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髪を梳いた指は、

細くて長い少しささくれのある指。
好きな、もの。





※現代版忍と竜の話。a/i/k/o聴きながら書いてたら甘くなった(爆)続きは折りたたみ↓↓

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神様に誓って、


好きになったりしないと。
心の内を占める存在になどしないと。

忍は、度々こうして突然顔を出す。
だが不思議とタイミングが悪かったことは一度もなく、
この男の要領の良さを少し狡いと思った。
そうして話すことと言えば、
他愛のない話といつものくだらない言葉の応酬と。
「でね、旦那ってばさぁ…」
話す声が耳を右から左へすり抜けていく。
「聞いてる?」

自分の主人の、話。

「…てめぇはいつも幸村の話ばっかだな」
頬杖をついて呆れた顔をする。
「あはは、独眼竜は旦那と仲悪いもんね」
気に喰わない。
そうじゃねぇんだ。
「まぁさ、旦那は俺様の主人なわけだしその辺は…」
苦笑しながら言いやがって。
気付いているくせに。
理解してるくせに。
そんな素振り一つ見せずに、人を宥めようとなんて。
「独眼竜?」
黙っていると名を呼ばれた。
合わせた瞳が笑っている気がした。
小さく舌打ち。

(俺の不機嫌の理由が嫉妬だって…解ってんだろ)

分かっていて尚まるで知らない顔をして、
あたかも気付いてないようなフリで。
「あーあ、機嫌直しなって、今日は旦那の話おしまいにするからさ」
そう言ってくしゃりと髪を撫でられる。
その次の言葉は解ってるんだ。
「さてと、団子でも買って帰るかね」
さよならと自分以外の誰かを思う言葉。
それもよく知る、
「餡子とみたらし三本ずつ、だろ?」
紅の主人。
「ん?よく知ってるね」

(いつもてめぇが口癖みたいに言ってんだろうがよ)

忍は立ち上がり窓に桟に足をかける。

「また来るわ、じゃね、」

振り返らずに、何もなかったように。


「政宗」


愛しい声で、名を呼ぶ。
それば毒のように耳から全神経を脳を心をありとあらゆるすべてを内側から苛む。
駄目にする。
優しく染(し)んでいくように病んでいくように。
期待するなと、
諦めろと、
そう口にしてくれたらどれだけ楽になれるだろうか。
…果たして。

楽に、なれるのだろうか。

「政宗様?」
茫然と外を眺める背中に右目が声をかけてきて。
「…如何なされました?」
「…いや、」
その姿は闇に融けて既になく。


「鴉が…煩くてかなわねぇんだ」






※紅従主前提の忍←竜とか。忍は全部解っていて離さない。

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射抜くような眼差しは、

真っ直ぐに昏く深い曇天に向けられていて。
それを止めるのは憚られた。
だからただ、その横顔を見ていた。

縁を歩いていて不意に雲行きの怪しい空模様に気付いた。
湿気を吹くんだ風が頬を撫でて、益々風は勢いを増しきっと嵐を連れてくる。

「…まずいな、」

雲の流れが早い曇天を睥睨して踵を返した。
「片倉様、俺たちも手伝います」
「おう、」
兵士たちの厚意を素直に受け取って畑に向かう(正直とても一人では回りきれない規模なのだ)。
既に風は勢いを増してきていた。
補強用の板や棒をしっかりと結わいて、雨ざらしにならぬよう覆いその端を固定する。

「揃って居ねぇと思ったら此処に居たのか、手伝うぜ」

楽しそうな様子で竜は腕をまくり近くの兵士を作業を手伝い始める。
一国の主がやることではないと止めるべきだが、
気分屋の主の機嫌を損ねる真似は得策とも言いがたい。
ましてや今は。

(早くしねぇと、俺たち…はともかく政宗様も雨ざらしになりかねない)

「おい、少し作業の手を早めるぞ!」
その声に曇天を見上げた兵士達はその理由を察して作業の手を早めた。
結局、終わる前に雨に降られるのだが。
「来たぞ来たぞ!」
「この雨は激しくなるな」
どこか楽しみにしているような声に(主の気性によく似た連中が多いのだ)、
一喝して作業の済んだものから早々に屋敷に戻るよう指示を出す。
そして。

