出した名前に、ジークはうむ、と唸る。

「貴女の切り札ですか?」

他の人間もキングに対してはぎこちない反応をする。鉱石の主たちはそんなこともない人間が多いが、中でも「6月の君」とジークはあまり良い顔をしない。尤もジークに関しての話をするなら、嫌いなのではなくただ単に扱いに難しいからだった。人となりは嫌いではない。だが、立ち位置が曖昧すぎて距離が計りにくいのだとジークは言う。
「彼の場合はバランス云々を抜きにして一番強い。本人はそれを快くは思っていないようですがね」
するとクォーツは可笑しそうに笑う。
「彼は面倒が嫌いなだけですわ」

『えぇ、お嫌いですね』

あの時、キングはそう言って苦笑した。
「…尤も、そういう意味では貴女が一番お強い」
そのすべてを統べる、まだ大人になりきらない少女。されど大人と同じように、否、大人以上に大人らしい。
「…私は、忘れていませんよ」

初めて見た時、なんて美しいのだろうと思った。人形みたいだ、という同僚の呟きは実に的を射ているとジークは思ったのだ。だが、そんな少女に突きつけられたそれは、目も当てられない程の、残酷な、現実だった。
息の詰まる思いを噛み殺しながら真実を告げた時、顔色一つ変えずに彼女は穏やかに笑った。

「…そうですか、」

怯えることも取り乱すこともなく、静かに。
「では私も、やらなければならないことを始めなければなりませんね」
まるで動じた様子もなく、何もなかったかのように。

「…ローズ・クォーツ、」

不意に口をついて出た名前に、クォーツはゆっくり振り返る。ジークにとって、それは酷く永い時間だった。

「貴方は、私を見届けてくださる?」

ジークの心は定まっていた。

「…では、私に鉱石を与えてください」

それが、始まり。

ジークは懐かしげに目を細めて、再び紅茶を口にする。

「だから、私は貴女の傍にいる」

ジークの言葉に、クォーツは持ち上げたティーカップを下ろした。

「見届けていただきますわ、…最期まで」

そしてあの時と同じ様に、綺麗に笑った。

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no lack

普段は大人びた顔ばかりする少女の年相応の様子に、男は溜め息を吐いた。


『no lack』


「…ふむ。物騒になってきたものだね、ここら辺りも」
ジークは煙草をくゆらせて、夕闇空を見上げる。
「実に嘆かわしいね、紫」
傍らに在る紫苑の瞳の美女にそう投げかけると、彼女は困ったように笑った。
「…さて、先を急がねば」
ジークは時計を見、歩き出す。すると、彼女は陽炎の様に揺らいで消えた。

予定の時間より遅れたジークを咎めることもなく、クォーツは穏やかな笑みで迎えた。彼女の使いで先に出迎えた青年にお礼を言い、ジークは流れる様な動作でクォーツの手に口づける。
「…相変わらずで何よりですよ、クォーツ」
「貴方も相変わらずですのね、ドクター」
二人が初めて出会ったのは、ずっと昔の話。それからクォーツの主治医として、また鉱石の主としてジークは傍にいる。
「それで、私に何か?」
「定刻を過ぎた言い訳をさせてもらえるのなら、」
クォーツは悠然と笑って、
「…伺いますわ」
と一言。部屋に歩きながら、ジークは素直に遭遇した出来事を告げる。
「途中でトランプたちに遭遇しましたよ。珍しく近くを彷徨いていたので一掃しておきましたが」
クォーツの表情が僅かに曇ったのをジークは見逃さない。
「他の主たちはどうしたのです?」
クォーツは答えなかった。逃げるように先行くその手をジークは掴んだ。
「…なんて無防備な、」
ジークはクォーツを咎めるような表情になって呟く。
「…トランプたちに加えて、JとQまで出てきています」
今の人数では全員で対応するしかない。ジークは此処へ遅れた自分に腹を立てた。それに気付きながら、クォーツはぽつりと呟く。

「貴方を含めても、まだ12には足らない」

普段は大人びた顔ばかりするクォーツの年相応の様子に、ジークは溜め息を吐いた。
「紫、この屋敷の守りを」
その言葉に呼応するように、紫苑の色が揺らいで消えた。
「―――…アメジストは忠実ですのね」
クォーツの言葉に、ジークは掴んでいた腕を放した。そして彼女の居た場所を眺め、苦笑する。
「最初は助手が見つかるまで助けてくれればいいと思っていたんですがね」
そうして軽く頭を掻いた。
「あまりに有能すぎて、紫が居なければ何もできなくなってしまいましたよ」
困ったような複雑な反応に、ようやくクォーツが笑う。
「貴方たちにはそれが丁度いいのですわ」
それぞれ性格も相性もまるで違う。ただ、ジークとアメジストには今のスタンスが合っているだけで。クォーツの言わんとすることに気づいて、ジークはほかの鉱石のことを考えた。
「…お茶にしましょう、ドクター」
クォーツの言葉に虚を突かれる。
「アメジストが守っているんですもの、案ずることはないのでしょう?」
ジークは笑って恭しく頭を垂れる。
「…勿論ですとも」
その反応にクォーツはまた笑った。

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no trick

男はその腕に瑠璃色の双刀を抱いて、笑う。
呼応するように、瑠璃色はその鮮やかさを増す。

統べては、総てを全て断ち切るために。


『no trick』


世界がすっかり闇の帳の中に包まれた時分。
レイヴンは蠢き立つトランプの処理に追われていた。そしてその中に立つ、異色の男と女。
双方と対面するのは初めてではなかった。

「お久し振りですね、」

男は愉しげに笑い、呼応するようにレイヴンも笑った。
「幹部様揃ってお出ましかよ、光栄だねぇ」
「僕らもたまには挨拶をしておかないと、失礼にあたりますからね」
"鉱石の主様に"と相変わらずの笑顔で付け加える。
「あの夜の続きだ、」
「臨むところです」
レイヴンは地を蹴り、男も刀を手にし迎え撃つ。
これで何度目の夜だろうか。度々レイヴンはこの男と殺り合っている。そしてその度に決着を後回しにする。正直なところ、本気を出しているかどうかは判らない。だが、こうも結果が先延ばしになると本気を出していないというところが妥当か。少なくとも、レイヴンはそうだった。仲間内では十分に強者のレイヴンが見つけた退屈しのぎ。クォーツに知れれば、不謹慎だと優しく嫌みでも言われそうだが。
「相変わらずお強いですね、貴方は」
「その俺に決定打を与えないお前はどうなんだ?」
男の太刀を受け、スライドさせて次の一撃。読み切った男は上体を反らしてかわすと、更に踏み込んで一閃。かわさず真っ向から一閃を受け止める。ギリギリと金属の擦れる不快な音がした。
「…膠着状態は、面白くないですかね」
この状況で表情を変えない男は小首を傾げる。
「気持ち悪い、」
レイヴンはその仕種に初めて吐き捨てるように言った。
「では、そろそろ動きましょうか」
「初めっから動きなさいよっ」
苛立った女の声に、男は振り返り笑う。
「そんなに怒らないでください」
その態度が気にくわない。
「余所見とはいい度胸だな」
弾かれた二つの刀。だが直ぐに切り返すレイヴン。即座に注意が向いたところで、この一撃はかわせまい。刹那。耳の鼓膜を震わす高音。
「なっ…」
背を向けたままの男は確実にレイヴンの一撃を受け止めた。
「…余所見はできると思わなきゃできないものですよ」
それは、「お前の太刀は余所見していても受けられる」ということ。直接的でない男の言い回しが癇に障る。
「貴方唯一の刀は、僕に届きませんが?」
漸く振り返ってレイヴンと視線がぶつかる。
酷く穏やかで波一つ立たぬ金色の瞳。それが動き出した証拠。リミッターの解除を示す金色を、レイヴンは知識として持っていた。だとすれば、こちらもそれに応えない理由はない。