「政宗様、このままでは更に雨が酷くなりましょう」

畑に立ち尽くしたまま真っ直ぐに曇天を見上げている主は、
まるで見ているもの以外すべて聞こえても見えてもいないようで。
「…政宗様、」
けれどそれを邪魔することは憚られて。
主の気の済むまで、ただ傍に居ることしか出来なかった。

「…竜が、通るぞ」

うわごとの様に呟く声がして、それに応えるように空が光る。
口許に好戦的な笑みを滲ませながらも、視線は射抜くように鋭い。
そして訪れる強く凪ぐ風と刺さるような雨。
少しずつ体温が奪われていくのを感じて、
二度目に空に閃光が走った瞬間に手を伸ばしてその身体を腕の中に閉じ込めた。
刺さる雨から守るように。

「…小十郎…?」

今気付いたとばかりの反応に苦笑しながら、「…さぁ、屋敷へ」そう主を促して。
「すげぇ強い雨風だ…嵐なんていつぶりだ?」
「さぁ、いつぶりでしょうね」
見上げてくる主の背中を押しながら屋敷に向かって足を速める。
もうすっかりずぶ濡れになってしまった。





※昨日の対…というか、屋敷に入るまでの話。竜は竜に焦がれる。右目も竜に焦がれる。

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ただ音もなく雨は、

しとしととこぼれ落ちて。
それはとても、きれいな雨で。
指先で拭うのが勿体なくて、その頬に口唇を寄せた。


「あっはははは」

水の滴る髪をそのままに盛大に笑う。
すると眉間にしわを寄せて右目が後を付いてくる。
「すごい風に雨だな、ありゃスゲェ」
雲行きが怪しくなった午後。
野菜たちの畑を案じた右目は早々にその保護に動き出した。
それに気付いた兵士たちと作業をしていた右目に、
面白がって手伝いをするといよいよ嵐になって。
兵士も右目もそして自分もすぶ濡れになったのだ。
だが、それが楽しくて仕方ない。
「面白がっている場合ではありません」
ふわりと肩に手拭いをかけて右目は濡れた髪を撫でる。
「放っておけば風邪を召されます」
髪をされるがままにしながらも、
くくくと小さく笑っていると呆れたように右目は嘆息した。
「今湯をはっております」
冷えた身体をちゃんと暖めていただかなくては。
そう何とも生真面目に右目が言うから。
手拭いの合間から右目を見上げる。
「まだ、湯ははってねぇんだろ?」
その声に右目は手を止めて。

「だったら、準備が出来るまではお前が湯の代わりだ」

ぽすん、と音でも立てるように右目の胸に額をつけた。
そんな無防備な頭に冷たい滴が落ちて、
顔を上げれば同様にびしょ濡れになった右目。
その頬の傷を辿るように滑り落ちていく雨粒にそっと口唇で触れて。

「政宗様、」

髪を拭う手拭いは静かに畳に落ち。

「準備が出来るまで、でよろしいか?」

そう、甘やかす低音が鼓膜をくすぐる。
それでいい、などと素直に頷くわけがないと知りながら。
「…今日のお前は何だかいつもと別人だな」
頬の傷を今度は指でなぞって。

「…それはきっと、雨のせいでしょうな」

そう目を伏せて右目が笑う。
右目越しに外を見遣ればすっかり嵐は引いている。

雨は―――――

ただ音もなくしとしとと優しく降り注いで。






※畑保護を手伝う竜(笑)実は更に手間を増やしていたりして。

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強張った腕に、


気付かれなかっただろうか。
すっかり脱力している身体を抱きしめる腕に力を込める。

何人斬ったかは覚えていない。
だが自分が敵を深追いしその場所から離れた間に「何か」が通ったということだけははっきりと分かる。

(…深追いなんて、らしくねぇことをした…)