「唯一の刀、だって?」

レイヴンは刀を持つ手を下ろして、ゆっくりと繰り返す。男は僅かに眉を顰めた。
「それが本トなら、お前の両目は節穴だな」
瑠璃色の光りが弾ける。その色を纏う女は、ゆっくりとその形を確かめるようにレイヴンに触れていく。

「…生憎だが、俺の刀は三本だ」

男はその腕に瑠璃色の双刀を抱いて、笑う。
呼応するように、瑠璃色はその鮮やかさを増す。

統べては、総てを全て断ち切るために。

レイヴンは地を蹴る。それは完全に勢いを取り戻した動き。不規則に動く三本の刀を、男は巧みにかわしていく。受けては払い、かわしてはまた受ける。それをしばらく繰り返したところで、男が大きく距離を取った。しかしそこで止まらず深追いした判断が間違いだと気づくのはすぐ後のこと。

「…綺麗ですね、これ」

レイヴンの一撃を刀で緩め、刀と反対の手が止める。手のひらにザックリと食い込んだが、痛覚すら無いかのように男は動じない。そして次の瞬間。

嫌な、予感がした。

男は捕まえた瑠璃色の刀に、自分の刀を突き立てた。何度か突き刺された瑠璃色は、やがて悲鳴を上げるように折れた。
その刀の大半を掴まれたまま、折れた瑠璃色を庇ってレイヴンが距離を取る。滴る血すら気にすることなく、男は捕まえた刀を手から抜く。それは直ぐに解けて、右腕に戻った。それを確認して、男はレイヴンを見る。そして、

「一つずつ折ってあげますよ、」

男は笑う。

「…精々、負け犬の牙だけは研いでおくんですね」

その手に、瑠璃色の残滓を残す右腕を抱いて。

「じゃないと、面白くないでしょう?」

鉱石を庇うレイヴンを見下ろしながら、

「退屈しのぎなんだから、それなりの働きをしてもらわないとね」

男が笑う。

「…っ、」

レイヴンが奥歯を噛み締める。ラピスラズリに触れる手に力が籠もった。レイヴンの悔しさや怒りは、痛いほどにラピスラズリに伝わる。
「では、また」
優雅に一礼して男は一足先に消えた女を追って闇に溶けた。

「――――…マスター、」

白い顔で不安げな声を上げるラピスラズリの欠けた腕に触れる。それは酷く優しい触れ方で。
「…心配すんな、必ず取り返す」
「…はい、」
レイヴンの手に、ラピスラズリは左手を重ねるように触れた。

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no lose

一際目立つ燃えるような赤髪。それを千切るように短く切ったあの日、あの瞬間から失うものは何も無くなった。


『no lose』


テーブルに足を載せ、頭の後ろで指をくんで目を閉じる。雨音が柔らかく鼓膜をくすぐる。限りなく無音に近い、心地よい空間。そこへ軽いノックの音がする。

「―――…退屈そうだね」

人目を引く赤髪。通る声。無意識でありながら隙のない仕種と態度。唯一気兼ねなく酒の飲める相手の訪問をキングは歓迎した。
「いや?そうでも、」
「じゃあ、あたしの勘違いか…」
女は後ろ手にドアを閉め、キングのもとへ歩いてきた。
「お嬢様の呼び出しだって聞いてたから、不快になって戻ってるかと思った」
女は少し意地悪く笑い、鋭い一言にキングは苦笑した。
「別に、そこまでガキじゃねぇさ、俺だって」
「じゃあ、コレは不要だったか?」
取り出した瓶に、キングははっと表情を変える。

「…気が利くねぇ、」

にやりと笑みを浮かべてキングは応えると、直ぐにグラスを取りに行く。その間に女は腰掛け、瓶の封を切った。
「…で、土産話はねーの?フリクリ」
キングはフリクリが追加要請でトランプとやりあったのを知っている。しかも報告が正しいなら――恐らく正しいのだろうが――幹部のJとQが参戦したと言う話だ。もしかしたら一戦交えたのかもしれない。
「残念だが、お前の望むような話はないよ…ただ、」
「ただ?」
「…それなりの腕を持ってるのは確かだね」
フリクリは目の前のグラスに酒を注いで、複雑な表情をした。
「やっぱり何かあったんじゃねぇか」
「あったのはあたしじゃない、レイヴンだ」
話題としては珍しい名前に、キングはグラスを取って続きを促す。