自分の主に切りつけた、というだけで一瞬でも冷静な判断を欠いたことに愕然とした。
だがそれよりも。

「…何だ、これ、は」

目の前には「何か」に蹂躙された仲間の屍が連なって。
ただでさえ荒れ果てていた大地は人の血を吸うように真っ赤に染まっていた。
ゆっくりとその合間を縫って歩き出す。
主の姿が見えない。

(…無事であってくれ…っ)

焦燥感に比例して歩みが早くなる。
刹那。
ただならぬ気配を感じて振り返る。
堅くて冷たい音。
時が止まったような二秒の空白。
劈く銃声と腹に穿たれた鉛玉。
力が抜けて、地面に膝をつく。
刀を地面に突き刺して倒れるのは免れたが、立ち上がるには時間が掛かる。
カチャリ。
硬質な音がしたが、二発目はなかった。

(放っておいてもすぐに死ぬ…そう、見限られたか)

ぼやける視界に入るのは、風にたなびく深紅の。

「小十郎…」

愛しい声がして、そして生きているという事実に安堵する。
けれど、跡形もなく殲滅していくかの男が生きている者を見逃すはずがない。

「…ゃく…に、げ…くだ…さぃ…」

ただ少しでも早く、此処から遠ざけなければ。
それだけが頭の中で反芻して。

「…っ小十郎、逝くな…小十郎っっ!!」

「……た、は…りか、ぇ…ては…な……ない…」

そんな表情を向けてはならない。
此処で命の尽きる存在ではない。
自分の姿に取り乱してはならない。
もし、それが出来ないのならば。

(…足枷には、ならねぇ…)

残りの力を振り絞る。
刃を背に返して、傍に居る何よりも誰よりも幸せを望む愛しいその人に一閃する。
離れたのを確認して、足下に刀を突き立てた。
地面が揺れて、屍たちが大地に吸い込まれるように落ちていく。


「貴方は、振り返ってはならない、足枷となるべくものは、すべて…この小十郎が断ち切りましょう」


そう告げて、優しく微笑んだ。
視界は闇に閉ざされ、その先のことは覚えていない。

「…政宗様、」

悪い夢を見たのだと理解っていた。
その恐怖を口にすることができないとも知っていた。
だから自分にできることは、傍で、抱きしめるだけ。
それで少しでも闇を退けることができるのならば。







※右目と魔王の話。実は右目も同じ悪夢を見ていた…というオチ。

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プロフィール

HN:
瑞季ゆたか
年齢:
41
性別:
女性
誕生日:
1984/02/10
職業:
引きこもり人嫌いの営業AS見習い
趣味:
読書・音楽鑑賞・字書き
自己紹介:
◇2006.11.16開通◇

好きな音楽:Cocco、GRAPEVINE、スガシカオ、LUNKHEAD、アジカン、ORCA、シュノーケル、ELLEGARDEN、LINKIN PARK、いきものがかり、チャットモンチー、CORE OF SOUL、moumoon…などなど挙げたらキリがない。じん(自然の敵P)さんにドハマり中。もう中毒です。
好きな本:長野まゆみ、西尾維新、乙一、浅井ラボ、谷瑞恵、結城光流(敬称略)、NO.6、包帯クラブ、薬屋シリーズなどなど。コミック込みだと大変なことになります(笑)高尾滋さんには癒され、浅野いにおさんには創作意欲を上げてもらいつつ…あでも、緑川ゆきさんは特別!僕の青春です(笑)夏目友人帳、好評連載中!某戦国ゲームにハマり我が主と共に城攻めを細々とのんびり実行中(笑)サークル活動も嗜む程度。他ジャンルに寄り道も多く叱られながらも細々と更新しています…たぶん。

備考。寒さに激弱、和小物・蝶グッズとリサとガスパールモノ・スヌーピーモノと紅茶と飴と文房具…最近はリボンモノもこよなく愛する。一番困るのは大好物と嫌いな食べ物を聞かれること。

気まぐれ無理なくリハビリのように文章やレポを書き綴る日々…褒められて伸びるタイプです。

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