「――…奴の鉱石の右腕が奪われた」

キングは一瞬言葉に詰まった。あの負けず嫌いでプライドの高いレイヴンが、よりによって鉱石の一部を持って行かれるとは。
「で、所有権は?」
「まだ此方にある…腕は欠けたままだ」
鉱石は六つのパーツで区分される。頭・右腕・左腕・右脚・左脚、そして心。それぞれに要の石がある。これを奪われ所有権が鉱石の主から移ると、欠けた箇所のパーツは戻るが奪った者の意思で動く。また強さは所有者の意志の強さが反映する。これを厄介と言わずしてなんと言おう。
「…面倒だな、色んな意味で」
こんな屈辱を与えられのだ、レイヴンが荒れていてもおかしくはない。
「それが、外見は殊の外冷静だ」
その場にレイヴンを落ち着けるリンが居たから、と言うのもあるのだろうが。そう加えて、フリクリは酒を飲む。
「腸煮えくり返ってんだろうけどな」
キングの言葉にフリクリは苦笑した。
「奴にはいい経験かもしれないよ、」
身内では確実に強者に入るレイヴンだ。それが慢心に繋がらないとも限らない。今回にしても、少なからずレイヴンに隙があったのは事実なのだ。フリクリはグラスを揺すりながら目を細める。

「失いたくないものがある奴は強くなる」

キングはフリクリを見遣り、また酒を流し込む。
「…それは経験則、か?」
キングの言葉にフリクリは一瞬手を止めた。溶けた氷が小さな音を立てる。
「…少なくとも、俺にはそう見えたぜ?」

一際目立つ燃えるような赤髪。それを千切るように短く切ったあの日、あの瞬間から失うものは何も無くなった…ように、見えた。
「まぁ、お前が弱いとは思わねぇが」
キングは瓶に手を伸ばして、空になったグラスに再び酒を注ぐ。
「―――なら、あたしもまだ…捨てきれてないんだろうね」
フリクリは呟いて、酒を飲み干した。キングはフリクリのグラスにも酒を注いで瓶を置く。

「ん、」

そしてグラスを持ち上げて促す。フリクリは笑ってそのグラスに自分のグラスを合わせた。

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プロフィール

HN:
瑞季ゆたか
年齢:
40
性別:
女性
誕生日:
1984/02/10
職業:
引きこもり人嫌いの営業AS見習い
趣味:
読書・音楽鑑賞・字書き
自己紹介:
◇2006.11.16開通◇

好きな音楽:Cocco、GRAPEVINE、スガシカオ、LUNKHEAD、アジカン、ORCA、シュノーケル、ELLEGARDEN、LINKIN PARK、いきものがかり、チャットモンチー、CORE OF SOUL、moumoon…などなど挙げたらキリがない。じん(自然の敵P)さんにドハマり中。もう中毒です。
好きな本:長野まゆみ、西尾維新、乙一、浅井ラボ、谷瑞恵、結城光流(敬称略)、NO.6、包帯クラブ、薬屋シリーズなどなど。コミック込みだと大変なことになります(笑)高尾滋さんには癒され、浅野いにおさんには創作意欲を上げてもらいつつ…あでも、緑川ゆきさんは特別!僕の青春です(笑)夏目友人帳、好評連載中!某戦国ゲームにハマり我が主と共に城攻めを細々とのんびり実行中(笑)サークル活動も嗜む程度。他ジャンルに寄り道も多く叱られながらも細々と更新しています…たぶん。

備考。寒さに激弱、和小物・蝶グッズとリサとガスパールモノ・スヌーピーモノと紅茶と飴と文房具…最近はリボンモノもこよなく愛する。一番困るのは大好物と嫌いな食べ物を聞かれること。

気まぐれ無理なくリハビリのように文章やレポを書き綴る日々…褒められて伸びるタイプです。

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